あかりゅう
にゃあもはただの猫である。
間違っても龍なんて大きなものはかれないし、ネズミかトカゲを倒すのだって必死だ。
五丁目のボス猫とは戦えるかもしれないけれど
火を吹く龍なんてとても適わない。
「…という訳で鱗をくれないだろうか」
そしてにゃあもはしらなかった。
ただの猫は人間の言葉を話さないし、ドラゴンとかいうものだって確かご主人がやっつけていたけど
龍が人の言葉を話すなんて全く知らなかった。
「お主、馬鹿か」
ご主人は馬鹿じゃないやい!
と言いたくてもなんだか熱くてとてつもなく大きい龍が寝そべって暖かいお湯に浸かっているのをみても
ただの猫であるにゃあもには少し怖くて鳴けなかったのだ。
「たまに言われるが、そんなことはないと思う」
「…普通に話してるのがおかしい」
「そういえば赤龍殿は話せるんだな」
「今頃?!」
ご主人は普通に話しかけていたから
話せるのを知っていると思っていたけれど知らなかったらしい。
さすがご主人。
「あと龍の肉はあまり美味くないと聞いた」
「…この際目のまえでお前はまずい、と言われるのも初めての微妙な気持ちになるんじゃが、鱗はこの前生え変わったのでなやらんこともない」
ぐでーっと暖かいお湯に浸かる赤龍?さんは
顔だけでにゃあもの何倍もありそうだけど
優しい龍?だったらしい。
「ありがたい。なにか欲しいものはあるか?」
「ちょうど温泉がな少し手狭に感じてな、お主これを少しひろくできんか?」
何10倍、何百倍もにゃあもがそれこそ泳いでもたどり着けないお風呂は赤龍さんには狭いらしい。
「二日あればなんとか…」
「…お主、少しおかしいな」
ご主人が腕まくりして少し離れた所に穴をすごい勢いで掘り出してるのをにゃあもは見ていたら
赤龍さんがちょいちょいと爪をふって招かれたので恐る恐る近寄ったら頭に乗せられた。
むわっとした湯気がなんとなく体にベタつくけど、赤龍?さんは気持ち良さげに目を細めているから
にゃあももまったり伸びをした。
「おぬしはちんまいのぉ」
「にゃーお(にゃあもは大きくなったんだよ!)」
「そうかそうか。ふぉふぉふぉ」
笑う度に少し揺れるけどなんだか赤龍さんも楽しそうだからにゃあもはまったりいい気持ちで目を閉じた。