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真実

 目が覚めた時には白い天井が目に入った。

 そして続く消毒液やらの匂い――ここで私は自分の身に起こったことを思い出した。

 失敗した。彼との完全に純粋な出会いを果たす途中で。

 とても惜しかった。あの妨害さえなければ、と暴走車を恨もうとしたがもうどうにもならない。

 ただひとつ幸運なのは即死せずに生きていたことだ。そっちのほうが面倒でなくていい。 なぜならすぐにやり直すことができるのだから。

 彼を探しに行こうと、上体を起こすとすぐに見つけた。ベッド近くの椅子の上でうとうと、としていたからだ。

 彼は私が目覚めたことに驚いたのか、目を白黒していたがすぐに、

「君、目が覚めて。どこも身体に異変はない?」

「ええ、大丈夫。それより私の持っていた荷物、あるかしら? ちょっと欲しいモノがあるの」

 彼は近くの机から私の持っていたハンドバッグを持ってきた。中を開けて準備していたものがあることを確認する。

「じゃあ、また次にね」

 私は彼の心臓めがけてナイフを突き刺した。柄まで深々と奥に。

 そしてそれを引き抜き、念の為に喉を横薙ぎ、突き刺し。

 その一連の動作が終わると、彼の唇が動いた。な、ん、でと動いたように見える。そこで耐え切れなくなったのか、彼はその場に倒れる。真っ白な病室を赤色が染め始める。

 私はベッドから降りると彼の近くに立った。素足に血がつくが、気にせずに彼の喉元からナイフを引き抜いた。

 彼の死体を見ても特別湧き上がる感情はなかった。それを悲しいとか可哀想とかの感情はどこかで落としてしまったようだ。

 神としての私――あの始まりの出会いの最後――つまり戦いに敗れたとき、私はあることを願った。こんな終わり方はいやだ、まだ彼と一緒にいたい、と。皮肉なことにそれをどこかの神が聞き入れたのだろうか。次に目覚めた時、私は人間へと生まれ変わっていた。そして彼も。しかし記憶は全て忘れて。

 覚えている私は初めからやり直すことに決めた。つまり、彼との出会いを全てリセットし、彼と出会うところから。

 しかし、現実はそううまくいかない。どちらかに負い目を感じる出会いであったり、出会った瞬間運命のいたずらで引き離された。そうなった時にはまた、別の世界で初めから。不思議と何度も彼と生まれ変わることができている。もはやこれは、私たちは必ず出会うことが運命だと私は感じている。

 私たちは姿を変え、時代を変え、何度も巡り合っている。しかし、未だ完全な出会いは見つからない。私たちは、あの時にように純粋で、それでいて誰にも引き離されない完全な出会いでなければだめなのだ。

 さあ、やりなおそう。ここで私も死んで二人でまた次の時代、次の姿で。

 彼を刺したナイフをそのまま私の喉元へと突き刺した。

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