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普通の女子高校生が精霊界の王女として転生したようです  作者: よもぎ太郎
第3章 四大精霊・イフリート
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仮説検証

 私たちはアステール火山の麓から頂上にいるであろう精霊・イフリートの元へ向かっている。

 しかし、私たちはイフリートに会わせないようにしているのか、将又別の働きがなされているのかは私には分からないが多くの魔物が行く手を阻んでくる。


 私たちの行く道を邪魔しているのはレッドスライム。しかも、修行の時に戦ったレッドスライムとは別格の強さだ。まず、どこを探しても口などないはずなのに火を吹いてくる。

 単体での攻撃だったら何も問題はないが集団で火を吹いてくるので、視界は遮られるわ魔法を唱えることができないわでかなり参っている。


 ここでは魔法を唱えなくても魔物を倒すことができるリーゼロッテにとても救われている。無言で魔物を斬り倒す様はまるで鬼のようだった。

 ここに来てからというもの、リーゼロッテは口数が減り代わりに苛立ちや焦りのようなものが増してきた気がする。

 きっと、リーゼロッテの仲間が殺されたという怒りと、同時に早く仇を討ちたいという焦りが頭の中だけでなく心の中も支配しているのだろう。私は本当に大切な仲間を目の前で失った経験が無いから、リーゼロッテの気持ちは想像でしか考えることができない、いや想像では到底リーゼロッテの気持ちは理解できない。


 だから、せめてリーゼロッテの気持ちを尊重するように私は行動しようと決め、真面目モードでここまで来ている。ただ、一つだけ気が付いたことがあって、それはこういう緊迫した状況で真面目に魔物と戦っていると心がしんどくなってくるということだ。こういうときこそ何かジョークの一つや二つ言わないとプレッシャーに押しつぶされそうになる。


 ということで、リーゼロッテに聞こえないようにこそこそとアルカとシルフに冗談を言ってみることにした。


「あのレッドスライムの炎に当たったらお洋服燃えちゃうかな?」

「そうかもしれないですね、当たらないように気を付けてください」

「うん、でももし当たっちゃったら私裸になっちゃうね」

「カノン、それも魅力的ですが今は戦いに集中しましょう」

「はい」


 そういえば、もしかしたらイフリートは魔王と手を組んでいるかもしれないんだよね。だから、同胞であるアルカやシルフも緊張と焦りによって心を支配されているのか。 

 今さらこのことを思い出してしかも冗談なんか言って、私は何て気が利かない人間なのだろう。言ってしまった過去は取り消せないし、行動で名誉挽回しますか。


「とは心の中で思ってみたものの、なかなか魔法を使える隙が生まれないな」


 そう、リーゼロッテが頑張ってレッドスライムを倒してくれているが数が一向に減らず魔法を放つのに集中できる時間と呪文のような言葉を言うことができない。

 魔法を使うには、まずどのように魔法を使いたいかイメージをし、イメージ通りになるように集中してから言葉で魔法のイメージを具体化してやっと放つことができる。これはこの世界の一般常識であり、魔法を使うものであれば誰もが自然と身につけているスキルだ。


 しかし、私は一つの疑問を抱いていた。それは、イメージが具体化できているならわざわざ言葉にしなくても魔法は使えるのではないかということだ。もしそうだとすれば、魔法を使うために一呼吸する必要はなくなるし時短につながる。

 

 またレッドスライムを見ていて思ったのだが、魔物だからかもしれないが口がないのに魔法使えてるよね。レッドスライムに出来て私にできないことはないはず。

 これはレッドスライムに失礼だね、ごめんなさい。


 とにかく、今ここにいるのはレッドスライムのみ、無詠唱で魔法を使えるか試せるチャンスだ。

 私は先の戦いでリザードマンに放った光魔法をイメージする。魔法が放たれたときの感覚、相手に当たったときの衝撃、威力、魔力の消費量、そしてこの魔法は何のために使うのか。

 イメージする時間と集中する時間は一緒に出来てる、あと必要なことは何だろう。

 そういえば、もう一つ気になることがあったので私はレッドスライムの炎攻撃を避けながらシルフに近づく。


「ねえシルフ、聞きたいことがあるんだけどいいかな?」

「どうしましたかカノン」

「シルフはアルカに強化魔法をかけられてないのに、どうやってレッドスライムの魔法を避けてるの?」

「それは、レッドスライムが魔法を使う前にぷるぷると震えるのを見てから避けてるからです」

「ぷるぷる震える?」

「はい、レッドスライムをよく見ててくださいね」


 私はシルフの言われた通り、レッドスライムを注意深く観察してみる。すると、シルフの言う通りレッドスライムはぷるぷるっと身体を揺らしてから炎魔法を使っている。


「ほら、あんな風に攻撃の前に毎回震えるので、それを見て避けているのです」


 なるほど、そうやってシルフは攻撃してくるのをレッドスライムの動作を見てから、先読みして避けてるんだね。

 攻撃の前、毎回同じ動作、魔法...。

 そうか、そういうことか!レッドスライムのおかげで閃いた気がする。

 魔法を使う前に何かアクションをする、レッドスライムであれば身体を震わす。であれば私は掌の動きで魔法を使えばいいんだ。手のひらを下に向けて、魔法がレッドスライムの頭上から真下に『ライト』が放たれるイメージで手を振り下ろす。


「ていっ!」


 するとイメージ通りに魔法がレッドスライムにヒットし、一匹倒すことができた。威力は詠唱をしていないためか、想像では50%ぐらいだったが実際には10%ほどしか出なかった。だけど、レッドスライムを倒すにはこれぐらいで十分だし、何より私の仮説が実証できたことが嬉しかった。


「やった、魔法使えた!」


 私は嬉しさのあまりその場でぴょんぴょんと跳ねていると、三人が私の方を驚いた顔をしながら見ていた。

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