合格ってどういうことなの!?
「あれ、ここは...」
「目が覚めましたか?」
目が覚めてから声をかけてくれたのはシルフだった。
私は今、シルフに膝枕してもらっている。
美女の...膝枕...。
「まだ私、目が覚めてないからもう少しだけ膝枕を堪能させて...」
私がもう一度夢の世界に入ろうとしたら、私の相棒が目の前にやってきた。
「何言ってるんですか、目が覚めたならさっさと起きてください」
「あ、アルカ」
私は膝枕を名残惜しんだけど、アルカに起きろと言われたのでしぶしぶ起き上がった。
アルカの方を見れば呆れた顔をしている。
「いつもそんな顔してて疲れない?」
「誰のせいだと思ってるんですか」
「ふふっ、お二人とも仲がよろしいのですね」
そうだよ、私とアルカは大の仲良し!
そして人間と精霊の垣根を超えたラブストーリーが!
「始まりませんよ」
「アルカはエスパーなのかな!?」
まったく、人の心を読み取ることができるなんて怖すぎだよ。
気を付けよう。
「それはそうと、シルフ様。先ほど合格と仰っていましたがどういう意味ですか?」
今の今まで忘れてたけど、確かにそんなことを言ってた気がする。
だんだん思い出してきたけど、私とアルカがベリアルと戦ってるときシルフは顔色一つ変えてなかった気がする。まるで私たちを値踏みするような、そんな感じの目だったな。
「そのことについてですが、まずはお詫びをさせてください」
シルフは一度頭を下げてから、真剣な眼差しで私たちを見つめた。
「初めから、カノンがアルカディウス様の命を受けてここに来られた、ということを私は信じていました」
「そうなの!?」
「はい。ですが、命を受けてここに来たことと次期女王になることとはまた別のことです」
「それで私たちのことを試したのですね」
「ええ。ベリアルに勝つ負けるではなく、何物にも恐れず立ち向かう勇気があるかどうかを試させていただきました」
そうだったんだ。
勝敗ではなく、私たちの意思の強さを試していたんだね。
「そして見事、貴方たちは試練に合格しました。ただ私の創り出した幻影を倒してしまったことは予想外でしたが」
「あれはやはり本物ではなかったのですね」
「ええ。本物ほどではないにしろ、普通の人間では倒せないように創り上げたのですが。カノン、貴女は一体何者ですか?」
急に何者って言われてもな、人間ですとしか答えられないよ。
取り敢えずボケてみるかな、っと思ったけどやめた。
アルカの方をちらっと見たら鋭い目つきで私を牽制してきたからね。
「私はアルカディウス様の加護を受けたただの人間だよ」
「アルカディウス様の加護を受けた時点でただの人間ではないと思いますが、まあ良いでしょう。カノン、貴女に風の加護を与えますのでこちらへ来てください」
私はシルフの元へ近づくと、シルフは私の頭に手を乗せた。
そして何やら聞き取れない言葉をつらつらと唱えてから、最後に私でも聞き取れる言葉を聞くことができた。
「風の精霊、シルフの名のもとに汝に風の加護を与える」
するとシルフの手のひらから力が流れてくるのを感じた。
頭から足元にかけて何か暖かいものが流れるのを感じ、私の足元からふわっと風が舞った。これで加護を受けられたのかな。
私はシルフと目を合わせると、シルフはそれに気づいて私の頭を優しく撫でてくれた。
「それでは堅苦しい儀式は終わりです!」
シルフがそう叫んだと思えば、思いっきりハグされた。
え、今どういう状況なのこれ!
「はぁ~、こんなに可愛い子を試すなんて本当に辛かったです!痛い思いをさせてごめんなさい!」
「あの、シルフ!?」
「膝枕でも何でもしてあげますから私を嫌いにならないでください!」
それからしばらく、私はシルフにハグされていた。
私は至福の時間だったのでこのままでもいいかなって思ってたんだけど、アルカの目線が辛かったのでしぶしぶ離れました。
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次回は2月3日 19時00分に投稿します。