閑話、調査員2
報告するために、この拠点を観察しておく必要があるな。
明日1日滞在しよう。
クラップによると名称はまだ未定で仮称(拠点1)というらしい。
円形の外壁を持ち壁に添って二階建ての建物がぐるりと一週作られている。88
この拠点の大きさは大体半径が100メートル位だろうか。
普通の村がすっぽり入る大きさだ。
城壁の内側に添って建物が並んでいる。
と、いうか一体化しているようだ。
建物は2階建てで一階は倉庫や馬宿、大部屋等で二階に個室がならんでいる。
建築中の為完成しているのはごく一部のみなので閑散としたものだ。
街道から見えた面は煉瓦か石積のようだったが、まだ1/4ほどで残りは木柵で応急的な囲いがあるだけだな。
完成までまだまだ時間がかかりそうだ。
私に与えられたのは2階の個室で、3畳ほどの部屋だ。
入り口からみて奥にベット、手前に簡易な机と椅子がおいてある。
中級クラスの宿屋と同じような感じだろうか?
窓が入り口のドアの横にしかないのが欠点と言えるかも知れないな。
「ドーベン殿ここにおられましたか。」
あちらこちらを見ているとクラップ殿に声をかけられた。
どうやら私を探していたようだ。
「探させて申し訳ありません、何かご用ですか?」
「いえね、食事の前に風呂でもと思いましてね、どうです?ご一緒いたしませんか?」
風呂?そんなものがあるのか?
普通貴族でもない限り一生入ったこともないものが大半だ。
風呂を沸かすのは大変な作業になる。
井戸から水を汲み、風呂桶いっぱいに水を張るのはかなりの重労働であり、さらに、それだけのお湯を沸かすのに大量の薪などの燃料が必要だ。
それなのに出入りの商人に好きに使わせる?普通はあり得ないことだ。
「風呂ですか?それは有り難いですね、しかし、そのような無理をしていただかなくても、恐縮いたします。」
「ネス様が何やら仕掛けをされたようで、さほど手間がかからないようですよ。」
「どのような仕掛けなのですか?」
「さて、聞いておりませんな。」
フム、隠しているような気配は無さそうだ。
本当に知らないのだろう、ネス殿に直接尋ねてみる必要ありだな。
そんなことを話していると風呂についたようだ。
風呂は、中心部の食堂の裏にあった。
入り口には、男用と女用に入り口が別れている。
「奴隷達も使うので、襲われないようにするためですよ。」
とのことだ。
男女の区別なく水浴びをしている風景もよく見るからな、奴隷相手だと箍の緩むものもいるかも知れない。
用心することに越したことはないな。
それよりも奴隷を風呂にいれることの方が驚きだが。
「身綺麗なものと汚れたもののどちらに食事を運んでもらいたいですか?」
納得だな。
風呂場に入って見るとかなり大きめのロッカーがある。
冒険者が鎧や武器を持ち込んでも大丈夫な様だ。
中に入るとかなり大きめの湯船があった。
普通なら貴族でもこんな湯船をもっているものはほとんどいないぞ。
本当にどうなっているのだろうか?
まあ、気にしても仕方がない、今は風呂を楽しもう。
「ドーベン殿少しお待ちを。」
風呂に入ろうとした私にクラップ殿待ったをかけてきた。
「まずは、こちらで体を洗うのがマナーですぞ。」
そうか、行きなり入ると湯が汚れるな、汚れを落としてから入るのは利にかなっている、しかし、冒険者達にそれが理解できるかな?
体を洗おうとするとクラップ殿が白いものを差し出した。
「石鹸ですよ、お使いください。」
石鹸か、西の国から多少流れては来ているが、まだまだ高級品だが何故クラップ殿はもっているのだろうか?
体を洗い終わって風呂につかる。
ふう、これはよいな体の疲れがとれるな。
これだけでもここに定住したくなる。
それにしても、拠点に風呂に石鹸か、まだまだ、色々出てくるのだろうな。
報告書を書くのが大変だな。
誰特のお風呂回でした。




