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普通の女子高校生が精霊界の王女として転生したようです  作者: よもぎ太郎
第3章 四大精霊・イフリート
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あのトカゲはリザードマン

 金色の髪に金色の剣が括られているネックレスをつけた女性、リーゼロッテ・ラビティリスは一見すると人間なのではないかと思ってしまうが、一点だけ人間と違う箇所がある。

 それは人間には見られない長く尖った耳だ。種族は一体何なのだろうと思いアルカにこっそりと聞いてみる。


「あの女性の種族は何かな?」

「あの方はエルフですよ」

「エルフ?」

「はい。知識に富み、身体能力も高く、魔力も高く、戦うときは主に魔法弓を使用します」

「私よりもちょっと年上ぐらいなのに、もはや神様かってぐらいの能力を持ってるんだね」

「ちなみにエルフは長寿も特徴の一つで、見た目は若いですがリーゼロッテさんの年齢は花音の何十倍ですよ」

「えっ!?」


 あんなに美しい容姿で私の何十倍も生きてるの!?

 つまり、最低でも100歳は越えてるってことだよね。この世界にいると前世の常識なんて簡単に覆っちゃうな。


「ん、大きな声を出してどうした?」

「ううん、何でもないよ!」

「そうか」


 私は驚いていることをリーゼロッテに悟られないように振舞う。

 きっとエルフが若々しい見た目に反して何百年も生きていることなど、この世界からしたら一般常識のはずだ。もし私が知らないということをアルカ以外の者に知られれば、私がこの世界の住人ではなかったことに気づかれてしまう恐れがあり、転生したことが露呈してしまう。

 そうなったら転生の手法を求めてアルカに魔の手が伸びることは想像に難くない。


 馬車に乗ってから4日が経った。予定通り進めばアステール火山まであと3日ほどだろうか。

 私は外の空気を吸うために、荷台中身を見られないように備え付けられあるカーテンを開こうとした瞬間、馬車自体が大きく揺れてから停止した後に、おじいさんのけたたましい声が鳴り響いた。


「な、なんじゃお前たちは!?」


 あのおっとりとしたおじいさんが声を大にして叫ぶなんてただ事じゃない、そう感じたのは私だけではなくこの場にいる全員がそう感じた。

 私たちは急いで荷台から降り馬車の先頭にいるおじいさんの元へ向かうと、20体ほどはいるだろうか、トカゲの形をした魔物が仁王立ちして私たちの進行を阻んでいた。


この世界ではトカゲですら二足歩行なんだなと、場違いなことを考えていると、私とおじいさん以外の3人はすぐに戦闘態勢に入る。


「花音も戦闘の準備をしてください」

「え、戦うの?もしかしたら事情があって通せんぼしてるかもしれないよ?」

「カノンの言う通り事情はあるでしょうね、でも...」

「どんな事情だろうと私たちには関係ない。リザードマンが私たちの行手を阻むのなら、ただ倒す、それだけだ」


 リーゼロッテは右手でネックレスに括られている金色の小さな剣に触れると、瞬間にただの小物だと思われていた剣に眩い光が発せられる。

「顕現せよ、"ハバキリ"!」


 そう叫ぶと、ハバキリと呼ばれる剣は瞬きもしないうちに100 cmから110 cmほどの大きさに形を変える。

 金色の刀身は太陽の光に照らされ一層の輝きを放ち、柄は刀身とは逆ですべての光を飲み込むような漆黒の色を帯びている。

 ハバキリからはまるで手に蓄えられた静電気が金属に接触したときのようなパチッ、パチッという音が絶え間なく聞こえてくる。リーゼロッテは雷属性の使い手なのだろうということが容易に推測することができた。


「これだけの数を相手にそんな強気でいられるのも今のうち...!」


 先頭に立っていたリザードマンが言い終えるよりも早く、リーゼロッテはハバキリの一閃でその首を斬る。それは本当に一瞬で、一体いつ動いてリザードマンの首を切ったのか、私は目で追うことができなった。


 リザードマンの首が地に落ちてからようやく切断面から血が溢れだし、首から下の胴体はマリオネットの糸が切れたかのようにひざ元から崩れ落ちた。


「必ずしも数の多さが戦闘で有利になるとは限らないことを、今ここで証明してあげよう」


 え、リーゼロッテさん強すぎじゃないですか。

 私たちここにいる意味あるのかなと目配せでシルフに伝えようとしたが、無意味に終わる。


「お、おい!これってまずいんじゃない...か...」

「どうした!早く逃げる...ぞ...」


 先頭から2番目の列に立っていた2体のリザードマンが後ろを振り向けば、後列はまるで嵐が通り過ぎたような跡しか残っておらず、仲間の姿はどこにもなかった。


「貴方たちのお仲間は『エアブラスト』で片づけましたよ?」


 リーゼロッテの剣技に私が目を奪われている間にシルフは詠唱を済ませ、私が目配せをするために後ろにいたシルフの方を振り向いた瞬間に、シルフは『エアブラスト』を使ったのだ。

 シルフは笑顔そう言っていたけど、私とアルカに話しているときのような優しい感情は一切感じられなかった。その声は、相手の呼吸を一瞬で凍らせるような冷たい声だった。


 2体のリザードマンたちは一瞬で自分たち以外の仲間が倒されたことに頭がついていっていないのか、ただ茫然とその場に立ち尽くしていた。彼らにはもう戦闘の意思などかけらも残っていないように思える。

 しかし、リーゼロッテは容赦なく2体のリザードマンの首をハバキリで斬り落とした後に、血を薙ぎ払うため空を斬り、元のサイズに戻す。


 シルフは私に褒めて褒めてと抱きついてきて、いつもの調子に戻っていた。

 だけど、私だけはいつもの調子には戻れなかった。

 ただ立ち尽くして眺めることしかできなかった私は、みんなの役に立てるのかな。

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