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鍛冶屋 ギムルside
ここ《トンネルベース》に工房を構えて3年ほどになるだろうか?
帝国との戦で捕虜となり奴隷身分に落とされ王国に売られたのだが、今では親方と呼ばれる立ち話になっている。
まあ、奴隷の身分は変わってはいないし、部下達も奴隷ではあるがな。
ただ、ここで働く上でモライミーズ家の奴隷であると言うことは逆に助かる面も多い。
人属以外の者は教義により差別対象であるから、ドワーフ族である俺が普通に店を開いたら鉄鉱石や燃料等を打って貰えたとしてもかなり割高、商品は買い叩かれ、税金は多目に吹っ掛けられるだろう。
しかし、奴隷であれば、税金等は、所有者であるモライミーズ家が支払うので気にする必要はなく、材料の鉄等は、ダンジョンからの供給(途中探索者ギルドを挟むが、探索者ギルド自体モライミーズ家の運営のため問題なし)を得られるので困ることはない。
燃料もモライミーズ家の商隊が定期的に運んで来てくれる。
家の工房の主な仕事は、探索者の武器のメンテナンスとダンジョンのモンスター、スケルトンからドロップする錆びた剣や錆びた斧などの鉄製品、青銅製品をインゴットに加工することだ。
錆びて欠けているのでそのまま再生させるよりもインゴットにして領外に売った方が儲かる様だ。
武器としては使い物にならないが、鉄鉱石などからインゴットを作るよりもコストが安いし、不純物も少ないからな。
何より、ダンジョンを攻略されない限り、資源が枯渇しないのがダンジョンのよいところだ。
それを材料に時間のあるときには武器を作ってもいる。
修繕しているとはいえ、寿命が来るのは必然だからな。
ここのダンジョンのそばにある鍛冶屋は俺のところともう二ヶ所が有るのみだ。
探索者ギルド、冒険者ギルド問わず、どこかの工房に馴染みになっている。
たまに外から来たものが横柄な態度をとり出禁を食らう奴がいるが、俺の工房を含めこの町の商店は、冒険者ギルド以外は、モライミーズ家の奴隷がやっている店だからな。
一店舗出禁を食らえば、すべての店が同様の態度をとる。
そうなれば、全店舗を謝って回るか、ここを去るかの二卓になるな。
探索斜ギルド、冒険者ギルド両方ともその事は教えないようにしているので、騒動を起こさないようにするための試験石にしているのかもな。
俺の工房は、金属加工だが、他にも昆虫型モンスターの甲羅の初期加工業者、薬草等を使った薬剤店等、基本的には、ダンジョンからでる素材系ドロップを加工、付加価値をつけるために存在しているといっても過言ではないだろう。
ただし、冒険者や探索者向けに作られた宿屋や雑貨屋、飲食店もあるが、精々酒を飲む以外に楽しむような所は作られていない。
そう言った所で楽しみたいのであれば、ワンセンターの町に足を運べと言うところが目に見えているようだ。
まあ、ダンジョンから武装した集団が町に現れたら大変なのだろう。
精神状態もおかしくなって、そう言った店にいって暴れられても困るだろうしな。
その辺りは、上手く考えられているようだ。
戦う所と遊ぶ所をキチンと分けている。
ただ、俺たちドワーフにとってはどちらでもよいがな。
モライミーズ領で作られている様々な酒は、ここでも飲める。
いや、最優先とまではいかないが、それなりに回してくれている。
食糧も十分に用意してくれている。
確り食べて、飲んで英気を養えと言うことだろう。
もっとも、値段もそれなりだが、他よりは安い。
後は、ドワーフ族の女がいれば………。
そこまで謂うのは贅沢だろうが、嫁さんほしいな。
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