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普通の女子高校生が精霊界の王女として転生したようです  作者: よもぎ太郎
第3章 四大精霊・イフリート
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異世界転生と異世界召喚②

 リーゼロッテがどんどん前に進んでいく中、シルフは厳しい口調でアルカに問いかけている。幸いと言うべきかリーゼロッテはこの話を聞いていない。

 シルフの問いかけに対し、アルカは下唇を噛みながら身体を震わしている。


「申し訳、ありません。そこまで考えていませんでした...」


 アルカはそう言ってから涙を流す。きっと、アルカはもし自分の大切な人の安否がずっと分からないまま、当てもなく探し続けたらどういう気持ちになるのかを想像したのだろう。

 アルカは涙で濡れた頬を手で拭ってから、私に視線を向けた後にシルフに視線を向ける。


「ですが、どうしてもそうする必要があったのです」

「それは、カノンの魔力が高いことを最初から知っていたからですか?」

「いえ、魔力が高いことはこの世界でカノンに会ってから初めて知りました」


 私がアルカと会ったときから、私の魔力が高いことは知ってたんだね。何だか複雑な気分だな。


「では何故こんなことをしたのですか?」

「花音と一緒なら、どんなときでも楽しいだろうなって思ったからです」


 え、そういう基準で私を選んでくれたの!?


「精霊界を守るためじゃなくて?」

「はいす。もし転生後に断られたとしても、精霊界を救った後でも傍にいると決めていました。ですから傍にいるのであれば一緒にいて楽しい人がよかったのです。それが花音を転生させた私の責任の取り方です」

「アルカ、それだけでカノンを転生させたのですか?」


 アルカは首をフルフルと左右に振って、私を転生させたのはそれだけではないことを行動で示す。


「花音は思いやりと勇気のある人です。私は不慮の事故に遭うまでの花音の行動を観察していました」

「そうなの!?」

「私は花音の行動を見て、こんなに素敵な人がまだ十代という若さで失ってしまうということが、私には耐えられませんでした」

「だから、私を転生者として選んだんだね」

「はい。ですが、シルフ様の言う通り花音のご家族やご友人の気持ちを考えずに転生させてしまいました。本当に申し訳ありません」


 アルカは深々と頭を下げて、私に向けて謝る。


「アルカ、顔を上げて」

「ですが...」

「いいから、顔を上げるの」


 アルカは恐る恐るではあったが顔を上げてくれた。


「確かにシルフの言う通り、今でも私のことを探してくれてるかもしれないお父さんやお母さん、友達のことを思うとすごく胸が苦しいよ。でもね、私が今こうしてまた楽しく生きてられてるのはアルカのおかげなんだよ。だから、私のことを選んでくれてありがとう」

「花音...!」


 アルカは私の言葉を聞いてから再び泣いてしまった。


「ごめんなさい、ごめんなさい...」

「もう、そんなに謝らないで」


 それからしばらく、アルカは謝罪の言葉と涙が止まることはなかった。

 どれくらい経っただろうか、アルカは泣き止み謝罪の言葉もやめてくれた。


「アルカ、先ほどは厳しく知ってしまってすみませんでした」

「いえ、シルフ様の言うことは間違っていないので謝らないでください」

「それでも、です。アルカディウス様がいなくなってしまったことと、カノンのことを重ねてしまって感情的になってしまいました」

「アルカディウス様と私?」

「はい。実はアルカディウス様が殺されてしまった、という情報は言伝でしか聞いていないのです」

「どういうこと?」

「まだ、アルカディウス様の亡骸が見つかっていないのです」

「そうなのですか!?」


 アルカは驚きのあまり声を大にしてしまう。私もアルカと同様にかなり驚いていて、アルカディウス様は今カミーユの身体の中にいるので殺されているのは間違いないのだ。

 それなのに亡骸が見つかっていないとはどういうことなのか。


「ですから、カノンの大切人たちも私と同じように辛い思いをしているのかと考えたらついつい感情が抑えられなくなってしまったのです」


 シルフの一言で、沈黙の時間が始まってしまった。頂上に近づいてきたのか、所々溶岩が流れていて小石を焼く音がやけに響き渡る。


 あーダメだ、私はこの状況に耐えられない。今この雰囲気は緊張からくるものじゃなくて、お互いに気を使っているから沈んだ雰囲気になっている。

 いつもの雰囲気になるように私がやることなんて決まってる。

 

 まずはアルカから攻略するよ、言いたいこともあるし!

 私は、前を向いて飛んでいるアルカの耳元まで歩き、そして耳にふぅっと息を吹いた。これやられると、続々ってするよね、よく朱莉ちゃんにやられてたな。


「きゃっ!何するんですか、花音」

「アルカさ、私を転生させた責任として私といるってさっき言ってたよね?」

「いいましたね」

「その責任は背負わなくていいよ」

「どうしてですか?」

「だって、アルカが私といることが義務みたいで嫌なんだもん。責任なんて言葉を使わないでさ、私といたいから一緒にいる、それぐらいシンプルでいいんじゃないかな?」


 私は以前シルフに教えてもらったシンプル思考をアルカに伝える。すると、アルカはぽかんとした顔をしてから先ほどよりも柔らかい表情になった。


「花音の言う通りです、義務感で一緒にいられても嬉しいはずないですよね。先ほどの言葉は訂正します、責任ではなく私は心から花音と一緒にいたいです」

「アルカから愛の告白を頂いたよ!」

「告白ではありますがそこまでの感情はありませんよ!」

「無いの!?」

「無いですよ、全く...。うふふ」


 アルカが愛の告白をしてくれなかったのは残念だけど、笑顔になってくれてよかった。やっぱりアルカは鋭いツッコみと笑顔が一番似合ってるよ。

 さて、あともう一人シルフだけだね。

 私はシルフの方を見てみると、頬をぷくっと膨らませて拗ねていた。基本的に年齢に見合った言動をするが、こと私のこととなると子供っぽくなる。そこがまた可愛いんだよね。


「シールーフー、頬を膨らませてどうしたの?」

「別に、何もありませんけど?」

「本当に?」


 私はシルフの顔を覗き込むように見る。本当にシルフはお肌が綺麗だな、じゃなくてシルフを元気にしてあげるんだ。私はシルフが元気になってくれるように頭を撫でる。


「シルフ、私の代わりにアルカに注意してくれてありがとう」

「私は言いたいことを言っただけなのでお礼を言われることはしてません」


 今のシルフは手強くまだツーンとしていて、笑顔を見れていない。ならば奥義を使うしかないね、シルフが笑顔になってくれるなら私はキャラ崩壊なんて怖くない!

 私はシルフのことを優しく抱きしめて、上目遣いをする。

 シルフは突然のことに私と目線を合わさずにはいられなかったのか目と目が合う、これで条件は整った!


「私ね、シルフの笑顔が大好きなんだ。だから私に可愛い笑顔見せてほしいの、お願い」


 私は声のトーンを少し上げて、甘えるようにシルフにお願いをする。私は本当にこんなキャラじゃないんだけど今は緊急事態だから、エマージェンシーだから頑張るよ!

 シルフは徐々に徐々に顔を赤く染めあげ、口も金魚の様にパクパクと閉じた入り開いたりしている。

 私は最後に抱きしめている力を少しだけ強める。すると、今までの攻撃でシルフの拗ねてるモードから一変して笑顔を通り越してデレデレモードに突入した。


「カノン、もう一回上目遣いで甘えてきてください!」

「いや、もう疲れちゃって...」

「お願いします」


 今度はシルフが甘えるような声音で私にお願いをしてくる。そんなことされたら、もう一回やるしかないよね!

 私とシルフはアルカに止められるまで何度も繰り返し続けたのであった。

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