65、宿の朝
ん?
もう朝か。
食事を取って出掛けるとしようか?
さて、何人生き残っているかな?
そう考えながら階段を下りるとそこは死屍累々とした様子だった。
一体いつまでに飲んでいたんだか?あきれるな。
「ネスさんだったか?朝飯の用意ができている、どうする?」
店長が声をかけてきた。
あの時以外顔を合わせた記憶がないのによく俺を識別できるんだ?
「何故?って顔をしているな、答えは簡単な事だ、常連以外で此処に泊まって部屋から出てきた知らない顔は1人しかいない。よって、お前さんの名前はネスと言うことになる。」
「なるほど、間違えないな。」
「それとエルム達なら昼過ぎまで使い物にならねーぞ。」
「よくわかったな。」
「そりゃ、経験が違うからな、あんたこの町に来るのは初めてぽいしっな、普通案内するだろう。まあ、朝飯でも食ってろ、案内人が来るだろうからな。」
そう言ってスープと黒パンを渡してきた。
案内人?クラップはしばらく忙しいいだろう、若い連中もこき使われているだろう、アサーガ達の事は知らないだろうし、誰が来るんだか?
「あ、やっぱりだ!!」
飯を食っていると1人の少年が店に入るなり叫んだ。
「「「「「ぐおぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」」」
うん、二日酔いにそんな叫び声はきついな。
酔っぱらいにどもがのたうち回っている。
ん?あいつらは店員に絡んだら連中じゃないか?
なんで一緒にのたうち回ってやがる?
しかも《イエス獣耳、ノータッチ》とかかれたはちまきまで締めて?
まさか、ケモナー道に落ちたのか?
まあ、どうでもよいがあの少年は誰だろう?
「え~と、ネスさん!!いらっしゃいますか?!」
「「「「「どわぁぁぁぁぁ!!」」」」」
「おう!ここだ!」
「「「「「ぬおぉぉぉぉぉ!!」」」」」
自業自得だから酔っぱらいどもめ、酒は適量、酒を飲んでも飲まれるな。
しかし、そんなに叫んだら余計苦しくないのだろうか?
「あなたがネスさんですか?」
駆け寄って来た少年が俺に訪ねた。
「そうだが君は?」
「僕は、ムサカです。父であるクラップに今日1日ネスさんの案内をするように言われました。カエムさん達は絶対二日酔いで案内どころではないはずだからと、その通りでした。」
ムサカはあきれた様にそう言った。
しかし、クラップに子がいたとはな。
まあ、それなりの年だからこのぐらいの子がいても不思議ではない。
「それでは案内を頼むよ。ムサカ君。」
「はい、では、どこにいきますか?」
「まずはギルドかな?武器屋に道具屋もいきたいな、後は市場もか。」
「ギルドは後に回したら方がよいですよ。」
「何故だ?」
「早朝のこの時間は、ギルドはかなり混んでいるんですよ。朝一に依頼状が張り出されるからより良い仕事を得るために冒険者が詰めかけているから。」
世知辛いな。
冒険者に夢はないのだろうか?
仕事を得るために早起きする冒険者達、夢が崩れるようだ。
悲しいけどこれが現実なのよね。
「じゃあ、どこから回るのがよいかな?ムサカ君?」
「そうですね、武器屋はまだしまっているでしょう。基本的に御昼過ぎから空きますから。」
冒険者達が武器の整備を頼んだりするせいだな。
依頼から帰って来てから武器屋にいくと考えれば割と遅くまでやっているのだろう。
その分開店時間が遅いのだろう。
「市場は、昼前がベストでしょうか?他の村から運んで来たものが店先に並びますから。」
近隣から人が来るのか、野菜類はそれなりのものがありそうだな。
「となると今の時間空いてそうなのは、道具屋でしょうか?ギルドでもそれなりのものは置いてありますが、細かい道具や特殊なものはありませんから、冒険者達が買い求めに来るからです。」
「では、ムサカ君、道具屋から案内してくれるだろうか?」
「はい、任せてください‼」
うん、元気があっていいことだが、もう少しボリュームを下げてやったらどうだ?
回りの酔っ払いどもが死にそううなんだが?




