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普通の女子高校生が精霊界の王女として転生したようです  作者: よもぎ太郎
第3章 四大精霊・イフリート
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復活のK

 なんだか長い夢を見ていた気がする。

 普通の女子高生だった私が異世界に転生し、美女たちとともにファンタジーな世界で強敵と戦う、そんな夢だった。

 少しだけ大変なこともあったけど、みんなと協力して戦ったり何げないお話で盛り上がったり、とても楽しかったな。美女たちと戯れたしね。

だけど私はファンタジーな夢の世界でも失敗しちゃった。可愛い妖精さんに無茶しないでって言われたのに、私はその言葉を無視して無茶を通り越して無理をして、結局身体がもたずに暗くて深い闇の底へ落ちた。

 最後に見た景色は夢なのによく覚えている。みんなの悲しみで溢れた泣き顔、こんなことのために私は戦ったわけじゃないのにな。

 だから私は失敗したの。死んだこともそうだけど、何よりもみんなと笑っていられる世界を目指したはずなのに、私の望みとは逆の世界を作ってしまったから、失敗。

 もし、もしまたファンタジーな世界に行けたなら、今度は特別な力を私も含めたみんなの笑顔のために使おう。

 それから妖精さんの忠告もちゃんと聞こう。

 あとは…あとはみんなとまた笑ってお話ししよう。


 私が希望と懺悔が入り混じったことを考えていると、暗闇の中に一筋の光が射し込んできた。何だろう、私はその光に手を伸ばすと目も開けられないほど明るさが増していった。


「…ん、眩しいな」


 あれ、私さっきまで目を開けてたよね?

どうして瞼を閉じているんだろう。自分自身のことなのによく分からないや。

眩い光が私の瞼を通り抜けて脳に覚醒せよと刺激を送ってくるので、やたらと思い瞼をゆっくりと開く。

 私は薄っすら目を開けるとそこ移っているのは白い壁に白い天井、左側を見れば白色のスライド式のドアと点滴があり、右側に視線を向ければ白いカーテンで隠れている窓を視認することができた。外からの光がほとんど遮断しきれていないので、きっとあのカーテンは遮光性のカーテンではないな、と推理してみる。

 瞼だけじゃなく、身体もやたらと重いなと思ったので、頭を動かして自身の身体の方を向くと頭が激しく揺れる感覚がして吐き気が襲ってきた。

頭をちょっと動かしただけなのに何でこんなに気持ち悪くなるの!


吐き気が収まってきたところで、一瞬だけ見た自身の身体を思い出す。

まず両腕が白い布でぐるぐる巻きにされてたな。それから真っ白なお布団の中にいることも確認できた。

私のいる空間、白しかなくない?

情欲にまみれた私の心を浄化するために、この空間に連れてこまれたのかな。それなら納得するけど。


 よし、真面目に分析してみよう。白い布、多分包帯だろうけどそれに巻かれた両腕、利き腕ではない方に点滴、白いお布団の中に身を包んでいる私、もしかしなくても入院してるな?

 え、もしかして私生きてるの?確か私はあのファンタジーな世界でも元々いた世界でも同じ結末を迎えているはず。


 …変な期待は持たないでおこう。

そのうち私を天へと導いてくれる、美しくも儚げな美女天使が私を迎えに来てくれるに違いない、私はそう信じてる。


 するとスライド式のドアからコンコンとノック音が聞こえ、私の名前を読んでからガラガラとドアが開かれた。

 噂をすれば何とやら、誰かが来たみたい。ま、噂なんてしてないけども。

私は薄めでこちらへ近づいてくる何者かを見る。


「えっ?」

何ということでしょう、可愛らしいピンク色のナース服でコスプレをしている美女天使がやってきたではないか。それに理由は分からないけど、私の方に顔を近づけてくる。

 ああ、尊みが強すぎて今にも天に召されそう。

 そうか理解できたよ。両腕が包帯でぐるぐる巻きにされ、さらに重くて動かせない理由、

それは私の情欲が暴走して天使に手を出さないように予め細工された神様のいたずら…!


「カノンさん、今日もぐっすり寝てますね」

「あ、いえ、起きてます」


 あれ、口が上手く動かないな。まるでしばらく動かしていなかった機械が久々に稼働したようなぎこちない感じを体感している。


「ですよね、今日は起きてますよね。え、カノンさん意識戻ったんですか!?」

「どうやら、戻ったみたいです。さぁ私を滅茶苦茶にしてくだ…」

「これは大変です!早く皆さんに知らせなくては!」

 

そう言って私の言葉を全て聞かずに天使はどこかへ行ってしまった。

 はっ!もしかして、情欲を口にしてしまった私を浄化するために、この部屋にあるもの以外で真っ白い何かを取りに行ったのでは?

 私は天使に一体何をされるのだろうか、不安よりも期待が勝った状態で待つことにした。

 数分ほどしてから、ドアの方からカッカッとテンポよく歩いてくる音が聞こえてくる。再び天使が来たのかと思いドアの方を見ると、あら不思議。

今度は青みがかった長い髪にどんな悪党でも優しく受け入れてくれそうな美しい顔立ち、青い髪によく似合うターコイズブルーの瞳がとても印象的な白衣の天使がやってきた。

なるほど、この方が私のふしだらな心を浄化してくれるんだね。

だけど残念でした、むしろその姿を見て私の情欲は鰻登り…!


「どうやら本当に目が覚めたようですね。おはようございますカノンさん、私の声ははっきりと聞き取れていますか?」

「あ、はい、聞こえてます」

「ありがとうございます。それでは…」


 天使は真面目に私と向き合って診断してくれたんだけど、ごめんなさい。何を聞かれたか全く覚えていないんだよね。

というのも天使が私に質問するとき、時々さらさらなストレートの髪が垂れて、それを耳にかける動作が美しすぎて、言葉よりも所作を記憶に焼き付けていたのが原因だ。

 ああ、この人が私を導く天使なんだな、目が覚めた時よりも元気になった気がするよ。


「それでは最後の質問ですが」

「え、最後...」


 嘘でしょ、最後ってことはもう天使とお話しできなくなるってこと?

 私はきっとこの世の終わりのような絶望した顔をしていたのかもしれない、天使は最後の質問をする前に、今後の予定について話し始める。


「診断が終わってカノンさんの体力が回復したら、今度はリハビリテーションを行います。長いこと眠っていましたから、衰えてしまった筋力を改善していただきます」

「そうなんですね、じゃあ最後の質問でお別れですか?」

「本来であればそうなんですが、今回はとある方々のお願いで特別にカノンさんの専属の先生になりました。ですから私と一緒にリハビリ頑張りましょうね」

「はい、頑張ります!」


 嬉しすぎて今日一番の声が出ちゃった、恥ずかしい。だけどまだ天使と一緒にいられるんだと考えただけで、嬉しい気持ちになる。

 それにしても天へ召されるのにリハビリっているのかな。


「あの、リハビリって何をするんですか?お空を飛ぶ練習ですか?」

「ふふっ、何を言ってるんですか。そんなことしませんよ」

「でも、ここって天国へ行く前の出発地点ですよね?」

「いいえ、ここは病院です。カノンさんはちゃんと生きていますよ。ほら、自分の手を胸に当ててみてください」


 私は天使、ではなく女医さんに言われた通り包帯でぐるぐる巻きにされている右手を胸に当ててみる。すると、トクットクッと心臓が動いているのが伝わってくる。

 本当だ、私は、生きている。また、アルカたちとまたお話しができる。

 どうしてかだろう、嬉しいのに涙が出てくる。溢れ出てくる涙を女医さんがハンカチで拭ってくれた。


「カノンさん、リハビリを頑張ってカノンさんを待っている方々に元気な姿を見せてあげましょう」

「…はい、私、頑張ります!」


 女医さんの言う通り、みんなでまたお話ができるように、みんなのために戦えるようにリハビリを乗り切ろう。


「ところで先生、先生も私の胸に手を当ててくれませんか?なんだかドキドキするんです。この胸の高鳴りをその手で聞いてくれませんか?」

「それでは最後の質問ですが...」


 なるほど、何故女医さんが私の診察およびリハビリの専属に選ばれたのか、そして誰にお願いをされたのかが分かったよ。

 私のやる気と活力を最大限に引き出しつつも、私の発言を華麗にスルーできる素質を持った人を選んだわけだね。そしてその人選を行ったのは、アルカだ。

 ありがとうアルカ、美人なお姉さんはどんなお薬よりもよく効くよ、ということも計算に入れてるんだろうね、きっと。

 ああ、早くみんなに会いたいな。

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