桃の美人と白銀の美少女
「そろそろ限界、かも……」
「カノンさん!?」
「カノン!?」
視界がぐるぐる回って、私は尻もちをつく。もう、立ってられないや。
すると、すぐさま、シラユキが抱きかかえてくれた。柔らかな感触が伝わってきて、心地がいい。
遅れて、セレディアさんも駆けつけて、私を抱きかかえてくれてる。
鎧の硬い感触が、心地よくないよ、痛い。
「セレディアさん、鎧が痛いです」
「あ、ああ、すまない」
セレディアさんは鎧を脱いで、再び私を抱きかかえる。
抱きかかえられて気が付いたけど、セレディアさんは着やせするタイプみたい。
その、豊満なお胸が、私を包み込んでいる。
心地よいです。
「むっ!?カノン、体が熱いぞ!?」
「本当だ、すごく熱い!どうして……っ!もしかして!?」
「バレちゃった?実は、毒が効かないなんて、嘘なんだよね。グレゴリに弱ってると思われたら、そこに、付け入るかもしれないから。ちょっとだけ、頑張っちゃった」
「カノン自身に『クリア』は使えないのか!?」
「困ったことに、自分に回復魔法は、使えないんですよ。だから、傷も治せないんです」
自分以外だったら、三人同時に回復魔法を使えるんだけどね。
これは、過去に自身を顧みずに、無茶をしてしまった罰なのかもしれない。
だとすれば、魔法は自分の写し鏡なのかな、なんて考えてみる。
「……本当に、カノンさんはバカだよ。死んじゃうかもしれないんだよ?」
「あはは、そうかも。ねえ、ここにいる人たちの中で、回復魔法を使える人はいる?」
「いるよ!お兄ちゃんなら、カノンさんの毒を治せる!」
「ん、教えてくれてありがとう。それじゃあ、キョーヤ君を起こして下ないとね。……ついでに、全員を起こしちゃおっか。『クリア』」
私のいる場所を中心として、半径二十五メートル以内にいる人たちに、連続で『クリア』を使う。
すると、みんな無事に睡眠から起き上がり、辺りを見回して、驚愕した顔をしていた。
それはそうだよね。眠りから覚めたら、辺りは一面氷の世界になってるし、兵士たちの体半分が凍ってるし。
「お兄ちゃん!起きた!?」
「あ、ああ。それよりどうなって……」
シラユキは動けない私の身体を、セレディアさんに預け、駆け足でキョーヤ君の元へ向かった。
「状況把握は後でして!カノンさんが大変なの!」
「あ、ああ。どうしたんだ?」
「身体中に毒が回ってて、早くしないと、死んじゃう。お願い、助けて!」
「シラユキ……。ああ、分かった。お兄ちゃんに任せろ」
シラユキに引きつられてきたキョーヤ君は、私のすぐそばで膝を地につけ、両手を私の方へ向けてくる。
さあ、ようやく苦しみから解放される。
……あれ、まだ魔法かけてくれないの?
「なあ、シラユキ。カノンは本当に、毒に犯されているのか?なんだか幸せそうな顔をしているんだけど」
「……本当だ」
「そんなことないよ!ただ、セレディアさんの膝枕が心地よくって、そういう顔をしてるだけだから!」
「私の膝枕はそんなに心地いいのか?」
「はい、ずっとこうしていたいです」
「そうか。ならばずっとこうしていよう。……そしていずれは、私の義妹に」
ん?義妹?
ていうか、どうしてセレディアさんは、荒い息をしながら私の頭を撫でてるの!顔は笑ってるのに、目がちょっと怖いよ!
しかも、それを見て、シラユキは頬を膨らませて、私のことをキッと睨んでくるし。私、何もしてないよね!?
私にはこの状況が理解できない!
「キョーヤ君、お願い、色々と助けて」
「ごめん、俺には状態異常を治すことしかできない。『クリア』」
キョーヤ君が無表情で魔法を唱えると、温かい淡い光が私を包み込む。
次第に、身体が楽になってきた。どうやら毒が除去されたみたい。
「ありがとう、キョーヤ君」
「……ああ」
「ねえ、カノンさん。いつまで、セレディアに膝枕されてるの」
「へ?」
「私だって、膝枕ぐらいできる。こっちに来てよ」
シラユキは正座をして、ポンポンと太ももを叩いて、誘ってくる。
本当に何なのこの状況。美人さんに膝枕をされて至福の時を過ごしてたら、今度は美少女が同じことをするって言うなんて!
これは夢なの!?それとも天国なの!?私、生きてるよね!?
私をこれ以上誘惑しないで!私は真面目に生きるって決めたの!だからそんな誘惑には乗らないんだから!
「ねえ、カノンさん」
シラユキが、今まで聞いたことのない、甘えたような声音で私の名前を呼んでくる。
絶対に、乗らないぞ……。
「私の膝枕は、いや?」
「嫌じゃないよ!」
今日は私頑張ったし、というか膝枕ぐらいいよね!そもそも、美少女のお誘いを断るなんて、寧ろ失礼だよね!
私は、セレディアさんからシラユキの元へ移動し、膝枕を堪能することにした。
頭を太ももの上に乗せて、天を見上げれば、私の顔を見て嬉しそうにしているシラユキの姿が視界に入る。
シラユキと見つめ合っていると、シラユキは照れているのか、顔を赤らめて始めた。
「私の初めて、カノンさんに奪われちゃった……」
「誤解を生むようなことを言わないで!?」
シラユキが急に、強烈なことを言ってくるから、思わず大きな声が出ちゃったよ!
え、シラユキって本来そう言うキャラなの!?
すると、今度はセレディアさんが、赤らめた頬を膨らませて、私の近くへ来る。そして、私の手をぎゅっと握ってきた。それも、ただ握るんじゃなくって、指を絡ませてくる。
「カノン、浮気をするな。私の初めてを奪っておいて、酷いではないか……」
「セレディアさんも何を言ってるの!?ねえ、二人とも冗談で言ってるんだよね?そうだよね?……何とか言って!?」
シラユキは何故か、勝ち誇ったような表情でセレディアさんを見つめ、セレディアさんは何かに敗北したかのように、悔しそうな顔をしている。
二人とも、シルフよりも積極的過ぎるよ。もし、こんなところをシルフに見られでもしたら、これからのスキンシップに拍車がかかりそうな気がする。
……よし。ほとぼりが冷めるまで、動かずにじっとしていよう。私は静かに、シラユキの太ももに顔を埋め、セレディアさんに握られている手に、少しだけ力を込めて握り返す。そして、疲れた身体を休めるために、少しだけ寝ることにした。
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