エア
ガン...何だっけ、申し訳ないけど暗黒騎士って呼ぶね。
暗黒騎士は大きな剣を軽々と振るってくるので、私は避けるので精いっぱいだった。
例のごとく身体能力はアルカに強化してもらっている。
「小娘!避けてるだけでは意味がないぞ!」
「分かってるよ!」
このセリフ、前にも聞いたな。
でもしょうがないじゃん!暗黒騎士の剣技が早すぎて、正直少しでも攻撃にシフトしようとしたら多分隙ができて斬られちゃう。
どうしたものかな。
「ていうか、シルフも手伝ってほしいんだけど!」
「手伝いたいのは山々なのですが、申し訳ありません戦えないです!」
「理由を聞いてもいいかな!」
私は避けながらシルフと会話を続ける。
我ながら器用にやってると思う。
「それは...私は広範囲の魔法しか扱えなくて、もし魔法を使ってしまえば妖精たちが大切に育ててきた木々や花々を壊してしまうからです」
そういう事情だったのか。だからスライムを見ていた時も、倒したかったけど広範囲の魔法しか使えないから睨みつけるしかなかったんだね。
だったら、しょうがない。私が何とかしなくちゃだね。
暗黒騎士に隙ができたら、シルフから受け取った魔法を早速使ってみよう。
もしかしたらこの状況を打破できるかもしれない。
「ふんっ!」
そんなことを考えていたら暗黒騎士が私の可愛いお顔にめがけて蹴りを入れようとしてきた。
騎士だから剣技しか使わないと思って油断してた!
「花音!」
アルカの声とともに身体能力強化魔法が強まったけど、何となくこの蹴りをまともに受けたら怪我じゃ済まない気がする。何か対策は...。
「魔法で身体強化できるなら...」
私は咄嗟に暗黒騎士の蹴りを腕で防御する。
私の腕と暗黒騎士の足が接触する瞬間、凄まじい音と衝撃波が起きた。
「貴様、魔力操作に長けていたのか...!」
「たまたま上手くいっただけだよ」
本当にたまたまだった。アルカが魔法で身体強化できるなら、自分の魔力を防御に割り当てることもできるんじゃないかと考えた。
結果的に上手くいってホッとした。
暗黒騎士は私のことを警戒したのか、後方に下がる。
この隙を待ってました!
「『エア』!」
私は暗黒騎士に向けてシルフから受け取った魔法、『エア』を使った。
手から放たれた風は、これまた初級魔法とは言い難いほどの威力で、もはや暴風だった。
暴風は暗黒騎士を飲み込み、遠くまで吹き飛んでいった。
「やったかな...」
「いえ、多分まだ倒せてないかと」
シルフの言う通り遠くまで吹き飛んでいった暗黒騎士はほとんど無傷でここに戻ってきた。
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次回は2月6日 19時00分に投稿します。