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普通の女子高校生が精霊界の王女として転生したようです  作者: よもぎ太郎
第3章 四大精霊・イフリート
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仲良し

 チュンチュンと小鳥のさえずりと太陽の光が朝になったことを教えてくれる。

 今日の私は今まで生きてきた中で1位2位を争うほど気分がいい。

 理由は単純だ、何と口約束ではなく本当にアルカと一緒に寝たからだ!


 まず私が寝袋に入ってそのすぐ横でアルカも横たわり、わずか1秒でアルカは寝てしまった。

 そのときの近距離で見るアルカの寝顔は尊く、それ以外の言葉が出てこない。そして朝、私が起きると続いてアルカも起きる。アルカの寝起きの顔は私の脳をコンマ1秒で覚醒させるほどの可愛さだった。

 今日の朝はそれだけじゃ終わらず、私がアルカの寝起き顔みてにやにやしていたところをシルフに見られ何を言われるかと思い身構えていたがそれは杞憂に終わる。


「カノン、今日は私の傍で寝てください!アルカばっかりずるいです!」


 だってさ。いや、昨日魔王軍が襲ってきたし、多分今日も襲ってくるだろうから緊張感を持たないといけないのは分かってる。分かってるんだけど、どうしても興奮が収まらない。

 このままじゃ私の煩悩が溢れて行動に移しそうだったので、馬車の中では瞑想することにした。

 

 しかし、残酷なことに私への試練はここからが始まりだった。


「カノン、隣に行ってもいいですか?」

「うん、いいよ」


 私は1時間ぐらい行っていた瞑想を止め、シルフに返事をする。

 かなり煩悩が消え去ったので大丈夫だろうと思った束の間、シルフは私の左隣に座りなんと腕を組んできたのだ。

 ちなみにアルカは私の頭の上、リーゼロッテは私の右隣にいる。

 

「シルフ、どうして腕を組んでくるの?」

「組みたいから組んだだけです、ダメですか?」

「ダメじゃないよ、それどころか最高に幸せだよ」

「そ、そうですか。ならしばらくこのままでいいですか?」


 私が素直な感想を述べると、シルフは顔を真っ赤にして腕を組む力を少しだけ強めてきた。

 それにシルフの方からこのままでいることを望むのであれば、私の回答は一つしかない。


「もちろん、私もシルフとしばらくこうしていたい」

「カノン...!」


 ここで、私はシルフに一つだけ嘘をついてしまった。

 しばらくと言ったが本音は永遠にこうしていたい。


「君たちは、仲がいいんだな」


 リーゼロッテが私たちのこの状況を見て、優しく微笑みながら話しかけてきた。


「はい、大の仲良しです。ね、カノン」

「そうだね」


 シルフが笑顔でそんなことを私に言うものだから、素っ気ない返事しかできなかったよ。

 ねぇ気づいてる?シルフの笑顔は私にとって効果抜群なんだよ、会心の一撃なんだよ?


「リーゼロッテにも仲良しのお友達はいるでしょう?」


 シルフの質問は全くおかしいものではなかった。

 だが、リーゼロッテにとってはそうではなかったらしく、とても辛い表情をしていた。


「ああ、いたよ。もういないけど、な」

 

 リーゼロッテの表情が少しだけ陰ったようにも見える。

 それにしても”いた”とはどういうことなんだろう。


「私の家族、友、村のみんなは全員殺されたんだ」

「えっ?」


 殺されたって、その犯人ってもしかして。


「イフリートに村ごと燃やされてな、私だけ生き残ったんだ」


 リーゼロッテの衝撃の一言に、シルフの動揺を隠せずにはいられないといった様子をしている。

 ここまで動揺しているシルフを見るのは初めてかもしれない。


「そんなはずはありません!イフリートは確かに喧嘩っ早いですし、短気なところもありますがエルフを、他者を殺すなんてそんなことしないはずですよ」

「だが、私はあのときこの目で残虐なる行為を見た。それにこの耳で自分のことを炎の化身と言っていたんだ。炎の化身など、イフリートをおいて他にいないだろう」


 この世界で炎の化身と言われ、あんなに強いエルフを全員殺すことができるものなどイフリート以外に考えられないのは当然かもしれない。


「それに、あいつは魔王軍と手を結んでいる」

「それはどういうことですか!?」


 私の頭の上でリーゼロッテの話を静かに聞いていたアルカが声を荒げる。


「イフリートは、魔物を連れて私たちの村へと侵略しに来たんだ。間違いなく魔王軍と関係がある」

「そんな、精霊が魔王軍と結託してるなんて」

「まさか、アルカディウス様が罠に嵌って殺されたのは、イフリートが裏切ったせいなのでしょうか」


 確かにシルフがそう考えるのも納得がいく。イフリートが魔王軍と結託していたのであれば、アルカを魔王城まで誘導するように仕向けることも容易かもしれない。


 だけど、本当にイフリートがそんなことをするのだろうか。


 私は一度もあったことはないけど、精霊がそんなことをするようには思えない。

 あくまで、勘だけどね。


「もし、イフリートがリーゼロッテの村を襲ったとして、勝算はあるの?」

「正直なところ分からない。イフリートに勝つために鍛えてきたつもりだが、負けたら負けたでそれでいい」

「それってどういうこと?」

「私は、村のみんなの無念を晴らしたい、ただそれだけなんだ」


 リーゼロッテがそう言うのと同時に、再びおじいさんの叫び声が聞こえてきて魔物がこの馬車を襲いにきたことを告げる。

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