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普通の女子高校生が精霊界の王女として転生したようです  作者: よもぎ太郎
第3章 四大精霊・イフリート
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炎の化身あるいは太陽の化身

 私の横には、血が染み付いたような赤い髪の毛を肩ぐらいまで伸ばした青年がいる。人間と圧倒的に違うところは頭に二本の角と漆黒の翼を禍々しく生やしている点だ。

 およそ人間とは思えない青年に向かって、イフリートは苛立ちを露わにしている。


「おい悪魔、ここがどういう場所か分かってんのか?」

「分かってるに決まってるよぉ、イフリートさぁん!僕は君を殺しにきたんだからさぁ!」


 なんだろう、イフリートを馬鹿にしたような話し方をしてるけど、本当に頭が良くないのではないかと思っちゃう喋り方をするな。

 それに、申し訳ないど声と喋り方がいちいち聞くだけでイライラする。


「俺を殺すだと?寝言は永遠に眠ってから言えよクソ悪魔!」


 いやいやイフリートさん、永遠に眠ったら寝言を言えないでしょ。私はついつい心の中でツッコミを入れてしまう。


「永遠に眠るのは君だよイフリートさぁん!僕は君を殺して最強の悪魔として魔王様に認めてもらうんだからさぁ」

「雑魚悪魔が俺に敵うわけねぇだろ」

「僕は雑魚なんかじゃないよぉ。そうかぁ、まだ名乗ってなかったからそんな余裕な態度でいられるんだねぇ」


 間抜けそうな悪魔が少しずつ宙に浮き始め、私たちを見下しながら名乗る。


「僕は魔王軍四天王の一人、炎の化身あるいはぁ太陽の化身、アドラメレクでぇす。さぁ僕に恐怖し絶望せよ!あははははは!」


 魔王軍四天王の一人、アドラメレクか。

 どうしよう、全く恐怖しないし絶望もしてない自分がいる。まだアドラメレクの恐ろしさを知らないからこんなことを思ってるのかな?

 周りを見回すとイフリートとシルフ、そしてアルカは私と似たような顔つきになっている。私はそれを見て通常通りの反応なんだと思い、少し安心できた。

 しかし、リーゼロッテだけは違った。回復に専念するために伏せていた目を開き、憎しみや恐怖といった表情をしている。


「てめえ四天王だったのか。ちっ来るのが遅ぇぞ...」


 私はイフリートが小さい声でそう言っていたのを聞いた。来るのが遅いとはどういうことだろうと考えているのも束の間、リーゼロッテは怒りで震える身体を起こしアドラメレクを睨みつける。


「炎の化身、だと...。貴様が、貴様が私の同族を殺したのか!」

「ん?君は確かぁ、あ!思い出したぁ、あの時のエルフ族の生き残りかぁ!」

「覚えているのか...!」

「覚えているともぉ!いやぁ、あの時の殺し合いは本っ当に楽しかったなぁ。高い知性と魔力を持った何人ものエルフ族をいとも簡単に殺した時のあの快感は今でも忘れ...」

「っ!」


 リーゼロッテは目を見開き地面に落ちたハバキリを拾い上げて、宙に浮いているアドラメレクの所まで跳躍し斬りかかる。しかし、その行動を読んでいたのか、アドラメレクの態度は依然と変わらなかった。

 

「僕さぁ、今話してる途中だったよね?せっかく思い出して楽しんでたのにさぁ、邪魔しないでくれる?」


 アドラメレクは無詠唱で左手から複数の炎の魔球を放ち、リーゼロッテはそれらを全て浴びせられ再び地に伏してしまう。


「リーゼロッテ、大丈夫?!」


 私はリーゼロッテが落ちた場所まで駆けつけている間、シルフが援護射撃をしてくれていた、本当に助かる。私は傷ついたリーゼロッテに回復魔法を使い傷を素早く治すと、リーゼロッテはアドラメレクに再び斬りかかろうとしているのか立ち上がろうとしている。だけど、復讐に身を任せてこのまま戦っていたら体力が持たないし、何よりも心が擦り減っちゃうよ。だから私は、リーゼロッテに少しでも冷静になって戦ってほしかったので、歩みを進めようとしているリーゼロッテの腕を掴んで阻止していた。すると、今までに見たこともないような鋭い眼光で私を睨みつける。


「カノン邪魔をしないでくれ、目の前に斬らねばならないやつがいるんだ。その腕を離さないのであれば斬る」

 今のリーゼロッテは普通ではない、いや目の前に同族の仇がいるのであれば普通のことなのかもしれない。だけど、このまま無意味に突っ込んでもどうせ返り討ちに遭うだけだ。私は、無駄に傷つくリーゼロッテを見たくはない。 


「斬りたいなら斬ればいいよ。そしたら反対の手でリーゼロッテを止める」

「なら、反対の腕も斬る」

「そしたら、来ている服を噛んで止める!」

「...っ!どうしてそうまでして邪魔をするんだ!同族を目の前で殺されたこともないカノンに私を止める資格なんてないだろう!」


 リーゼロッテは今まで心に溜めていた感情をさらけ出す様に私に向けて叫ぶ。その姿はひどく、痛々しかった。そんな彼女を救ってあげるには正論をぶつけることでも、力でねじ伏せることでもない。リーゼロッテの想いと私の想いをぶつけ合うことだ。


「そうだよ、資格なんてないよ!私にはリーゼロッテがどれだけ辛い思いをして生きてきたかなんて、想像してもしきれないよ」

「ならばなぜ止める!私はあの日からずっと一人で生きてきた。それがどんなに辛くても復讐をしたいその一心で今日まで生きてきたんだ、だから...」

「今は私がいるでしょ」

「何を...」

「だから、今は私が傍にいるでしょって言ってるの!もうリーゼロッテは一人なんかじゃない!」


 私の言葉がどのような形となって響いたのか分からないけど、復讐心で顔を染めていたリーゼロッテの表情は退いて代わりに少しだけ頬を赤らめて居たたまれないといった表情になっていた。


「突然何を言って、ってそうじゃなくて、私はカノンに傍にいてくれなんて頼んでいない!」

「分かってるよ、私が傍にいたいからそうしてるだけ。だから腕でも首でも斬っていいからこれだけは覚えておいて。リーゼロッテの傍には、リーゼロッテのことを心配してくれたり、幸せを願っている人がいるんだってことを」

「カノン...」


 リーゼロッテは私の瞳の奥を見据えて、真偽を確かめていた。数秒間見つめられ、私が言ったことがその場を凌ぐための眉唾ではないと信じてくれたのか、リーゼロッテは肩の力を抜くように深く呼吸をした。

「...それで私はどうすればいいんだ?」

「リーゼロッテ...!」

「こ、こら戦闘中だぞ!抱きつくんじゃない!」

「えへへ、ごめんね。そうだね、一緒に戦ってほしいな」


 今、冷静に対処できるリーゼロッテがいればきっと勝てる。私はそう思ってリーゼロッテに共闘を申し込むと二つ返事で了承してくれた。すると、少し離れた場所からシルフの声が聞こえてきた。

「お話は済みましたかー!」

「うん!じゃ私たちも頑張ろっか」

「ああ!」


 のちにアルカが私から少し離れた場所まで来て、身体強化魔法をかけてくれた。

「アドラメレク、貴方は私たちが必ず倒します!」

「威勢がいい妖精がいるねぇ、まずは君から殺そうかぁ...って君、もしかしてカミーユかい?」

「どうしてアドラメレクがカミーユのこと知ってるの?」


 私は誰にも聞こえない声で呟いてしまった。アドラメレクとカミーユは面識があった、ということなのだろうか。

 

「カミーユとは誰ですか?私はアルカです、貴方の知っている妖精ではありません」

「そんなこと言われてもねぇ、どこからどう見てもカミーユじゃないかぁ」

「借りにアルカがカミーユだとして、アドラメレクとはどういう関係なの?」

「カミーユはねぇ、魔王様にとって害悪とも呼べる妖精なんだよねぇ。つまりさぁ、君が生きてるってことが魔王様に伝われば僕たちでも止められないわけさぁ。だから、イフリートよりも先に君を確実に殺す」


 アドラメレクはふざけた態度から一変、アルカの方へ手をかざし無慈悲なる炎の魔球を何十発も放ったのだ。

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