とりあえず落ち着こうか、私
まさか私が精霊界の王女になって世界を救うなんて想像もしてなかった。
だって、私はてっきり異世界に転生したら、スローライフを楽しむものだと思っていたから。
アルカディウス様の言う通り、話は最後まで聞くべきだった。
「そもそも私、世界を救えるのかな?」
素朴な疑問だった。だって、罠にかかったとはいえ アルカディウス様ですら世界を救うことができなかった。
それを私が アルカディウス様に代わって、世界のために戦うことはできるのだろうか?
考え事してたら、今更なことを思ってしまった。
私、この世界に愛着とかないのに本気で頑張ることって出来るのかな。
この世界を救ったとして、その後は?
私がうーとかあーとか唸り声を出していると、 アルカディウス様が私の方へ近寄ってきた。
「よろしければ、花音さんの肩をお借りしてもいいですか?
そう言う アルカディウス様の声はとても穏やかで、私の頭の中で暴れまわっていた疑問の数々は鳴りを潜めていく。
「うん、いいけど...」
「ありがとうございます」
アルカディウス様は私の肩に腰掛けて、私の心が落ち着ちつかせるようにゆっくりと話しかけてきた。
「私はこの世界をどうしても救わなくてはなりません。この世界が戦続きになってしまえば、私の大切な同胞たちも巻き込まれて命を落としてしまうからです。それはどうしても避けなくてはなりません」
「うん」
「ですが、それは私の願いであって花音さんには何も関係のないことです。ですから、先ほどは世界を救ってほしいと頼みましたが、断ってもいいのですよ」
「え、いいの?」
私は少し驚いていた。だって、アルカディウス様は私にこの世界を救ってもらうために転生させたのに、救わなくていいっ言うんだもん。
どうしてそんなこと言うんだろう。
「はい。幸い花音さんはヒューマンとして転生しましたから、王国に行けば普通の女の子として異世界の生活を送ることができます」
「...アルカディウス様はどうするの?」
私の問いに王女様は耳元でふふっと笑った。
「決まってます。この姿になっても、花音さんがいなくても私は私のやるべきことをやります」
「世界を救うの?」
「そうですね。まぁ、世界を救うなんてだいそれたことを言いましたが、本音は同胞たちに被害が及んでほしくないだけなんです」
「でも、アルカディウス様は生前の時よりも魔力が無いんだよね?」
次第にアルカディウス様の声が落ち着いた雰囲気から、力強い声に変っていく。
「ええ。それでも何もしないで、事の成り行きをただ見守っている方が、私にとっては死ぬことよりも辛いのです」
どんな姿になってもアルカディウス様の覚悟は変わらないんだね。
本当に精霊たちのことが好きなんだ。
姿形は変わってないけど、精霊の加護を得た私のとるべき行動は何だろう。