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普通の女子高校生が精霊界の王女として転生したようです  作者: よもぎ太郎
第4章 灼熱の勇者
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デコピン

「ん~…」

私は眠りから覚め、眠気眼をこする。

あれ、昨日まで一緒に寝ていたアルカたち姿がない。


それに、夜に閉じていたカーテンが完全に開かれたいて、窓からは太陽の光が若干ではあるけど射し込んでいる。


私は太陽の光が、ほとんど部屋を照らしていないことに疑問を抱いていた。

たしか昨日の朝は、殺風景な私の部屋を明るく照らしていたはずなんだけどな。


私は身体を起こし、背伸びをしてから辺りを見回してみる。

私の枕を含めて四つあるので、昨夜を共に過ごしたのは夢じゃなかったことに少し安堵した。

いや、安堵するにはまだ早いのかもしれない。


もしかしたら、みんなと寝たいという欲求が溜まりに溜まって自分で枕を用意したのかもしれない。

まぁそんなはずはないんだけど、と思いつつ私はシルフが眠っていた場所に手を当ててみる。

しかし、手の感触からは温かみを感じなかった。


…もしかして、夢オチなの?昨日のパラダイスは夢オチだったってこと!?

私は逸る鼓動を落ち着かせるように、一度深呼吸をしてから、アルカとリゼが眠っていたはずの場所にも手を触れてみた。だけど結果は同じだった。


落ち着くんだ、私。まだ、私が奇行に走ったという確たる証拠はない!


そうだ、一緒に寝たことが分かる方法がもう一つある。


私は早速その方法に取り掛かる。

確認の仕方は至極単純だ、匂いを嗅げばいいんだよ。


温もりはなくとも、匂いはそう簡単に消えるものじゃない、はず。


私はシルフが寝ていたと思われる枕に顔を近づけ、鼻からゆっくりと息を吸う。

ふむ、枕から確実に私のではない匂いがする。

シャンプーの香りだけでは出すことのできない、シルフ特有の少しだけ甘くて、心が和やかになるような香りがした。一体何を食べればこんなに良い匂いがするんだろう。


…念のため、再度匂いを嗅いでおこう。

「うん、良い匂い」


匂いはあるけど温もりはない。ということは、多分だけどシルフはとうにこのベッドから出ていったっていうことなのかな。

一応、アルカとリゼが寝ていた場所の匂いも嗅いでおこう。


別に、美女の匂いを嗅ぎたいとかそういうやましい気持ちじゃなくて、純粋に確認のために嗅ぐだけ。


私は、アルカが使っていた小さい枕に鼻を近づける。


「どんな匂いがするのかな?」

「何がですか?」

「んーとね、アルカの枕からどんな匂いがするのかな、って…」


あれ、どうして耳元からアルカの声がするんだろう。

恐る恐る声が聞こえた方へ顔を向けると、無表情のアルカがそこにいた。


透き通るような瞳からは喜怒哀楽の感情が一切読み取れない。

どうしよう、何を考えて私を見ているのか全く分からない!

とりあえず、挨拶しよう。


「お、おはようアルカ」

「こんにちは、花音」


 私は思わず、うわずった声で挨拶をしてしまった。

それにも関わらず、アルカの表情は微動だにせず、正午から日没にかけてする挨拶で返してきた。


「もしかして、私寝坊しちゃった?」

「ええ、もうお昼ですよ」

「そ、そっか。寝坊しちゃってごめんね。あの、みんなはどこにいるのかな?」

「シルフとリゼならクエストに行きましたよ」

「そうなんだ。アルカは一緒にクエストに行かなかったんだね」

「ええ、花音と一緒にクエストに行こうと考えていましたから、起きるまで待っていたのです」

「待っててくれたんだ、ありがとう!すぐに着替えるから待ってて…」

「その前に確認したいことがあるのですが」


 私は布団を飛び出し、制服が収納されているクローゼットに手をかけようとしたんだけど、アルカの一声に身体が勝手に固まってしまった。


「確認したいこと?」

「はい、花音は私の枕に顔を近づけて何をしようとしていたのですか?」

「え、えーっと、枕小さくて可愛いなーと思って、間近で見てたんだよ」

「ほぼゼロ距離で見る必要はないでしょう」


 分からない、アルカが私から何を引き出そうとしているのか全く分からない。


「正直に言ってくれればデコピンで済ませてあげますよ?」

「言わなかったら?」

「習得したての光魔法で天誅を下します」

「ごめんなさい、やましい気持ちで匂いを嗅ごうとしてました!」

「よろしい、デコピンでお咎めなしとしましょう」

「ありがとうございます、アルカ裁判官!」


 私は宣告通り、アルカのデコピンをくらった。

 アルカのデコピンは、小さい指からは想像できないほど力がるので、正直に言ってかなり痛い。

 デコピンするときに絶対、身体強化魔法をかけてるよ。


「全く、シルフだけならいざ知らず、花音もそういうことをするなんて」

「だってしょうがないじゃん!シルフの枕から凄く良い匂いがしたんだよ!?そしたらアルカとリゼの匂いも嗅ぎたいって思うのは真理でしょ!」


 私は必死に真理を追究するのは当然であることを説明したけど、アルカはその説明を聞くたびに肩を落としていた。


「そんな真理はまかり通らないですよ」

「ちなみにアルカの枕からも、シルフとは違った良い匂いがしたよ」

「それ以上罪を重ねるのであれば、王国軍に突き出すことも辞さないですよ」

「申し訳ありませんでした!今後は誰も見ていないところでやります」

「なお悪いですよ」

「じゃあ、みんなが見てる前なら…」

「自粛してください」

「痛っ!」


 アルカはため息まじりに、もう一度私の額にデコピンを実行した。

 さっきと同じところにデコピンされたから、痛みが倍になった気がする。

 一応、血が出ていないかデコピンされた場所を手でさすり確認した。

 どうやら血は出ていないみたい。


「さ、早く着替えてください。私たちもクエストに行きますよ」

「はーい」


 アルカが専用の扉から出ようとした瞬間、小言が聞こえてきた。

「ああいうことをしなければ素敵な女性なのですが。完璧な生き物はいないということでしょうか」


 私は今、褒められたの?それとも貶されたの?

 

 アルカの一言が頭の中を駆け巡り、混乱しそうになったのでとりあえずリゼの枕の匂いを嗅ごうとした。


「花音」

「すぐに着替えます」


 魔法で制裁を与えますよ、と言わんばかりの目で私のことをじっと見てきたので、私は即座に制服に着替えてから急いでリビングへ向かった。

読者の皆様、いつも応援していただきありがとうございます。

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