欠食児童がいっぱい
何故だか、途方に暮れる三人娘。
そんな彼女たちを前にして、俺も、困ってしまった。
「どうしたんだい? お腹、空いているよね?」
「えっと...」
「あの...」
「その、実は...」
三人の子供たちが、お互いに補完し合いながら交互に、たどたどしく話してくれる。
その説明によると。
彼女たちと同じ境遇で、食べることにも不自由している子供たちが他にも何人かいる、という事だった。
お腹は空いていて食事はしたいけど、その子達のことを考えると躊躇してしまう、といった事情があるようだ。
「そうか。じゃあ、他の子供たちには、この後で買い物をして、食料をお土産として用意しよう」
「ええっ?」
「よかったぁ...」
「すいません」
「だから。今は、取り敢えず、食事にしないかい?」
「「「はい!」」」
「その後で、君たちの事情も聞かせて貰おうかな」
「「「...」」」
* * * * *
店内に食欲をそそる良い匂いが漂う、庶民向けの食事処。
その隅にある四人掛けのテーブルで、三人娘が、猛烈な勢いで食事をしていた。
特に、猫耳少女のセリシアは、大食い巨漢もビックリのハイペースで、大量消費に励んでいた。
それに負けじと、小柄な激ヤセ少年に見える少女のレベッカが、偏食しながらも、大量に空の皿を積み上げていく。
そんな二人には及ばないものの、お嬢様っぽくて大人しそうに見えるフィオナも、お上品に見せながら相当なハイペースで食事をしている。
うん。実に清々しい、ね。
どんどん食べて、大きくなれよ! という心境になる。
けど、お代は、手持ちの現金で、足りるだろうか...。
と。
フィオナ、レベッカ、セリシアの順で、匙を置いて手を合わせた後、心もち姿勢を正していく。
育ち盛りの欠食児童の見本のような食事風景を見せてくれた三人娘も、満腹になったようだ。
よかった、良かった。
俺は、彼女たちの食後のドリンクと自分の分の御代わりを注文するために、店の給仕を呼ぶ。
「すいませーん!」
「はーい。何でしょうか?」
「俺の紅茶の御代わりと、彼女たちに果汁の冷たいジュースを」
「はい。畏まりました」
暫くすると、全員分の飲み物が届き、各人に配られた。
三人とも、満足そうに、寛いでいる。
「ふぃ~。お腹いっぱい、です」
「ぷは~。久しぶりに、お腹いっぱいだぁ」
「ごちそうさまでした」
「どう致しまして。満足して貰えたのなら、良かったよ」
「では。君たちの事情について、聞かせて貰おうかな」
「「「...はい」」」
「まあ、そんなに困った顔をしなくても良いよ」
「はあ」
「別に、問い詰めようという訳ではないから」
「そ、そうなんですか?」
「ああ。見ての通り、俺は冒険者な訳なんだが、少し気になってね」
「はあ」
「君たちは、元は、冒険者のアシスタントだろ?」
「「「...」」」
「違ったかい?」
「えぇっと」
「そのぉ」
「あ、あの、ですね...」
三人の少女たちは、困ったように、お互いに顔を見合わせた。
まあ、確かに。
ここでペラペラと自分の事情や経歴を話してしまうようでは、危なっかし過ぎる、よな。
彼女たちの現状を見れば、彼女たちに過失は無いのに酷い目にあっている、といった予測が成り立つ。
警戒は必要、だと思う。
ので、俺の方から、まずは誠意を見せるべき、だろう。
食事はご馳走したから、次は、お土産の食料調達、だな。
あ。
まだ、この店の支払いが済んでいないから、まずは、ここの代金について安心させる必要あり、だな。
「取り敢えず、店を出ようか」
「「「...」」」
「すいませーん。支払いをお願いします」
「ありがとうございました。彼方で、お願いします」
「分かりました。それじゃあ、みんな、行こうか」
「「「ごちそうさまでした!」」」
「ははは、どう致しまして。さて、お土産の食料は、どこで確保するのが良いかな...」