73買ったもの、買われたものⅢ
水浴びを終え、着替えをすました狐人達は、食堂で食事をとっている。
初めは、物凄い勢いで食おうとしたので、ゆっくりと食べるように命令しなくてはいけないほどだった。
それほどまともに食事を与えられていなかったようだ。
しかし、飢えているときに勢いよく食べては死に繋がることもある。
命令してでもゆっくりと食べさせないとな。
なぜか恨めしい目で見られているな。
さっき石鹸を渡したやつか?
多分、量が少ないとでもいいたげだ。
しばらくしたらもう少し食わせてやるから今はそれで我慢しておけ。
奴隷として心を折られたくせに回復の早いやつだ。
飯を食わせてやっているのに不満を持つとはな。
能力次第だが使えるやつかも知れん、覚えておこう。
「しかし、また、酔狂なことだな。」
店主が声をかけて来た。
「あんたほどではない。折角買った労働力を無駄にしたくないだけだ。」
「まあ、獣耳が元気な姿を見れればそれでよいがな。」
「本当に獣耳が好きなんだな。」
「おうよ!!獣耳の女の子は至宝だ、宿代として1人渡せと言いたい所だが、折角、一族の生き残りと共にいるんだから引き剥がすのも気が引ける。」
「まあ、しばらく世話になる。代金はこれで足りるか?」
そう言って金貨10枚を渡した。
30人の3日ほどの宿屋代としてはやや多いだろうが迷惑料コミと考えれば適当な金額だろう。
店主はしばらく考えてなにも言わず受け取った。
「2,3時間後にもう少し精のつくようなものを頼めるか?」
「そうだな?肉はまだ、早いだろうからシチューでも用意しておく。」
「それでいい、頼んだ。」
食べ終われば少し運動させるか?
奴隷商の所にいたときほとんど体を動かす事もできなかっただろうしな。
簡単な運動、ラジオ体操でもさせるか?
あれは、全身運動だしそこまで激しくないからちょうどよかろう。
後は、スキルなどを聞いて置かないとな。
いくつかの班分けする必要があるのだが、その点はどうするかな。
後、必要な物の買い出しをしないといけないが、その間、こいつらを放置するのもな。
クラップに頼んでムサカ君を貸してもらおうか。
馬車も用意しないといけないな。
ギルドから多目にもらって置いて助かった。
予算に余裕がある。
ギルドマスターは涙目だったが、自業自得だから問題はない。
side狐人
体を洗い、綺麗な服を身に纏って奴隷としての待遇の違いに戸惑っています。
本当に私達は奴隷として売られたのでしょうか?
………。
やはりさっきのは錯覚だったようです。
食事のため食堂に移動させられたのですが、出てきたのはオートミュールだけでした。
しかも一皿のみ、お代わりなし、ということです。
私達を買ったせいでおカネがなくなったのでしょうか?
だったら石鹸等高価なものを使わせないでその分をご飯に回して欲しかったです。
思わず、店主らしき人と話している主を睨んでしまった私は悪くないと思います。
「がっつくんじゃない!!ゆっくりとしっかり噛んで食べろ!」
近くの男の人が掻き込むように食べ始めたら怒鳴られていました。
バカでしょう、少ないご飯はゆっくりとしっかり噛んで食べればお腹が膨れやすいのです。
悲しい知恵ではありますが(泣)
食事の後、また、裏庭にいき主より同じ動きをするように言われました。
なんでしょうこの変な躍りは?
でも、ずっと動かなかった体がほぐれていくようです。
でも、体を動かすとお腹空くんです。
あの主は、ご飯を少ししかくれないし、嫌なやつです。
首輪がはまっているので悪口を聞かれたらどんな目にあわされるか分りませんので心の中だけで呟いておきます。
主はもう一度、同じ踊りをしたら呼ぶまで部屋で休んでいてよいと言って先に中に入って行きました。
………。
私は、悪い子です。
こんなにいい主に対して悪口を言ったり、睨んでしまった。
折角、私達の体調を考えて胃にやさしいものを、時間開けて少し精のつくものを与えられてくれるなんて、とっても素晴らしい主です。
ミルクの入ったシチューはパンと一緒に食べると最高です。
一食分としてはやや少ないですが、少し前にもご飯を頂きましたのでじ十分な量です。
私達はとてもよい方に買われたようです




