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普通の女子高校生が精霊界の王女として転生したようです  作者: よもぎ太郎
第3章 四大精霊・イフリート
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幕間2

 前世での私は本当に無力だった。

 運動や勉強、何をするにもすべてが中途半端で、何か秀でた技術や技能を持っていなかった。それでも生きていればきっと私にも何か誇れるような才能が開花する、そう信じて生きてきた。

 年齢を重ねるにつれて、才能を開花し始める同級生の姿をいつも横目に見ていた。その人たちを妬むわけではなく、純粋に羨ましいなと思ってたな。だって、才能を発揮しているときのその人たちの表情は、まるで世界が光り輝いているような、楽しそうな表情をしていたから。

 そうして周りの人たちが輝いていく中、私にはまだ何もなくって、私が出来ることって何だろうって暗闇から小さな、とても小さな宝物を探すよう模索していた。


 だけど、そんな日は突然別れを告げて、才能が開花したと思える出来事がやってきた。

それは下校途中にトラックに轢かれそうになっていた女の子を見たときだ。

誰も助けに向かわない中、私だけが条件反射のごとく身体を動かし女の子を助けたとき、不謹慎なんだけど、人生で初めて自分が輝いていると感じた。

周りの人たちは動けず見守っていた中、唯一私だけは動くことができた。私には危険であっても足がすくむことがなく、人助けができる才能があるんだって思ったんだ。その瞬間、すごく救われた気がしたの。


たとえ自分の命を犠牲にしてでも。


 だけど、その才能と思考が私を歪ませて、結果的に失敗に導いた。

 女の子を助けてた後、私はとある精霊王女のおかげで特別な力を手に入れた。その力とは魔法だ。転生した世界では一般的でごくありふれた力なんだけど、秀でた才能のない私にとってはとても特別な力だった。

 シルフと出会ったとき、シルフの幻影ではあったけどベリアルと初めて命がけの戦いをした。その時の私は今思えばどこかおかしかった。特別な力があるからとおごり高ぶっていて、さらに厄介な才能が相まって、そのときの戦いは恐怖もあったけど楽しくもあったんだ。

だって特別な力と才能があればどんな困難な状況でも、誰かを助けてあげられるって考えてたから。自分の命は考えてなかったのにね。


 アルカが救ってくれた命を私は無意識におざなりにしていたんだ。


 アドラメレクとの戦いもそうだった。アルカに無茶をしないでと、再三忠告されたのに私は色々と言い訳をしてアルカの言葉を無視し魔法を酷使した。特別な力でみんなを守れるならって思ったから。


 でもそれは間違いだったんだよね。


 間違いに気づいたのは戦いが終わった後だった。

 私は身体中の痛みに脳が処理しきれず、気を失う一歩手前、一瞬だけみんなの顔を見ることができた。

 アドラメレクを倒すことができて、みんなのことも守れたから喜んでいる姿を視れると思ってたんだ。

 でも、一瞬しか見れなかったけど、あのときのみんなの表情は鮮明に覚えてる。

だって、笑顔なんてどこにもなかったから。それどころかみんな泣いていた。

 嬉し泣きだったら良かったのに、私が見たのは悲しくて泣いている顔だった。


 自分を犠牲にしてまで得たかったものと実際に得たものは全く違った。誰かを守るなんて大義名分を抱えて、自分の命を犠牲にしたところで、誰も幸せになれないんだってやっと気が付くことができた。

 当たり前のことなのに、今更気付いたんだ。逆の立場を想像すれば簡単に分かることなのにね。

 私が特別な力でやり遂げたかったことはこんなことじゃなかったんだ。


 私はアルカたちのおかげで才能という呪縛から解放された。

 

もし、まだチャンスが私にあるのなら。

 今度は自分を大切に思ってくれているみんなを悲しませないように、この特別な力を使おう。

 みんなが、私が笑顔でいられるようにこの特別な力を使うんだ。


 私のお願い、届くかな。

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