閑話 塩の扱い(販売)
ケージside
出来上がった物の味を調整して、サンプルがいくつか完成した。
それぞれ、小壺に入れてある。
具も用意してあるが、別にしている。
元々、塩をどうやって売るか?が問題だったからな。
無理して売る必要がなかった。
さて、明日は、商人が来る。
勝負の時だ。
sideout
商人side
前回、アーチボルド卿に塩を売ってくれと頼まれたが、いくら、塩が不足ぎみで値が上がっているとはいえ、家のような小さな商会が手を出すには、余りに危険が大きいものだったのでお断りをしたのだが、今回、別の物を買ってほしいと呼び出された。
塩を使った品であろうが、せいぜい、魚や肉の塩漬け辺りだろう。
若い時に、アーチボルド卿には世話になっていたので多少色をつけて買い取る位はさせて貰おう。
屋敷の一室に案内されながら、そう考えていたのだが。
「よく来てくれた。まずは、紹介させてくれ。孫のケージだ。」
部屋に入るとアーチボルド卿が執務机に座っており、その横に8才位の少年が控えている。
彼が、戦死されたご子息の隠し子か、さほど似てはいないようだが。
「此度は、この者が色々作ったので、売れるかどうか判断してやって欲しいものじゃ。」
「ほう、ケージ殿がですか?それは楽しみです。」
「では、ケージ持って来てくれ。」
「ハイ、じい様。」
アーチボルド卿に命じられ、少年は、部屋を出ていった。
これは、期待薄だな。
いや、逆に隠し子であるケージ殿に箔付けするためかも知れないか。
しばらくして、ケージ殿が数人のメイドを引き連れて戻って来た。
持って来たのは、いくつかの小さな壺と器、それに湯が入った鍋だ。
「まずは、壺の中を見てください。」
そう言うので、壺の中を見ると、茶色い塩のような物が入っている。
いや、何やら細かくした物やゴマ等が混ざっている様に見える。
「塩では無さそうですな、これは一体?」
「これを一匙器にとり湯を注ぎます。しばし待てば出来上がりです。お試しください。」
「では、失礼して。」
フム、魚介と香草やゴマの風味がよいな。
ただ、薄っぺらい気がするな、雑味も多い、町では今一つ売れん気がする?
「次は、こちらを」
そう言って順に湯を注ぎ出して来る。
フム、先のものより段々質がよくなって来るな、最後のものなどこれだけでその辺の店よりも上手いだろう。
ただ、どれももの足りない気がするが?
「では、最後にこちらを」
最後に出して来た物は今までとは違いない具が入っておるようだ。
大分細かく刻んであるようだが。
肉片に乾燥させた野菜、なにか白い物が?これは麦だな。
そうか、物足りなさは、腹にたまらないと言うことだったか。
これだけ具があれば、満足感が得られるな。
「最初のものから、徐々にコストが増えておりますが、最後の物を除き湯を入れるだけで出来上がります。町中ではさほど売れないでしょうが、旅をするものにとっては、湯をわかす事さえできれば、十分に商品として価値があるかと。」
「確かに、常に旅を続けている行商人や冒険者等には売れるでしょうな。最後のを除くと言われましたが、どういう意味です?」
「簡単な理由ですよ。具材は干してあるのでしばらく茹でるか水にさらす必要があるということです。まあ、水から煮て、沸騰してから3分位ですか。」
そうか、干し野菜や干し肉を柔らかくする時間か。
水でも戻るなら先につけて置けば湯が沸く時間で食える訳だ。
麦も入っていたがこれも一工夫あるのだろう。
「後は、これも売れますか?」
何やら、紐が沢山出た台座のような物が出てきたな。
「これは?」
「ランタンを見て思い付きました。芯を増やせば携帯用のコンロになるのではと思いまして、取り敢えず作って見ました。」
なるほど、作りは甘く商品にはなりませんが完成すれば、それなりに売れるでしょう。
スープの元と合わせれば十分な価値があるでしょう。
「このままでは商品になりませんが、アイデアを買わせていただきましょう。」
「ありがとうございます。」
予想外の商品でしたが、儲けは期待できそうです。
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