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普通の女子高校生が精霊界の王女として転生したようです  作者: よもぎ太郎
第4章 灼熱の勇者
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住居選び

 商業、魔法技術、教育レベル、どれをとってもこの世界で最高峰だと言われているアルクウェル王国。

 私、元普通の女子高校生・白河花音もとい異世界転生者・カノンは隣町のポートワールから風魔法の『エア』を使ってこの王国まで飛んできた。用途としては絶対に間違っていて、本来であれば『エア』は他の魔法の威力を上げるブーストのような役割で使用する。

だけど、私は『エア』単体では相手にダメージを与えることができない、という特性を逆手に取り、相手や私自身を遠くかつ高速で飛ばすための移動手段として使用した。

 ポートワールから飛ばしたのは私自身だけでなく、風の精霊・シルフと愛称でリゼと呼んでいるエルフ族のリーゼロッテ・ラビティリスの計三名だ。


「カノン!いきなり飛ばさないでくれと以前も言ったじゃないか!」

 リゼは私に向けて不満をたれながら、私に飛ばされて乱れた髪をさっと整える。腰ぐらいまである金色の髪を整えたことで、太陽の光に照らされて煌びやかに輝いていた。その綺麗な髪の毛を紫の花が装飾されたバレッタで止める。また少々埃がついてしまったのか、ポートワールで新調した軍服とワンピースを掛け合わせた、黒いミリタリーワンピースを手で軽くはたいていた。


「リゼの髪って本当にきれいだよね、同じ女性として憧れちゃうな」

「そ、そうか?あまり自分では綺麗だと思ったことはないんだが」

「本当に綺麗だよ、羨ましい」


 私は素直にリゼの髪が綺麗だと感想を述べると、リゼは自身の髪をいじりながら少しだけ嬉しそうな表情をしていた。私はその顔がとても可愛いなと思いながら見つめているとリゼがハッとした顔になって私の方を見る。

「カノン!褒めてくれたのはすごく嬉しかった。だが、急に飛ばしたことについては話が終わってないぞ!」

「あらら、話しをそらすのに失敗しちゃった」

「まあまあ、カノンも悪気がったわけではないのですしもういいではありませんか」


 少しだけ離れた場所からリゼを宥めるように声をかけたのは、白いドレスから肩を出し魅力的な雰囲気を出しているシルフだ。シルフも『エア』のせいで乱れてしまった、宝石のように輝く腰まであるエメラルドグリーンの髪をさっと整えつつこちらへ向かってくる。

「それに気持ちよくありませんでしたか?」

「気持ちいいって、風のことか?」

「それもありますが、カノンが楽しそうに無抵抗な私を飛ばしたときのあの感覚、思い出しただけでもぞくぞくします!」

 いやいやシルフの言ってることが理解できないよ。私は一瞬で鳥肌が立つほどぞくぞくしちゃったよ。私が出会ったころのシルフはもっと落ち着いた雰囲気で、でも甘えん坊なお姉さんみたいな精霊だったのに本当にどうしたのかな。もしかしたらこっちが素のシルフなのかな。


「シルフ、発言がまるで変態ですよ。精霊としての自覚を持ってくださいとポートワールを出る前にも言いましたよね?」

 今しがたシルフに注意をしたのはアルカだ。アルカは私が『エア』で飛ぶときに勢いで離れないように私の胸元にしがみついていて、シルフを注意すると同時に宙に舞った。

 アルカの容姿は妖精なのだが風の精霊たるシルフに精霊としての在り方を注意したのには訳がある。実はアルカ、元々は精霊界の王女・アルカディウスなのだ。故あって魔王軍に殺されてしまいその後妖精として転生した。初めは転生したことを誰にも話さないようにと私とアルカで秘密にしていたのだが、アドラメレクの一件があり秘密を抱えたままでは今後の活動に支障があるとアルカは判断し正体をさらけ出した。

 その結果、シルフは元・精霊王女であるはずなのにシルフのお母さんもしくはお姉さんのような役目を担うことになってしまった。シルフはシルフで、アルカはシルフが生まれてからのことを知っているのでもう取り繕っても意味がないと考えたのか、色々とさらけ出すようになった。


「そうです、認めましょう!私は変態です、これでいいですか!」

「言い訳ないでしょう!今の貴女を見たらこれまで慕ってきた妖精たちががっかりしますよ」

「うっ、それは~そうかもしれませんが~」

 シルフはアルカから目線を逸らせて、まるで子供の様に拗ね始める。


「ねえアルカ、もしかして私が退院してからのシルフが素の状態なの?」

「そうですね、残念なことにあれが本来のシルフです。良く言えば皆さんと打ち解けた証でもありますが、少々度が過ぎているような気がしなくもないです」


 本当に残念そうな表情で今のシルフを見ながらアルカは言う。

 すると、シルフは頬を少しだけ膨らませながら私の方に視線を向ける。

「むぅ、カノンは今の私は嫌いですか?」

「ううん、寧ろもっと好きになったよ」

「…へ?」

 シルフは想像していた回答と違ったのか、素っ頓狂な声をあげる。


「シルフは今まで本当の自分を抑えて私たちに接してくれていたんだよね?でも、今は素のシルフを見ることができて、心を開いてくれたんだなって思ったら嬉しいし、好きになっちゃうよ」

「でも、自分で言うのも変ですけど大分性癖が偏ってますよ?」

「大丈夫、私も偏ってるし気にしないよ!」


 そう、私も美女と美少女が大好きだという性癖があるのでシルフの性癖が偏っていようが嫌いになるわけがない。

「貴女という人は本当に、素敵な人ですね」


 シルフがぼそっと何かを呟いていたけど、私まで聞こえてこなかった。何て言ってたのかな、私がシルフに聞こうとした瞬間、王都の方から騎士の甲冑を装備した団体がこちらへ向かってくる。

 何をしたかは見当もつかないけど、私はここで絡まれると面倒くさいことに巻き込まれるのではないかと考え、アルカたちの方に視線を向けると私の考えと同じという風に軽くうなずく。

 アルカは私とシルフに身体強化魔法をかけ、騎士団に見つからないように素早く行動し王都内に入国する。


「それじゃ上手く入国できたことだし、さっそくギルドに行こうよ」

「その前に少しいいですか?」

「どうしたんだ?」

「はい、これから長い間こちらでお世話になることですしアパートメントを借りませんか?」

「アパートメント、とはなんですか?」

「アパートメントとは集合住宅のことです。人数を増えてきましたし、プライベートなこともあるでしょう。ですから各々の自室があるアパートメントを借りたいと思うのですがいかがでしょう。幸い、資金は十分にありますからお金に困ることはないはずです」


 アパートメントか、確かに自室が欲しいなと少しだけ思っていたからアルカの提案はかなり魅力的だ。それに宿だと、買い出しのときに鍵の貸し借りが手間になってくるもんね。

 シルフ、リゼ共にアルカの提案に賛成のようで可決された。

 私たちは物件を探すために不動産を訪れた。今回私たちの担当をしてくれたのは若い人間のお兄さんだった。


「タルサーシャ不動産をご利用いただきありがとうございます。本日担当させていただきますレイダースと申します。よろしくお願いいたします」

「私はカノンって言います。よろしくお願いいたします」

「よろしくお願いいたします。お疲れでしょうからよければお茶をどうぞ」

「ありがとうございます」


 私たち全員にお茶を出してくれたレイダースさんは、棚から大きなファイルを持ってきた。

「では初めに、どのような物件をお探しかお伺いしてもよろしいですか?」

「どのような、か」

 どのような条件と言われてもパッと思いつかなかったので、まずは四つ部屋でかつお風呂とお手洗いが分かれている所で条件を絞ってみた。

 するレイダースさんは四つ部屋のあるアパートメントはほぼお風呂とお手洗いは別なので、他に希望はあるかと爽やかな笑顔で聞いてきた。

 私は一人暮らしをしたことがないので他に条件が思いつかなかったが、アルカは違う条件を提示した。それは、最上階。何故最上階がいいのか私はアルカに理由を聞いてみると、最上階は上の階からの物音がせず、洗濯物を干すときは他の建物によって日陰になりにくいから最上階が良いのだという。

 レイダースさんはそれなら条件をかなり絞ることができますよと笑顔で対応してくれた。予算との兼ね合いで私たちが提示した条件とマッチする物件は五つだった。

 

「それでは、これらの物件がお客様方の希望に沿う物件かどうか見に向かいますがお時間はよろしいですか?」

「はい、大丈夫です」

「ありがとうございます、それでは向かいましょう」


 私たちはレイダースさんが用意してくれた馬車に乗って各物件を内見しに行った。

 五つ全ての物件を見て回りどこにしようか話し合った結果、商店街から徒歩二〇分、ギルドへの距離も徒歩二〇分の物件にすることに決まった。

 他の物件と比べて利便性が高いこと、築年数が二年と新築で内外共に綺麗だったためこの物件にした。

 私たちはアパートメント『フォルテューナ』に住むということを紙面で契約し、晴れて自分たちの住む家を手に入れることができた。

ご覧いただきありがとうございます。

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