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普通の女子高校生が精霊界の王女として転生したようです  作者: よもぎ太郎
第4章 灼熱の勇者
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エルフの生き残り

「おう、おかえり!シラユキに、ベロニカちゃん!」

「うぃーっす、ってあれあれ!?今日は人いっぱいいんじゃん!めっずらしー」

「……お兄ちゃんも、来てたんだ」

「ああ。二人とも何か食べるか?」

「食べる食べる―!何作ってもらおうかなー?」


 ベロニカと呼ばれたエルフは、後頭部に手を組んで店の奥へと歩いていく。その最中、こちらの方を眺めるように一瞥してから前を向き直す。


 と思ったら、ベロニカは急に目を大きく見開いて、私ではなくリゼの方を見て驚いたような顔をする。


リゼはというと、リゼもベロニカと同じくらい驚いたような顔をしていた。


 二人ともそろって同じ顔をしてどうしたんだろう?

 以前にもどこかで会っていて、偶然再会したから驚いている、とかかな。


「どうしたの、ベロニカ。知り合い?」


 シラユキと呼ばれた銀髪の少女が、私が投げかけたかった疑問を、首を傾げてベロニカに問いかける。

 無表情で感情が読み取りづらいけど、首を少しだけ横に倒している彼女が、可愛い。


 キョーヤ君の妹さんらしいけど、私の妹にしたいぐらい。

 どうやったら、仲良くなれるかな。


「いや、違う、けど。嘘、だろ」


 私が呑気なことを考えていると、ベロニカはシラユキの問いに歯切れ悪く答えていた。

 

 どうやら以前にばったり会ってここで再開した、みたいな雰囲気ではないことは理解できた。


 そうすると、驚いている要因は他にありそうだね。

 何だろう、リゼがエルフだから驚いているとか?


 いや、だとしたらベロニカもエルフだから驚くポイントではないはず。


 ん?待ってっ待って!?


 前にリゼが、エルフの生き残りは自分しかいないって本人が言ってたよね!?


 だけど、ここにはエルフが二人もいる!

 

 つまりはリゼとベロニカが何に驚いているのか、それは。


「リゼ以外にもエルフが生き残ってる!?」


 私はつい、驚きと興奮のあまり大声を出してしまっていた。

 

 まさか、ここで出会うことができるなんで、お互いにビックリするに決まってるよね。

 私もビックリしちゃったし。


 私は二人の成り行きを見守っていると、先に動き出したのはベロニカだった。

 

 ベロニカはリゼが座っている席まで近寄る。


「リゼ、あんたリゼっていうのか?」

「あ、ああ」


 リゼがそう答えると、ベロニカは不意に両手を上げる。


何をするんだろうと思っていたら、突然リゼの両肩を見るからに力強く掴んだ。


「な、なんだ!?」

「良かった……」

「え?」

「私以外にも、生き残ってるエルフがいて、本当に、良かったよぉ」


 ベロニカのリゼを掴んでいる手や声は震え、鼻のすする音も聞こえてくる。

 つられて、リゼも目尻に涙を浮かばせる。


 そして、リゼは両腕でベロニカを包み込むように優しく抱きしめた。


「私もだ。まさか、自分以外にも生き残りがいたとは。今日ほど、嬉しいことはない」

「あたしもだよ!だって、二回も襲撃に遭ったら、誰だって自分以外生き残っていないって思うし!」

「二回、だと?」

「そうだよ。一回目はアドラメレク、二回目は同じ魔王軍四天王の一人、アスタロトにやられたから」

「何!まさか、ベロニカ以外にも生き残りがいるのか!?」

「……ううん。もう、いないよ。一回目の襲撃で生き残ったのは私を含めて、十五人だったんだ。でも、アスタロトと、アスタロトが連れてきたヒュドラとかいう化け物に全員やられた。六年ぐらい前かな」

「そう、か」


 リゼの淡い期待も空しく、ベロニカからの告げられた事実は酷く悲しいものだった。


「あたしも死にそうだったんだけど、姉御、シラユキが助けてくれたんだ」

「シラユキ、あの子がベロニカを助けたのか?」


 リゼの視線の先を辿ると、シラユキがそこに立っていた。

 

 あれ、さっきまで無表情だったのに、今は違う顔をしている。


 ほとんど変化がないように見えるけど、何となく、悲しそうだ。


 それに、拳に力が入っているのかな、震えてる。

 あれは、怒り、なのかな。


 ベロニカがシラユキに助けてもらったことを話しているのに、どうして辛そうな表情をしているの?


ベロニカはそれに気づいたようで、一瞬だけ悲痛な顔を見せたが、すぐにそれは引っ込めて、話しを続ける。


「ああ。絶氷の勇者、シラユキ。あたしの命を助けてくれた敬意を込めて、姉御って呼んでるんだけど」

「姉御は、やめて」

「っていつも拒まれてるんだよな。ま、止めるつもりもないけど」


 ベロニカはそう言ってからクスッと笑う。

 

 私は、ベロニカに今日初めて会ったばかりだけど、彼女のことをこう思ってしまう。


「ベロニカは、強いね」

「ん?あたし、あんたたちの前で戦ったことあったっけ?」

「ううん、そういう強さじゃなくって。その、何て言うのかな。すごく、私なんかじゃ想像もできないぐらい、辛い体験をしてるのに。それでも、笑って前に進んでいるベロニカが、強いなって」

「そうかな?」

「ああ。私もそう思うぞ。少なくとも、私は、ここ最近までは笑うことすら忘れていたからな」


 私とリゼの言葉を聞いたベロニカは、頬を少しだけ赤らめて、照れているようだった。


「まあ、こうして笑えるようになったのも、姉御のそばにいたおかげだな」

「私は離れてっていつも言ってる」

「酷いや姉御!?ま、それでもついていくけどね~」

「勝手にして」


 シラユキは特に表情を変えずに、カウンターの方へ歩いていく。

 

そのおかげで、私はようやっとシラユキの後姿を見ることができた。


 シラユキは腰まであるストレートの髪を一つ結びにしている、所謂ポニーテールなんだね。一歩、また一歩と歩みを進めるたびに、揺れるポニーテールが可愛い。


 それにしても、エルフを二度も襲いに来るなんて。

 それ程までに、魔王軍にとって、高い知性と魔力を持つエルフという一族を恐れていたのかな。


 だとしても、なんて残酷なことをするのだろう。


 四天王アスタロトに、化け物と呼ばれていたヒュドラ、か。

 アスタロトもアドラメレクのように強いんだろうな。


 いつ遭遇してもいいように、生き延びる術を身につけておかないとな。


 もし、実力及ばず死んじゃったら、元も子もないからね。


「そうだ、あんたたちの名前を教えてくれないか?嬉しいことを言ってくれたリゼと、黒髪ちゃんにはあとでお礼もしたいし!あと、何の勇者なんだい?」

「そんな!お礼なんていいよ。思ったことをいっただけなんだから。私はカノン、こちらの愛らしい妖精はアルカ。それから」

「カノンのお嫁さんになる予定のシルフです。よろしく、ってげふ!?」


 シルフは自己紹介を終える前に、アルカに本日最大級のデコピンをくらっていた。

 そうして、シルフはテーブルに突っ伏し悶絶していた。


「シルフ!貴女、全然懲りてないじゃないですか!自己紹介位はちゃんとしてください!私たち精霊の品が疑われますよ!」

「え!?精霊なの!?」

「ええ。ですが見ての通り、今の私は妖精ですし、シルフは残念な発言しかしないので、私たちに変に気を使わなくて大丈夫ですよ」

「あ、ああ。分かったよ」

「それから、私たちは勇者じゃないよ」

「何!?」


 私が勇者じゃないことを告げると、それに声を出して反応したのはガンテツさんだった。


 ちなみに周囲を見回すと、キョーヤ君やライナ、クレール以外の面々も驚いている様子だった。

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