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普通の女子高校生が精霊界の王女として転生したようです  作者: よもぎ太郎
第4章 灼熱の勇者
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『ころんべあ』

こんばんは、よもぎ太郎です。

サイレント救済をしてしまい申し訳ございませんでした。

仕事の方が忙しく、なかなか書く時間が取れていませんでした。

ですが、物語はまだまだ続きますので、どうか応援のほどよろしくお願いします!

 小柄な女性は言いたいことを言いきったようで、すっきりした表情をしている。

 それに対し、ガンテツさんは反論する隙を見つけられず、黙って女性の言葉を受け止めていた。そのためか、落ち込んだ様子を見せていて居心地が悪そうだった。

 

 二人のやりとりを見るに、今日のようなやりとりは日常的に行っていると思われる。

それでも女性がこのお店を訪れるということは、二人は親密な関係なのだろうと容易に想像できる。

 もしかしたらご夫婦なのかもしれない。


私はスプーンで、お皿に散らばるお米やチキン、野菜をかき集め最後の一口を頂く。

手を合わせて料理を作ってくれたガンテツさんにお礼を言う。


「ごちそうさまでした。すごく美味しかった!」

「お粗末様、そう言ってもらえると料理人冥利に尽きるぜ」


 ガンテツさんは嬉しそうな顔をしつつも、どこか疲れているような返事をする。

 小柄な女性とのやりとりが相当堪えたみたいだった。


 すると、女性は私たちの隣まで来てから、次いで私の顔を覗き込む。

 ショートヘアにも関わらず、私の顔を覗き込んだ際に垂れた、夕日にも似た橙色の髪の毛を耳にかける。

 さらに口角を上げ、ニッと笑ってから私が座っている椅子の真横にある椅子に手をかけた。


「隣いい?」

「あ、はい。どうぞ」


 女性の所作に見とれていた私は咄嗟に言葉が出ずに、詰まってしまった。

私は恥ずかしくなって、赤くなった顔を隠すように掌で覆う。指と指の隙間から女性のことをちらっと見ると、女性は私の行動が面白かったのか、口に手を当ててクスッと笑っていた。

 

 お店に入ってきてからすぐにガンテツさんのことを注意していたので、第一印象は気が短い人なのかなと思っていた。


 だけど、どうやらそれは私の思い込みだったみたい。


「ありがとう、それにして二人とも、すっごく可愛いわね」


 小柄な女性はお礼と私たちの容姿を褒めてから、私の隣にある椅子に腰をかける。


「いやいや、そんなことないですよ……」


 私は女性の言葉を控えめに受け取る。

お世辞だとしても、可愛いと言ってもらえたのは素直に嬉しい。


アルカも隣で照れつつもいやいやと、手と首を横に振って謙遜する素振りをみせる。


アルカって褒められるとそんな可愛い行動するの!?

私、知らない。

私もアルカのことを褒めたら、今みたいに照れた顔を見せてくれるかな?


「アルカ」

「どうしたのですか、花音」

「アルカは宇宙一、いや言葉で表すのも勿体ない位可愛いよ!」


 私はアルカに向けて褒めちぎる。

 それにしても、私の語彙力の無さで、アルカの可愛さを表現する言葉が出てこないことにがっかりする。

 今はそこで落ち込む場合じゃないよね、アルカは照れてるかな?


 私はアルカの方を見ると、アルカは何事もなかったかのように平然とした表情をしている。


 あれ、おかしいな。


「花音」

「はい」

「下心が見え見えで褒められても、あまり嬉しくありませんよ。そのせいで、嘘のように聞こえます」


 下心見え見えだったか。次はばれないように、ポーカーフェイスを極めようかな。

 まぁ邪な態度を見破られたことは置いといて、これだけはアルカに伝えなくちゃいけない。

 

私はアルカに身体ごと向け、小さな手に私の手を重ねる。

 私の突然の行動にアルカは少々戸惑っているように見えた。

 驚かせて申し訳ないと思いつつも、私は真剣な顔つきでアルカに視線を合わせる。


「嘘っぽく聞こえちゃったのはごめんなさい。でも、アルカのこと可愛いって思ってるのは本当だよ。それに可愛いだけじゃなくて、私やシルフ、リゼのことを思いやってくれる優しいところとか、ときには叱ってくれるところも素敵だしそれから……」


 私はアルカに可愛いと言うだけのつもりだったのに、言葉がどんどん溢れてくる。

 次第にアルカが慌てふためき、遂にはおしぼりで私の口を塞ぐ。


「むぐっ!?」

「花音!人前ですよ、自重してください!」

「ふみまふぇん(すみません)」


 ああ、私はまたしてもアルカを怒らせてしまった。

 アルカに対して、暴走してしまうのは私の悪い癖だ。

 本当に申し訳ない。


「はぁ、すみませんお手洗いを借りてもいいですか?」

「ああ、トイレは地下へ下る階段の近くにあるぜ」

「ありがとうございます」


 ガンテツさんはアルカがお手洗いへ行くのを見送ってから、私の方へ向きニヤニヤとしている。


 何でこの人はニヤついてるの?

 私は口に突っ込まれたおしぼりを取り、テーブルに置く。


「ガンテツ、何て顔してるのよ。気持ち悪いわよ」

「ひでぇ言われようだな!そんな顔してねぇよな、カノンちゃん!?」

「いや、してた、かな」

「俺に味方はいねえのか!?」

「それで?どうして笑ってたのよ?」


 女性はカウンター越しから、半泣きになっているガンテツさんから水の入ったコップを受け取り、それを口に運ぶ。

 私も水を飲んで、ガンテツさんの言葉を待つ。


「いやなに。カノンちゃんは、アルカちゃんに好かれてんだなって思ってな」

「私がアルカに好かれてる?」

「ああ。カノンちゃんがアルカちゃんの良い所いっぱい言っただろ?その後、あんな態度してたけどトイレに行く途中、すんごい笑顔してたぜ」

「へぇ、アルカちゃんは俗にいうツンデレさんなのかな?」


 アルカがツンデレなのは何となく分かってはいた。

だけど、さっきの行動が怒らせたわけではなく、照れ隠しで行ったものだとは気が付かなかった。

それにしてもアルカのデレた顔、私も拝みたかったな。


「かもな。それに褒められただけで、あんなに幸せそうな顔をするなんて、多分アルカちゃんは……」


 とガンテツさんがすべてを言い切る前に、言葉を紡ぐことを止める。

 いや、正確に言えば止めさせられていた。


 何故かと言えば、アルカがいつの間にかお手洗いから戻ってきていて、ガンテツさんのことを目線だけで牽制していたからだった。


 アルカは、私には理由は分からないけど、頬を林檎のように紅潮させている。


「ガンテツさん、それ以上は言わないでくださいね?」

「分かったから、その目はやめてくれ。怖すぎる!」

「ガンテツさんほどではないと思いますが……」


 アルカはそう言って、テーブルに置いてあるハンカチを綺麗にたたみ、バッグにしまいこむ。


「花音、そろそろ行きましょう。クエストへ行く時間が無くなってしまいます」

「あ、そっか。そういえばそれが本当の目的だったね」


 私は、口の周りに先ほど食したオムライスのケチャップ等が付いているかもしれないと思い、おしぼりで口の周りを拭いてから席を立つ。


「もう行くのかい?」


 ガンテツさんはカウンターから出てきて、私たちの元まで来てくれた。

 どうやら私たちのことを見送ってくれるみたい。


「うん!勇者とかこの酒場のこととかまだまだ聞き足りないこと、沢山あるんだけど、修行して強くならなくちゃいけないから」

「そうなの?じゃあ、また来てね。貴女たちが望むなら、またこのお店は現れるから」

「はい!あ、そうだ。お姐さんのお名前は何て言うんですか?」

「あら、まだ言ってなかったかしら。私の名前はシトリ、ガンテツの妻で二児の母よ。よろしくね」

「よろしくお願いします、シトリさん」

「これからもお邪魔するとは思いますが、よろしくお願いします。シトリさん」

「あらあらお邪魔なんて!可愛い子たちが来てくれるなら、むしろ大歓迎よ!それじゃあ気を付けてね」

「はい、行ってきます」

「行ってきます、ガンテツさん、シトリさん」


 私たちは、緑色に染められているドアの、真ん中あたりに備え付けられている金色の、丸いドアノブをまわして扉を開く。


「そういえばカノンちゃんの全力の中級魔法、なかなか良かったぜ。久しぶりにかすり傷出来ちまったぜ」

「あら、ガンテツに傷を与えるなんてすごいじゃない!カノンちゃん強いのね」


 そう言えば、ガンテツさんに傷を負わせてしまったことを忘れていた。

 私はガンテツさんの傍まで駆け寄り、未だにかすり傷が治っていない右腕に、両手をかざす。


「ごめんなさい、すぐに治すね、『ヒール』」


 ガンテツさんの傷は一瞬で塞がり、傷痕も残っていなかった。

 

「カノンちゃん、回復魔法も使えるのね。すごいわ」

「ありがとうございます」


 私は駆け足で、扉を支えてくれているアルカの元へ行く。


「それじゃ、またね!それと」


 私は扉が閉じきる前にガンテツさんたちの方へ振り返る。

 なぜなら一つだけ、訂正したいことがあったからだ。


「ガンテツさんに使った中級魔法は、全然本気じゃないからね!」


 私はそれだけを言い残し、クエストを受けるためにギルドへ向かう。


 一瞬だけ、二人が驚いている表情をしていたのはきっと気のせいだろう。

 さて、修行の続きでもしに行きますか。


 私とアルカがお店の外へ出ると、カランカランと鐘の鳴る音が聞こえてきた。

 振り返ると、そこには朽ち果てている一軒のお店がそこにはあった。


 先ほどまでのやりとりは夢だったのか、幻だったのか。

 多分、どちらでもなくあのお店の中で起こったことは、現実なのだろう。


 お腹いっぱいだし。


『ころんべあ』は望めばまた現れると、シトリさんは言っていた。


 だから、今度はシルフとリゼも連れて、ガンテツさんたちに会いに行こう。

 そのためにも、今日のクエストも無事に乗り越えてみせるよ。


 アルカと共に、ね。

読者の皆様、いつも応援していただきありがとうございます。

ブックマークを付けて追いかけてくださる読者様が増えてきて、

とても嬉しく思いますし励みにもなっています。

もしお話を気に入ってくださったり、

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