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理不尽な世界 そんな素晴らしいと言われる世界

 世界を表す時、人間はやたらマイナスな言葉を使いたがる。

 やれ争いは無くならないだの、やれ正直者は馬鹿を見るだの……常識という鎖や倫理の崩壊、下らない他人頼みの宗教。


「……」


 感情に任せた言葉を連ねても意味が無いと一蹴し、ため息をつく。

 かく言うこの男もまた、自らが生まれた世界を嫌うクレーマーであった。

 腐敗や偽善、不公平を……この世界を作り出したと言われる神様に……そう、キレてきたのだ。


 男は嫌いだった。

 決して良いとは言えない世界を……。


 男は嫌いだった。

 その度に希望論を展開していく人間の癖を……。


 ——気に入らねえ……。


 そんな男が居た。


「クソゲー……」


 徹夜で疲れた体に鞭を打ち、薄暗い部屋のディスプレイ……いや、その奥の窓に向けてだろうか……。

 吐き捨てた言葉に嫌気が差し、再びため息をつく。

 しかし、人生というものは一回転、二回転と……想像がつかぬものである。


「……」


 何かと理由を付けては世界を貶す男も、やがては変わりゆくものらしい……。





 恋をした。

 相手は同級生。

 理由は……忘れた。


 ——……いや、嘘だ。一目惚れ。


 かくして男の世界は……そう、回転したのだ。

 こんな世界にも、生きていく理由ができた。

 くだらないと思っていたものも、少しずつ良いと思えるようになった。


 そうして男は、本当の希望を得た。

 死んでしまうなんてとんでも無い……!

 勿論、根本から変われた訳では無い。

 ただ、こんな世界でも生きていこうと……思えるようになったのだ。





 男は……キレていた。

 そう、世界に。

 この場合、異世界にキレていると言うのが正しいのだろうか……?


 いや、少し待って欲しい……。特別、彼がキレやすい性格な訳では無い。ただ、理不尽な世界に至極真っ当に怒りをぶつけてるだけであって……世に生まれた人間は、一度くらいそんな感情を抱いた事が……うん、まあキレやすいのかも知れない。


 ただ、この状況に限って言えば多くの人間は文句を言えないだろう。


 それは、ほぼ全ての人間が一度は経験したことのあるもの、もしくはこれから経験するであろう『稲妻』であり、それをきっかけに世界を再認識した彼に送られた祝福は、『半永久的に想い人と世界単位で切り離される』という理不尽なのだからッ……‼︎


「帰る手段、あるんだろうな……」


 いや、帰らなければいけない……。

 あの世界に帰るのは不満しか見当たらないが、彼女がそこにいるのだから仕方がない。


「おーけー、状況を整理しよう……」


 フゥー……と呼吸を忘れて溜まっていた空気を吐き出す。

 まず、ここは異世界。それは、間違っていない筈だ。

 ただ……少しおかしい。


 キョロキョロと、辺りを見回す。


 僅かな頭の軽さと視界の情報量に違和感を覚えつつ、初めて見るこの世界に対して疑問を抱く。

 多様性が重視される今の時代に置いても、その国の都市や街並みはある程度決まった枠組みがある。

 水の都ヴェネチアや花の都フィレンツェ。日本で言うと……京都が一番分かりやすいだろうか。


 その地域にはその地域の歴史があり、その特性は意識せずとも滲み出るものだ。

 先程挙げた土地は、その特性を地元民が意識的にアピールしていると言えるだろう。

 しかし、この場所は人、建物、持ち物や服装、全てに規則性がないのだ。


「仮定都市の風景は、自然の豊かさはあれど、建物はなんつーか……」


 アメリカの様に、それぞれの文化が混ざっていると言えばいいのだろうか?


 ……いや、混ざると言うのは語弊があった。

 混ざることなく、一つ一つが孤立して並んでいるのだ。

 屋根だけでも国によって様々な形が有る物だが、それは気候等の影響によって形が変わってる訳で……。


「なーんで同じ土地でこうも建物の見た目が変わるかね……? そして何より……」


 ファンタジー世界じゃド定番。異種族の人類……。

 見慣れない建物は、きっと彼らのセンスによって生み出されたものなのだろう。

 その中には見覚えのある、高さだけを求めた溜まり場がすぐ目についたが、おおよそ自分の頭では一生理解できないであろう芸術センスをした建物を見つけ、暫く観察した後に呟いた。


「……素晴らしい」


 きっと今の自分ほど、虚な目をしている人間は居ない筈だ……。自信があるね。


 ——さて、これからどうしたものか……。


 目的は決まっている訳だが、この世界でのルールや価値観……まあ、つまる所情報が欲しい訳だが……。

 人に話しかけるの、やだなぁ……。


 暫くして、おろおろとしていた自分の心情を察したのか一人の女性が話しかけて来た。

 

「もしもし? そこニャ御人ニャ初めまニャしての人かニャ?」

「……濃い」


 ——うん……まあ見た目から判断して獣の種族とかそんなんだろ……猫の……。


「それニャなら取ニャらえずうちと一緒に来ニャくれない? ……ニャ」

「ニャーニャーうるせぇな⁉︎ あと最後のはキャラ付けだろ⁉︎」

「ニャーニャニャニャ、ニャニャーニャニャニャニャニャニャ?」

「語尾で会話を試みるだとぅ……いや、語尾かも怪しいけど⁉︎」


 ——包み隠さず言おう。なんだこいつ……つーか誰?


 一切理解出来ないこの事象をどうやって言語化しよう……などと考えていると、彼女はたったったっ……と歩を進め、何かに期待した様な顔で一言だけ、残して行った。


「迷ってるなら案内してやるにゃー」


 ちょいちょい……と招いた後、くるりと回って歩き出す。

 案内してくれるのは嬉しいが、どこに連れていくつもりだろうか……?

 子供の頃なら防犯ブザーでも鳴らす事に一考する余地がある状況だが、当ても無いのだから仕方が無い。


 そんな訳で、急に連れてこられた異世界について、教えてもらおうと付いて行く事にした。怪しさは初対面では付属品だ。

 元の世界にて、都会の人々は死んだ目で溢れかえっていた訳だが……。

 やはり人間は笑っている方が映えると言うものだ。


 ——ここからの会話は勢いだけじゃ誤魔化せないだろうし……孤立しない様にするなら、人に好かれる努力をしないとな……。


 小走りで彼女を追う。

 すれ違う人達は見慣れない姿ばかりだが、自分と同じ様な人間もちらほら見かける。

 その中に一人、先程の自分と同じ様に右往左往と辺りを見渡す少女が居た。


 ……なんとなくだ。なんとなくで話しかけた。

 あまり内容も覚えてないし、きっと会話という程話し合っても無い。

 ただ、迷った者同士一緒に来ないか? ……なんて、普段なら言わない様な事を口にした。

 きっと、異世界という熱にでも浮かされてるんだろう。

 少女は少し考えた後、慣れてなさそうに微笑んだ。


「……うん。取り敢えず、貴方に付いて行きます……」

初めましてです。

恋愛脳です。よろしくお願いします。

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