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路頭に迷う三人娘

「ちょっと、良いかな? 君たち」

 俺が、とぼとぼと此方(こちら)に向かって歩いてくる三人娘に、声を掛ける、と。


 ビクビクビクッ。


 と、露骨に怖がられてしまった。


「へ?」

「「「...」」」


 なぜ、そんなに怖がられるのだろうか?

 俺の容姿は、それほど警戒されるような(いか)ついタイプでもないし、怪しげな優男でもない。と思うのだが...。


「えっと」

「「「ご、ごめんなさい!」」」


 三人は、声を揃えて謝ると、(きびす)を返し、脱兎のごとく遁走(とんそう)した。

 な、なぜに?!

 と驚く一方で、身体(からだ)の方は反射的に、彼女たちを追いかけてしまう。


「きゃあ~」

「ひえ~」

「ごめんなさぁ~い」


 当然ながら、俺は三人を、即座に確保してしまった。

 非力な子供と、一応いちおうは現役の冒険者である俺とでは、(まった)く勝負にならない。

 しかも、一人は足が少し不自由な子なのに、残りの二人が見捨てることなく三人で足並みを揃えていたのだから、尚更(なおさら)だ。

 三人まとめて、一網打尽、だった。

 俺は、子供たちの首根っこを掴んで、子猫のようにぶら()げる。

 右手に二人、左手に一人。

 ははははは。なんだか、可愛いな。


「あ~れぇ~」

「ひえ~」

「ぐ、ぐるしいです...」


 猫耳さんと少年っぽい()の二人は余裕があり楽しそうだが、足の不自由な子は苦し()だ。

 (あわ)てて、よくよく見ると見た目はお嬢様っぽい感じがする足を引き摺り加減だった女の子だけ、地面に降ろす。


「けほっ、けほっ。あ、ありがとうございます」

「いや。だ、大丈夫? ごめんね、つい首根っこを(つか)んでしまった」

「はい。もう、大丈夫です。失礼しました」

「わあ~い。私も、降ろして下さぁ~い」

「ひえ~」

「はい、はい。もう逃げないよな? ついつい、捕まえてしまったけど...」


 残りの二人も、地面に降ろして、三人と向き合う。


「さて、少し、お話をしようか」

「「「...はい」」」


 ぐうぅ~。


 猫耳さんのお腹が鳴った。

 猫耳の女の子は、バツの悪そうな顔をして、視線を()らす。

 俺は、思わず、笑ってしまった。


「ははははは。何処か、店に入って、何か食べながら、話をしようか」

「「...」」

「...えっと、良いのですか?」

「ん? 何か問題でもあるのかい?」

「いえ。あの、私たち、こんな身なりですけど、大丈夫でしょうか?」

「ああ。服装はさておき、汚れているのは嫌がられるかな...」


 俺は、心もち、姿勢を正す。

 呼吸を整え、軽く集中。

 彼女たちの周囲に、洗濯機の水流をイメージ。術名を、ぼそりと唱える。


「ヴァッシェン」


 ひと呼吸おいて、少女たち三人が、透明な空洞のある水球に閉じ込められた。

 続いて、その水球の水壁が縮まり水流となって渦を巻き、彼女たちを揉み洗いする。


「えっ?」

「ひ、ひえ~」

「がぼがぼば...」


 彼女たちの汚れが(ひど)かったのか、通常は一瞬で終わる筈の洗浄が、数秒ほど続いた。

 水が消えると。三人娘は、その場にへたり込んだのだった。


 * * * * *


 庶民向けの食事処。

 昼食には遅く、夕食には早い時間だったため、店内は比較的、空席が目立つ。

 だが、シフト勤務などで遅めの食事をとっている人達がそれなりに居て、店内には食欲をそそる良い匂いが(ただよ)っている。

 そんな店内の、(すみ)っこ。四人掛けのテーブルに、俺と三人娘は、向かい合って座っていた。


「ここの勘定は俺が持つから、好きな物を注文して良いよ」

「「「...」」」


 少女たちは、もぞもぞと、落ち着きなくお互いに顔を見合わせると、途方に暮れる表情となった。


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