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三姉妹と三人娘

 三人娘による新規事業「(拡大解釈)こども園」の実務スタッフとして、ちょっとした高級宿で人気の食事処でもある「繁盛亭」の看板娘的なお子様である三姉妹が、参画することになった。

 これまで繁盛亭で預かっていたお世話が必要だが親が留守になるお子様たちは、もれなく、三人娘こども園へと誘導される。

 それと同時に、繁盛亭の女将のママさんネットワークで、三人娘こども園の趣旨と概要と共にその開設が宣伝された。

 施設の名前は「三人娘こども園」として三人娘を前面に出して、施設の運営には「繁盛亭」と三姉妹が前面に立って対外的な顔になる。

 適材適所の、役割分担。と、繁盛亭の女将による、万全のバックアップ。

 お子様によるお子様のためのお子様の施設、の出来上がり、だった。


 そして。

 今日、俺は、そんな、正式名称が「三人娘こども園」に決まった施設の開設予定地に、三姉妹とその保護者であるラナさんを連れて、やって来た。

 元はレベッカの雇用主であった冒険者の持ち家だった建物と庭(?)からの改築と改造と追加建設は、順調に進んでいる。

 運動場はほぼ完成、教室と保育室を備えた校舎もほぼ完成、といった状況だ。

 ただ、三人娘と五人のお子様たちの住居も兼ねる夜間預かりと併設寮になる家屋の方は、まだ、改装を継続中で使用できる状態になっていない。

 が、拡大解釈こども園の部分開業であれば、特に支障はない。

 という事で。

 今日は、三人娘と三姉妹の初顔合わせと、三姉妹とラナさんによる施設の下見と、関係者が揃っての初めての開業に向けた打ち合せを、行うことになっていた。


「あら、まあ。立派な設備があるのね」

「...」

「わお。楽しそう」

「わたし、あれ、遊びたい」


 三人娘こども園の開設予定地に到着して、門を開けて敷地内に入った途端。幸先の良い反応を得られて、俺はそっと胸を撫で下ろす。

 お子様たちの目をクギ付けにしたのは、運動場の周りを囲むように設置されている遊具、だった。

 まだ、一部しか完成していないが、ちょっとした小山にその頂上へと昇る石段と頂上から(ふもと)への石製のすべり台、木製のジャングルジム、大きな木の枝にぶら下がっているブランコ、などがある。

 魔法が無いと加工が難しい部分は少し俺も手伝ったが、基本的には、三人娘と五人の子供たちによる手造り、だ。

 うん。よく頑張っている、と思う。

 校舎の中も、色々と工夫していたようだが、俺も全ては知らない。ので、今日を楽しみにしていたのだ。


「さあ、まずは、顔合わせと打ち合せ、からだね。校舎の方に、移動しようか」

「「はい」」

「...」

「うん、うん。楽しみね」


 * * * * *


 三人娘こども園の校舎、その一階、保育室というかお遊戯室のような子守りのための部屋に、三人娘と五人のお子様たちと俺と、三姉妹とラナさんが、集合した。

 子供用のかなり低めの長テーブルと小さな椅子に、三人娘と三姉妹が向かい合って座る。

 それぞれの席の(そば)の床に、俺とラナさんが座る。

 そして、三人娘の後方にあるクッションが敷き詰められたお子様用運動スペースに、五人のお子様たちがそれぞれ好きな場所に座って、静かにテーブル席の方を見つめていた。

 関係者が、一堂に揃った。という事で、まずは挨拶、となる。


「ここに集まった身寄りのない子供たち八人の代表を務めている、フィオナです。九歳です」

「セリシア、だよ。九歳でぇ~す」

「レベッカ、九歳」

「後ろにいる子供たちは、左から、ビクトリア、四歳。フィリーネ、五歳。パトリシア、六歳。フレデリカ、六歳。ジェシカ、六歳、です」


「長女の、リナです。十一歳です」

「次女の、ルナ。九歳」

「レナ、八歳です」


「という事で、みんな、仲良くしてくれ」

「は~い、皆さん、よろしくね」

「「よろしくお願いします」」

「あら、フィオナちゃんは良い子ね。リナも、流石(さすが)お姉ちゃんだわ」

「ありがとうございます」

「当然」

「ははははは。まあ、頼もしいのは、良い事だね」

「当然ですわ」

「ははははは。で、打ち合せのメンバーは、三人娘と三姉妹の六人に、俺とラナさんが加われば良いのかな?」

「はい。私たちは、三人で良いです」

「えっと...。レナ、あっちで遊ぶ?」

「うん」

「こちらは、私とルナの二人でお願いします」

「了解。じゃあ、レナちゃんは、あっちでみんなと一緒に、遊具とか設備とかの確認を、お願いできるかな?」

「はい」

「うん。良い返事だね。じゃあ、あっちに加わってね」


 少し人見知りしている感じもあった三女のレナちゃんが、五人のお子様たちと合流して、仲良く遊具のお試しを始めるのを見届けてから、三人娘と三姉妹の姉二人に視線を戻す。


「では、五人で、明日からの対応について、打ち合せをしようか」

「「はい」」


 フィオナとリナちゃんの二人が、...。

 ん? 片方だけチャン付けは、変だな。けど、ラナさんの手前、三姉妹の方を呼び捨てにはし(づら)いので、これからは、全員をチャン付けにすべき、かな。

 という事で。

 フィオナちゃんとリナちゃんの二人が、気合の入った返事を返してくれたので、まずは、明日からの子守り受け入れについて、具体的な手順と役割分担を決めるべく、協議の開始、と相成った。

 ラナさんのフォローに期待、だが。事前に全く何も決めていなかったので、不安もてんこ盛り。

 けど、まあ、何とかなるだろう。たぶん。


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