ご主人の
にゃあもはでかくなった。
にゃあもは賢い。
まだ俺が少しばかり調子に乗っていて、メルシアを少し羨んでいたあの頃。
小さくてにぃにぃなくにゃあもは、月が明るくったって気づかないほど小さくて弱々しかった。
にゃあもは弱っちくてなんだかとても寂しそうに見えて
森の中なんて場所にいても放って置けなくて思わず拾ってしまった。
汚れて灰色になっていた毛並みを濡れタオルでふいてやれば艶やかな黒い毛並みが美しくて
ああ、これはただの猫じゃないな、と思ったものだ。
メルシアがマリーと使い魔契約をしていたのを思い出して
餌には魚をあげたり、鶏肉をあげたりしていると聞けば狩りに行き、その度怪我をしては怒られて
子育てとはかくも難しいと感心したのを覚えている。
「買えばいいじゃない」
と言われてその手があったかと思ったものだ。
でもなんだか手ずから仕留めた方がいいような気がして、色々なところへ狩りに行った。
その頃には成り行きでドラゴンを狩ったり
困ってる農村を手助けしたり
いつの間にかギルドランクも上がっていたりであんなにがむしゃらな時は思うようにはいかなかったのに、守るというのもいいな、と気づいたら出世するとは不思議だ、と考えたのを覚えてる。
「メルシア!にゃあもが変な寝方をしている」
「…大丈夫よ」
猫は関節がどこにあるのか分からないような寝方をするんだなぁ、とひどく感心したり
マリーに鼻で笑われたり
にゃあもが大きくなったり小さくなったり怪我が治ってたりも
猫にしては普通なのかと思っていたらにゃあもが攫われそうになって
珍しい猫だと知ったりと中々慌ただしい日々を過ごした気がする。
メルシアがにゃあもとじゃれ合っているのを見てその表情に
メルシアと共にいたいと思ったのも記憶に残っている。
「なんでこんなにうねうね尻尾が動くんだ?」
「…ご機嫌なのよ」
小さくて暖かいにゃあも。
怒っても引っかかないにゃあも。
たまにマリーと会ってる時に耳の裏を掻くのも気になるが…
そのうち禿げるんじゃないだろうか…
「んにや!」
思わず耳をぺろっと見てみたら起こしてしまったらしいが
まだ禿げてはいないので大丈夫だろう。
よしよし、と寝かしつけるように撫でれば一睨みしてからまたゴソゴソと丸くなって寝ようとするにゃあもは可愛い。
ずっと一緒にいようなにゃあも。