閑話、マヨネーズ
一年ほど前に《ダッセ》の村のすぐそばにダンジョンが現れた。
すぐに潜りたかったのだけどその時は成人していなかったので家族に止められて行くことができなかった。
一年間、仲間たちと共にダンジョンに潜る為に特訓して、今日始めてダンジョンに潜った。
「おい、気を付けろよ。」
リーダーのジョーがみんなに声をかける。
弓使いの為、ダンジョンのような閉鎖空間では慎重になっている。
「心配すんなよ、リーダー、大丈夫だって。」
調子よく言うのが盾戦士のマオカだ。
大きなまな板のような木の盾を持っている。
料理が上手いのだが、盾をまな板代わりにするのはやめてほしい。
「そうだぜ、リーダー、ガンガンいこうぜ。」
気合いが入っているのは斧戦士のグーチーが気勢を上げる。
戦い方は豪快だが木工が得意で手先が器用だ。
「まあ、なんとかなる、なんとかなるよ。」
気楽なことを言うのはガッセだ。
スカウトとして優秀だ。
「まあ、まあ、みんな、リーダーの言う通りもう少し落ち着きなよ。」
そして、僕はブンタ、一応音楽神ジャニの神官をしている。
この5人でチーム《トウキン》を組んでダンジョンの下層を目指した。
と言っても、僕たちは駆け出しに過ぎないからまだ、1層目、2層目を探索しているのに過ぎないけどね。
1層と2層は洞窟型ダンジョンだ、出てくるモンスターは同一でスライムとスケルトン、ゾンビ、ケイプドック、ワンダーバットの5種類だ。
さほど強いモンスターではないので僕たちのような駆け出しでも十分対処できる。
ちなみに1層のボスはケイプドックが5体だった。
2層目のボスはまだ挑戦していないがケイプドックよりやや強いスケルトンが8体と言うことらしい。
ちょっと数が多いので勝ち目が薄すぎる。
それに3層以上はモンスターが集団で現れるらしい。
そうなると一回の戦闘でも苦戦するだろう。
挑戦するのはもう少し経験を積んでからだ。
それはみんなわかっているので先に進もうとは誰も言わない。
ダンジョンをモンスターを狩りながら進んでいると、先頭のガッセがハンドサインで止まるように合図を送って来た。
「どうかした?ガッセ?」
「リーダー、あれ!」
ガッセが指差した所には、いかにもと言うべき宝箱があった。
「おお、スゲー、早速開けようぜ。」
マオカが興味津々といった様子で開けようとする。
「ばか野郎、罠とかあったらどうする、俺が開けるから少し離れてくれ。」
ガッセがマオカを止めて、慎重に宝箱の様子を探る。
「よし、大丈夫のようだ、開けるぞ。」
こういうのは、やっぱりドキドキする。
何が出てくるのかな?
「これは!!」
え~何々、早く教えてよ!
ガッセの手にあったのは巻物が1つだけだった。
「ブンタ、読める?」
ガッセは、字が読めないので僕にわたして来る。
他のメンバーもせいぜい自分の名前と簡単な単語位しかわからない。
こういったものは、神殿で勉強した僕に回ってくるのは当然か。
え~と、何々?マヨネーズの作り方は?
「ねえ、マヨネーズって知ってる?」
「マヨネーズだと!!それは伝説の調味料だ、昔勇者が作ったと言われ、数々の美食家を唸らせたと言われている。今、作り方は失伝しているが。」
さすがマオカだ、料理の知識だけは1級品だ。
「ねえ、リーダー、これを作れれば儲かるんじゃないの?」
「それはいい。早速試して見る価値はありだ。」
リーダーがそう言うとみんなを見渡した。
みんな面白そうだと言う顔をしている。
「決まりだな、早速ダンジョンを出ることにしよう。」
家に帰った僕たちは、早速、材料集めに取りかかった。
必要なのは、酢、卵、塩、油、胡椒。
胡椒は無理だ、あんな高級なもの手に入るわけないので胡椒はなしで試してみる。
酢はワインビネガーを使う。
まず、卵の黄身とワインビネガーを混ぜ合わせてから、少しずつ油を入ながらひたすらかき混ぜる。
「ウオォォォ!!」
かき混ぜる役は体力自慢のグーチーだ。
その彼が汗だくになって買い交ぜている。
量産化できるかな?
「はぁはぁはぁ、こんなもんか?取り敢えず食って見ようぜ。」
角が立つまでかき混ぜていたグーチーがいった。
「そうだな、試して見ようぜ。」
できたマヨネーズを指につけて僕たちは一斉に口にいれた。
「「「「「」うまッ!!!」」」」
こうしてこの世界にマヨネーズが復活し瞬く間の王国全土に普及した。
しかし数年後、マヨネーズによる食中毒事件が多発したため、国王は、マヨネーズを作ることを禁じた。
食中毒の被害者に王妃が含まれていたことによるものであった。
マヨネーズを復活させた冒険者たちはとらえられ、無人島で開拓を目的とした島流しにあったらしい。
これ以後、マヨネーズの名は、毒物と同義のものとされた。
とあるダンジョンマスター
「この結果は予想外です」
人形メイド
「卵の鮮度の問題ですね、日本以外の国で生卵は食べることはやめた方がよいですよ。皆さんも気を付けてください。」




