証明
素敵な笑顔で断られても私は引き下がるわけにはいかない。
だって、このままじゃアルカの望みが叶わなくなっちゃう。
「シルフ様お願いします、この者に加護を与えたくださいませんか?」
アルカもシルフに頼み込む。アルカがシルフを様付けするのも自身が元・精霊女王だということを隠すためだろう。
「なぜ私が人間に加護を与えなくてはならないのですか?」
「それは、精霊の皆様から加護を頂いて花音が精霊の王女として認めてもらうのに必要だからです」
「私たちが人間を王女として認める、ですか」
シルフが考えるように顎に手を当ててから、何かを考え付いたようで再び私たちの方を向いた。
「私たちが人間を王女として認める理由がありません。そもそも精霊界を人間が統治すること自体がおかしいです」
「そうだそうだ!人間を認めるなんて無理だね!」
「私も認められないな。私たち、人間より魔力あるし」
シルフの声に妖精たちも呼応してきた。
これってかなり良くない状況なんじゃないかな。
私がそう思っていると、シルフは妖精たちに静かにしてくれますかと言ってからさらに続けた。
「ただし、本当に私たちに認めてほしいというのであれば証明してください」
「証明?」
「もう間もなく魔王軍の四天王が一人、ベリアルがこちらに来ます。ベリアルに見事勝てれば加護を与えましょう」
「ベリアルがここに来るんですか!?」
アルカが驚いた顔をしている。
ベリアルって何者なんだろう、四天王ってことはかなり強いのかな。
そもそもどうやってベリアルがここに来るって知ったんだろう。
「ええ、妖精の連絡網でベリアルが間もなくここに来ることを聞きました」
連絡網なんてあるんだ、便利だな。
「しかし、花音がベリアルに勝つなんてどうやっても無理ですよ」
「そんなにベリアルって強いの?」
私がアルカに聞くと、アルカは頭をぺしぺし叩いてきた。
「強いに決まってます、勇者たちですら未だに討伐できていない魔物なんですよ!それを初級魔法しか使えない花音が勝つなんて考えられません」
そうだった、私初級魔法しか使えないんだ。
勇者たちですら倒せないぐらい強いのか、私が勝てる見込み何てない気がする。
「どうしますか、このまま帰りますか?それとも私に力を証明しますか?」
「花音、どうしましょう」
アルカがおろおろしている、きっとベリアルが来ることが予想外のことだったんだろうな。
それはそうだよね、加護は欲しい。けど、条件が厳しすぎるもん。
だけどここで帰って他の精霊に加護を求めたとしても、多分今と同じ様に選択を迫られる気がする。
だとしたら私のとるべき行動は一つしかない。
「分かった、証明するよ。ベリアルを倒してシルフに認めてもらう」
私が決心を口にすると、シルフはほんの一瞬ではあったけど少しだけ目を見開き頬を赤らめたが、すぐに平然とした表情に戻った。
「...逃げないのですか?」
「逃げたところで何も変わらないし、それに私には頼れる味方がいるからね」
「花音...」
私はアルカの頭を撫でながらそう答えた。
あと気のせいかもしれないけど今の状況は何か違和感を感じるんだよね。
それを確かめる為にも、ベリアルを倒さないと!
「アルカ、私頑張るから全力でサポートお願いね!」
「はい、任せてください」
そうして、シルフの言う通りすぐに空からベリアルが降りたった。