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普通の女子高校生が精霊界の王女として転生したようです  作者: よもぎ太郎
第4章 灼熱の勇者
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セレディア

 夜は明け、私たちは今日も今日とて修行しに行く。


 その後は『ころんべあ』に行って、シラユキとの会話を試みよう。


 徐々に仲良くなって、心を開いてもらうんだ!


「よし、頑張るぞ!」


 私は気合を入れて、アパートメントを出ると、数人の騎士が出入り口に立っていた。

 その中で、明らかに周りの騎士たちとは雰囲気が異なる、桜色の髪が印象的な女性の騎士が一歩前へ出る。


「貴殿らがカノンと、その一行か?」

「はい、そうですけど。貴方たちは一体……?」

「すまない、騎士ともあろう者が名乗らずに、相手に名を確認するのは無礼であったな。失礼した。私は王国騎士団、十一番隊騎士団長のセレディアという。後ろの者たちは私の部下だ」


 セレディアと名乗った女性は、一礼をしてから私たちに微笑みかける。


 セレディアさんって確か、昨日ガンテツさんが言っていた人、だよね。

 話に聞いた通り、発言からすごく真面目かつ誠実な性格であることが分かる。


 そして、この人はシラユキの過去に関わっている。

 あとで、シラユキのことを聞いてみようかな。


「それで、私たちに何か御用でしょうか?騎士団長自ら、わざわざ出向いてくださるようなことをした覚えは無いのですが」


 アルカの言う通り、私たちはこの国へ来てから特別なことは何もしていない、はず。


 思い返してみても、アパートメントを借りて、クエストをこなしたぐらいだ。


「実は、国王が貴殿らに会いたいと言っていてな」

「王様が?」

「ああ。貴殿らはあのアドラメレクを倒したと言うではないか。それに興味を持った国王が是非会いたいと言っていてな」


 なるほど。一体どこからそんな情報が出回ったのかな。

 アドラメレクを倒したなんて、誰にも言っていない気がするんだけど。


 うーん、まあ王様の前まで行って、誤魔化せばいいか。

 それに、セレディアさんと会話をするチャンスを逃す手はない。


「分かりました。よろしくお願いいたします」

「協力に感謝する。国王は一度興味を持つと、なかなかしつこくてな。今回断られても、別の使いを寄こしただろうから、来てくれると言ってくれて助かるよ、それに……」

「それに?」

「私も、貴殿を見て興味が湧いた」


 セレディアさんは私の目の前まで来て、急に優しく頭を撫でてくる。

 さらに、その手を私の頬に当て、微笑みかけてくる。


 セレディアさんと私の顔との距離が近い。

 すっと通った鼻筋に、強い意志を感じられる瞳、それから髪の毛とマッチする桜色の唇。さらに先ほどからの立ち振る舞いから、まさしく大人のお姉さん、といった印象を受けた。


 私は、顔の近いセレディアさんの瞳をじっと、見つめていると、急に頬を赤らめる。

 

「可愛い」

「え?」

「いや!?何でもない、気にするな!さ、さあ、国王のところへ案内をするからついてきてくれ!」


 何かに焦っていたセレディアさんは、踵を返し王様のいる方へ、そそくさと歩きだしていった。


「カノン」

「どうしたの、シルフ」

「あの方、真面目そうに見えますが、私と同じ匂いがします」

「そっか。私もそんな気はしてたよ」


 そうして、私たちは、もしかしたらシルフと似た性癖を持つ、セレディアさんとともに王様の元へと向かった。


 王都へ行く道すがら、私はセレディアさんの近くへ駆け寄る。


「どうかしたか?」

「セレディアさんに聞きたいことがあって」

「私に?」

「うん。セレディアさんに、シラユキのことを聞きたくて」


 私がシラユキと言葉を発した瞬間、セレディアさんは、少しだけ目を見開く。


 そして、唇を噛み、とても辛そうな表情になる。


「貴殿は、シラユキのご友人か?」

「いえ。これから仲良くなりたいなと思いまして」

「そうか。……すまないが、私は彼女を語る資格がない」

「それって、六年前のことですか?」

「っ!?知っているのか?」

「はい。シラユキのお父さんから聞いたんです。その中で、セレディアさんの名前を聞いたので、もしかしたら何か知っているのかもと、思いまして」

「そういうことか。しかし、過去のことを知っていたとしたら、尚のこと、貴殿に語れることは何もない。ただ、一言だけ、発することを許されるならば」


 セレディアさんは、少しだけ間をおいてから、口を開く。


「あの時、救うことができなくて、すまなかった」


 その言葉は、もはや懺悔に近かった。


 そして私は思う。

 セレディアさんもまた、六年前のことに囚われ、苦しんでいるということを。


 そして、その傷は癒えていない。

「セレディアさん。お節介かもしれないけど、私が、セレディアさんとシラユキの抱えてる闇を追い払って見せるから」


 だから、少しだけ待っててね。


 始めは王様の元へ、アドラメレクを倒したことを有耶無耶にしに行くために行こうと思っていた。


 だけど、今は目的が変わったよ。


 元凶であるグレゴリに、過去のことを謝らせてやる。


 そうしないと、私の気が済まないし。


 私は決意を新たにして、目的の場所へ歩き出していった。


 しばらくして、王様や王国騎士団が在中している“アルクウェル城”へ辿り着く。


 それから、案内されるがまま城内を歩き、やがて大きな扉の前までやってきた。


 金色の金属で装飾された、赤く塗られてた大きな扉は、まさしく廊下と王の間を隔てる扉と言ってもいいと思う。


「アルクウェル王。カノンのその一行をお連れいたしました。失礼します」


 セレディアさんがそう言うと、扉の前で監視している騎士が、二人係で大きな扉を押していく。


 明らかに重量がありそうな音を立てながら、扉が開かれる。


「おう、よく来たな」

「えっ!?」


 赤いカーペットのその先に。数段の階段があり、その上に玉座に座る王様の姿がそこにはあった。


 私の想像していた王様は、長く白い髭に皺が沢山あるおじいちゃんかと思っていたんだけど、違った。


 黒髪だけど所々白髪が入り混じっている短い髪で、その髪をオールバックにしている。また、眼光は鋭く、筋肉がかなり発達しているのか、お高そうな洋服が張っている。


王様、というよりも歴戦の騎士王、と言った方がしっくりくる相貌だ。


 ただ、私が驚いたのはそこじゃない。王の間にいた面々に、驚きを隠せなかったのだ。


 ます視界に入ったのは、キョーヤ君、シラユキ、そしてフードを被った人、あとは甲冑を着た騎士が七人。


 明らかに、普通じゃない。まあ、私たちが王様に呼ばれたこと自体も、普通じゃないんだけど。


 すると、王様は私の様子を見て、何が面白かったのか、盛大に笑い始めた。


「がっはっは!……あー、悪い!無駄に緊張してるやつを見ると、可笑しくてつい笑っちまうんだ。すまねえ!」

「アルクウェル王、いい加減、その口調と癖を治していただけませんか?失礼ですよ」

「それは無理だな、セレディア!俺は口調も癖も直す気はねえからな!」

「はあ。では、せめて御客人の前だけでも……」

「それも、無理だ。諦めろセレディア!がっはっは!」

「……セレディアさん、ご苦労様です」

「……いえ、いつものことですから。はあ」

「ぷくく。セレディア、ため息ばかりしてると、幸せが逃げるぞ!」

「……あれが、王でなければ即刻、首を斬り落としているのですが」

「本当に、ご苦労様です」


 真面目なセレディアさんの性格も相まって、アルクウェル王にいじられているんだろうな。セレディアさん、不憫すぎる。


 取り敢えず、私たちは赤いカーペットの上を歩き、王様の近くまで来る。


 その間、誰かに鋭い視線で見られたような気がした。

 その視線の方を見ると、黒髪に金のメッシュが入った、私の世界で言うヤンキーっぽい騎士が私のことを、睨んでいた。


 初対面なのに睨まれるとは、理不尽すぎる。


「さて、カノンちゃんに、その御一行さん。わざわざ呼び出しに応じてくれたことに感謝する。そんで、本題だが、アドラメレクを倒したってのは、マジか?」


 先ほどまでの和やかの雰囲気から打って変わり、アルクウェル王が、鋭い眼光で私を見つめる。

 その視線に、怯みそうになるけど、私はぐっとこらえる。


 ちなみに、アルクウェル王がアドラメレクを倒したか、と私に聞いたとき、カーペットの脇で、二列で綺麗に整列していたキョーヤ君以外の人たちがざわめき始めていた。


 さては、この王様、セレディア以外の騎士たちに詳しいことを言ってないな?


「……いえ。マジじゃないです」

「へぇ?」

「見ての通り、私たちはか弱い乙女です。お箸ですら、何とか持てるぐらいの非力な私たちに、魔王四天王のアドラメレクを倒すなんて出来ませんよ」

「そうかい。じゃあ俺の勘違いってことか」

「そういうことになりますね」

「そんじゃ、仕方ねぇな。セレディア」

「はっ!」


 アルクウェル王から指示を受けたセレディアさんは、私たちから距離をとる。


 そして、腰に携えていた刀に手を触れた瞬間、肌が何千もの針で刺されたような痛みを感じた。


 私はこれが何なのか、知っている。


 殺気だ。


 セレディアさんは、本気で私たちに斬りかかろうとしている。

「まずはカノン。貴女から……っ!?」


 セレディアさんは言いかけ、言葉を発するのを止めてしまう。


 さらに言えば、抜刀もせず、私の元へ来ることもなかった。

 突然、私に対して情が湧いたから、抜刀を止めたのか。


 否、セレディアさんは、抜刀できずにいたのだ。


 なぜなら、セレディアさんの手元に、金色に輝く剣の剣先が触れていたから。


「セレディア。意図は分からないが、私のカノンを傷つけようとするのならばその手、斬り落とす」


 リゼはセレディアさんが抜刀する前に、瞬く間に移動し、牽制していた。

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