57、到着
旅は順調に進み3日後、領都に着いた。
ちなみに通りすぎた村は《バソグス》というらしい。
草原の真ん中にある普通の農村で特に見るものはなかった。
人口は100を少し超える程度だったな。
エリア化してブレインイーターに食わせて配下にすることも考えたが、ここまでエリアを広げるのはまだまだ厳しいし、100を超える人間を一人も取り残さずに無力化するのは難しいからな。
その点、開拓村は色々有利な条件が揃っていてラッキーだった。
周囲にの森にモンスターを潜ませて置けたし、森の中だったので逃げ場もない、メインダンジョンにも近くにダンジョンエリア化もしやすかったのだが………。
どのみち持ってきた魔縄は森の出口から村までの1/4ほどしかなかったからな、《バソグス》の村をダンジョンエリアに取り込むのは無理だった。
さて、着いたはよいが城門で困ったことがあった。
身分書がないことだ。
当然ではあるな、ダンジョンマスターが身分書を持っているわけがない。
この世界は、地球でいうと中世ヨーロッパに近い政治形態だ。
貴族達が領民を支配管理している為、人の出入りにはかなり厳しいものがある。
特に農民の移動は制限が多くある。
都市にいつかれると大半がスラムにいくことになるからだ。
スラムの問題は都市にとってはかなり重大なことだ。
増えすぎると治安が悪くなり、また、計画以上の物資の消費に繋がる。
モンスターが闊歩している世界であるのでモンスタースタンピードがいつ起こるかわからない為、計画的に食糧の備蓄をしている。
しかし、こういった不特定多数は計画に支障をきたすのは勿論のこと、農民が農村を離れると生産能力が落ちる、それによる収入の減少を貴族達が嫌っていると言う理由もある。
アサーガとクラップが交渉してくれたのでなんとか領都に入ることができたが冒険者ギルドに登録するように言われた。
冒険者ギルドか。
所謂、セーフティーネットの1つだな。
不作等で食っていけなくなったものを救うものの1つだ。
他には娼婦や丁稚奉公等もある。
どれもきつい仕事に違いないが、口べらしとして殺されることや奴隷商に売られることに比べれば、まだ、ましな部類に入る。
取り敢えず人として扱われるからな。
あまり酷い扱いをすると、犯罪として扱われるし、勤め挙げれば独立できるだけの資金や技術を得ることができる。
奴隷には、そんな権利はない。
扱い方は、人それぞれではあるがあくまでも持ち主の所有物であり、殺してしまっても咎められる事はない。
解放されることも希で、怪我や病気、加齢等で働けなくなると処分されることもままある。
殺されなくても、着の身着のまま解放されることも多い。
その結果のたれしぬことも多い。
冒険者は、娼婦や丁稚奉公に比べて割りと自由に活動できるため農村等から一旗挙げようとするものが多い。
ある程度の実力をつけると正規の住民票が与えられるところも多くある。
モンスター等の外敵から町や商人の護衛、モンスター討伐や捕獲、薬草等の採取等、危険と隣あわせの仕事なので死傷率が高い。
村から出てきて冒険者になった者は特にそうだ。
コネもなく、十分な資金もなく、良い武器も持たず、防具も不十分、読み書きもできず、十分な知識もない。
そういった若者は、すでにあるパーティーに入れてもらえる可能性はほぼなく、同じような新人とくむので一年以上冒険者として生き残れる可能性は5パーセントあるかないかだ。
最初の一年を生き残ったものが本当の意味での冒険者になれるのだ。
それでも生活は厳しいのも現実で、引退するまでにその後の生活を準備できず、スラムに行ったり、借金返済のため奴隷として売られたりすることが多い。
戦争奴隷、不作の農村の次に多いのが冒険者の奴隷となっている。
一つまみの栄光と星の数のような敗者、ごくわずかな生存者。
それが冒険者というものなのだろう。




