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本編九 接点





本編 九 『接点』









村に到着したのは正午を大きく回った頃だった。


いつ村の中へ入ったのかはわからない。


ただ、やたらと濃い霧のようなモノを抜けると空気の色が少し違って見え、

「ああ……着いたのか」と感覚で感じた。


駅から村へ向かうには、少しの躊躇と思い切りが交錯する思いであった。


途中の駅で合った駅員は憐れみ村の名前を聞いた後、意味ありげに笑い、電車を一本さばいてから急に真顔でこう言った。


「興味本位で関わると後で酷く後悔すんぞ」






駅員はバスの運転手とは言い方が異なった。

いや、異なっていたのは言い方ではなく、主観であるか客観であるかの違いか……


バスの運転手は怯えているかの様な口振りであった。

事実長居はしたくないかの様に走り去って行ったのだ。


駅員は……


やはり村の噂は知っているようだったが、何と言うか……“シッテイル”感じがしたのだ。


そう、言うなれば“煙の出どころ”をシッテイル。そんな感じだ。





駅員は俺にこう聞いた。


「何故またその村へ行きなさるのだろうのう……」


独り言のようでもあり、会話の穴埋めのようでもあり、さり気なく本質を聞いているようでもあり……


「実は親戚が住んでいましてね、いや、初めて行くもので道がわからなくなってしまって……」


こんな時には体のいい嘘をつくに限るのだ。

取材等でぺらぺらと本当の事を話さない鉄則は、石上部長が俺に教えた常道であった。


「親戚?ほほほ……親戚がいなさるんか。ほほ」


彼は俺の嘘を見抜いたかのように鼻で笑い、

「それなら……」と村までの道を俺に教えた。条件付きで……


これがまた意味ありげなのだ。






「村の人間にはあまり詰め寄ってはいかんよ。親戚さんじゃろうが同じでな。それから長居はいかんよ。親戚でもなあ。」


何故か……とは聞き返さなかった。

訳があるのなら、その訳を知りたいが為に行くのだ。


どうせ勿体ぶるのが得意な土地柄だ。

聞いた所でまた、

「ほほほ」と意味深に頬を振るわせるに決まっている。


今までの流れを自分なりにまとめると、要するに

「早く帰れ」と皆が言うのだと解釈した。


最後に駅員は一番の笑顔でこう言った。


「凍結に気がつかんで軽い事故でも起こしときゃあ、こんなトコまで来んで良かったになあ……ほほほ」


その言葉の意味がわかるのに、大した時間は要さなかった。

あくまでも“理解”ではなく“意味”がわかるのに……




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