62、宿屋獣耳
「アサーガの件は了解した、処で何故、此処の宿屋を選んだのだ?なにか理由があるのか?」
「まずは料理を頼みましょう。そうすれば、店名の意味がよくわかりますから。」
クラップはそう言ってパンパンと手を叩いた。
「お呼びでしょうか?」
クラップが叩いた手の音に反応して一人のウェイトレスがやって来た。
服装は所謂メイド服だな。
頭に狐耳をのせている。
首元にはチョーカーを巻いている?
いや、細目の首輪か?
ということは、耳や尻尾も本物で彼女は獣人の奴隷なのだろう。
それにしては着ている服はそれなりのものであるようだし、奴隷特有の悲壮感が感じられないな?
生き生きと働いているような感じがする。
回りを見渡せば何人もの獣人が働いている。
様々な種族がいるようだが、悲壮感のあるものはいないな。
「此処の店長が獣耳の愛好家なんです。しかも眺めるだけで満足している変わり者です。あちらの壁を見てください。」
狐耳の獣人に注文を終えたクラップがそう言って壁を指差した。
【yes獣耳!!NOタッチ】
店員におさわりはダメ!!絶対!!
さわった奴は叩き出す!!
宿屋獣耳店長
なるほど、紳士(変態)だな。
しかし、いいのかね?この国でこんな事を言っていて?
「自分で買った奴隷であればどう扱おうと所有者の自由ですし、教会も強く言えないのですよ。さすがに町の中心ではまずいのでこんな外れにあるわけですが………。」
フム、性格的なものは兎も角としてだ、此処の店長は使えそうだな、獣人にさほど差別意識がない。
別のベクトルではまずい方向にいっている気もしないではないが………。
「お待たせいたしました。」
ん、先程の狐の獣人が料理を運んできた。
後ろにエールを持った猫の獣人が続いている。
クラップが頼んだ料理は肉の串焼きとシチューに黒パンだ。
さて、料理の味はどうだろうか?
まずは、串焼きから食べて見るか。
ん!うまいな。
味付けはハーブと塩のみではあるようだが、バランスがいいな。
猪系の肉のようだが柔らかく仕上げている。
シチューはクリームシチューのようだな。
この辺りでミルクが手にはいるのだろうか?
こってりとしていて黒パンをつけて食べるととても合うな。
飯がうまいだけにエールがぬるいのが残念だ。
まあ、エールやラガー等のビールは元々苦手だからそこまで気にすることでもおれ的には気にならないのだが。
香辛料を殆ど使わないで此処までの味に仕上げるとは此処の料理人は凄腕だな。
後で話だけでもしておきたいものだ。
取り敢えずは目の前の料理を片付けるとしようか。
せっかくうまいのだ、冷める前に食べないとな。
食事が終わり、一息着いたので今後の事をクラップに相談しよう。
「クラップ、今後の『やめてください‼』事だが………。」
なんだ?
「ゲヘヘヘ!いいじゃないか、酌ぐらいしろよ。」
「どうせ、獣人の奴隷を使っているのはそれようなんだろ?ヒック!」
「いやがるそぶりを見せて焦らす演技はもういいから、ウイッ!」
「此処はそんなんじゃありません‼離してください‼」
酔っぱらいが犬耳の店員にちょっかいをかけている。
格好から見て冒険者のようだな。
さて、どうしようか?
目立つのを避ける為に放置してもいいのだが、ああいった連中の声を聞いているのも鬱陶しいしな、助けてやれば此処の店長に恩を着せれるだろうしな。
チャター達にいって助けてさせよう。
見た感じさほど優秀な冒険者では無さそうだし、数も三人だ。
負ける要素はない。
「チャター、彼女を『その手を離せ!!』やって………。」
また台詞を被せやがっていった今度は誰なんだよ。




