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普通の女子高校生が精霊界の王女として転生したようです  作者: よもぎ太郎
第3章 四大精霊・イフリート
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ゴーレムのコア

 生物は想定外の事が起こると脳が事態を処理しきれずに一瞬だけ停滞してしまう。そして、ようやっと処理しきれるようになると次にとる行動は二通りに分かれると思う。

 一つはとにかく行動しなければとパニックになって慌てふためく。

 もう一つは走馬灯、つまり過去の経験から危険を回避できる術は無いかと脳が高速で処理する。

 

 何が言いたいのかって?

 それはアルカが背後から突然ゴーレムの右手拳が来たものだから、固まって動けなくなっていたのだ。突然の事態に動けなくなる現象というのは元精霊王女でも起こりえたということ。


 さて、先ほどシルフにアルカを助ければいいんだよとかっこいい言葉を並べた手前、この状況はなんとかしなきゃだよね。一瞬でアルカの元へ行ける方法、私はその術を一つしか知らない。


「『エア』!」


 私は右手の掌から後方に向けて『エア』を使い、その勢いで空中で固まっていたアルカを抱きかかえてゴーレムの攻撃を華麗に避ける。


「アルカ、どこも怪我してない?」

「...はっ!ええ大丈夫です」

「見事に固まってたね」

「弱点らしい所を見つけて完全に気を緩めていました、助けていただいてありがとうございます」

「ううん、助けるのは当然だよ」

「ところで花音、一ついいですか?」

「どうしたの?」

「ゴーレムの頭上まで飛んできましたが、ここからどうするのですか?」


 アルカに言われて気づく。アルカを助ける一心で『エア』を使い宙に飛んだものの、ここからどうやって着地しようか何も考えていなかった。すると、ゴーレムが私をロックオンし巨大な拳を私に向けて振りかざしてくる。

 これは、流石にピンチなのでは?


「私に任せてください!『エアブラスト』!」


 ゴーレムの拳が私に接触する前に、シルフの魔法でゴーレムが振りかざしてきた拳の軌道を変え私に当たらずに済む。さらに、シルフはゴーレムの足元に魔法を放って地面を壊し、足元がおぼつかなくなったゴーレムは膝から崩れ落ち顔は下を向いた。


「ありがとう、シルフ!」

「当然です!カノンの無茶を貫き通すお手伝いをするために私はここにいるのですから!」


 シルフの言葉に私は嬉しすぎて泣いちゃいそうだよ。後でたくさんシルフとイチャイチャしよう、そうしよう。

 さて、シルフがせっかく作ってくれたこの最大のチャンスを活かさないとね。

 私はアルカが言っていたゴーレムのうなじの周辺を見てみる。


「あ!あった!」


 ゴーレムのうなじに赤いコアが埋め込まれていた。明らかにゴーレムを動かしている核だ。

 私は、そのコアに右手をかざす。


「『ライト』!」


 私の掌から放った光の魔法は見事にゴーレムのコアにヒットした。


「嘘でしょ!?」


 赤いコアが無傷なんだけどどうしてなの!

 私の疑問に私の左腕に抱えられているアルカが答えてくれる。


「先ほど花音の魔法を当てた瞬間に防壁のようなものを確認しました。あの防壁を壊さない限りコアにダメージを与えることは出来ないのだと思います」


 防壁か、まぁ弱点をさらけ出したままには普通しないか。ただ、裏を返せば防壁を張るほど重要な場所だということになるよね。

 私は左腕に抱えていたアルカを離し、『エア』をゴーレムに当てて私自身はさらに高く舞い上がる。


「花音、何をしているのですか!?」

「少しだけ本気出して魔法使おうかなーって!」

「少しだけ本気で、ですか。今の花音の少しだけ本気の魔法...離れた方がよさそうですね!」


 アルカはシルフの元へ全力で向かい、何やら事情を説明しているように見える。そして、シルフが目を輝かせながらゴーレムから、いや正しくは私が魔法を放った後の二次災害に遭わないように安全な場所へ退避していく。

 何で、シルフが目を輝かせているのか後で聞いてみよう。


「さて、やりますか。大体8割ぐらいの威力で、かつ防壁を貫けるように魔法の密度を出来るだけ凝縮するイメージで...」


 両手の前に魔方陣が展開し、その魔方陣の前に白い魔力球が顕現する。今までには見られなかった現象だけど、きっと魔力操作が上達して一点に魔力を集めることができるようになった、ってことなんだよね。


「準備できたし、やりますか。防壁もコアも貫いちゃえ!『ライト』!」


 『ライト』は私のイメージ通り細い光線になって一直線にコアに向かう。先ほどは私の魔法を防いでいた防壁は、針でペラペラの紙を刺すように簡単に貫くことができ、続いて赤いコアも豆腐と同じくらい柔らかいんじゃないかと思うぐらいいとも簡単に破壊することができてしまった。

 さらに言えば、かすり傷程度しかダメージを与えられなかったゴーレムの身体も貫き、大爆発を引き起こした。

 ...最初からこうすればよかったのかな、いやアルカが弱点を見つけてくれなかったら闇雲に魔法を使ってたから結局同じことをしていたはず。そういうことにしておこう、うん。


 私の手によって赤いコアが砕かれたゴーレムは、操り人形の糸が切れたかのようにその場に崩れ落ちた。

 よし、やっとリーゼロッテのあとを追える。その前に高く飛びすぎた私はどうやって着地すればいいのかな。このままじゃぺしゃんこになっちゃうよ!

 私は引力に吸い込まれるように地面に落下していく。


「助けてー!」


 私の叫び声は空しく鳴り響いただけで、地面にダイブしてしまった。


「...あれ、全然痛くない」


 私は体を起こし傷がないことを確認する。


「私は遂に人間を辞めてしまったのかな」

「そんな訳ないじゃないですか。私の身体強化魔法をお忘れですか?」


 安全な場所に退避していたアルカが私の元へ来てくれた


「あ、忘れてた」

「ずっとかけていたのに忘れてたなんて酷いですよ」

「本当にごめん、あと魔法かけ続けてくれてありがとう!助かったよ」


 続いて興奮しているシルフが私たちのところへきた。


「カノン、先ほどの魔法は凄かったですよ!また、魔力操作に磨きがかかったようで私はカノンの成長を近くで見れて嬉しいです!」


 なるほど、私が『ライト』を使う前に目を輝かせていたのは、私の成長を見れると思っての表情だったのか。シルフが私の成長を心から喜んでくれてすごく幸せだな。


「それじゃ、先に行っちゃったリーゼロッテを追いかけよう」

「はい」

「行きましょう」


 私たちは大きな出入口を通ってリーゼロッテとイフリートがいる火口内へ進んでいった。

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