閑話、ゴブリン海賊団2
ゴブリンキャプテン・シードside
さて、ドクはどこにいるだろうか?
いつもの研究室を除いて見るか。
ドクは、俺の配下のネームドモンスターの一体でゴブリンアルケミスト、錬金術を使うことが出来る稀少主のゴブリンだ。
頭脳はゴブリンのそれを大きく凌駕する。
ジョルジュが船上の右腕と言えるが、こいつは後方での頭脳と言える。
他のゴブリンと違い、子作りには興味がないのが困りどころだ。
大体、上位種と下級種が交配した時、上級種が生まれる可能性は1/
5位しかない。
早く子を作ってゴブリンアルケミストの数を増やしたいのだが、どうしたものか?
あれこれ考えながら歩いていると、いつの間にかドクの研究室の前までやって来た。
研究室といっても、ダンジョン迷宮内にある行き止まりになった広場を扉で仕切っただけなのだがな。
これは他のゴブリンも同様だな。
一部地上の洞窟等を住みかにしている奴や船に住み着いているものもいるし、石を積み上げて小屋を作ろうとしている者もいる。
いずれは地上部は整備しないといけないかも知れんな。
「ドク、居るか?」
「誰じゃい?今、忙しいんじゃが!………。これは、シード様、こんなむさ苦しい所に何ようですかな?」
奥の扉が開き一匹のゴブリンが出てきた。
「ジョルジュから何やら食料の確保する手段を思い付いたと聞いてな。」
「立ち話も何でじゃ、中に入ってもらえるかの。」
ドクは、さっさと中に入っていった。
ダンジョン内の一角を区切っているだけから、どこでも大した違いはないのだが、そう思うと少し面白いのだが、まあ、自宅に招かれたと思っておこう。
どちらにせよ、俺のダンジョンなのだがな。
中に入るとまず臭いが気になる。
植物を煎じた薬のような匂いが強い。
それと微かにだが、花のような匂いも感じるな。
ドクが、花を愛でるとは思わないが?
「早速じゃが、こいつを見てくれ。」
そう言って、ひとつの鉢植えを持って来た。
そこには、一本の花が植えられている。
「この花がどうかしたのか?」
「いや、その花ではなく、土の方じゃ。」
言われて鉢植えの中を見るがいたって普通の土のようだ。
多少、細かな木片や炭の欠片のようなものも見えるが、どこが違うのだろう?
「いたって普通の土のようだが?」
「この土は、ワシが作ったもんですじゃ。」
「土を作っただと?」
この島は岩石が多く作物を作ることの出来る土壌があるところはごくわずかだ。
その為に、回復薬の材料になる薬草を中心に育てようと考えていたのだが、土を作れるなら作物を作ることが出来る。
今いる人数であれば、僅かに生えている木から得られる果実類と海産物でなんとかなるが、人数を増やすにはどうしても耕作地が必要にななるからな。
「で、どうやって作ったんだ?」
「簡単なものじゃて、木の植わっているところの土と貝殻を砕いたものと煮炊きに使った時に出る灰や消し炭、木工に使った木屑、塩抜きした海藻類に、あるものを混ぜただけじゃ。」
「あるもの?」
ちょっと、嫌な感じがするが聞かないわけにもいかないな。
「わしの糞じゃ。」
ニタッとした笑い顔でドクは、そう答えを言った。
「ウワッ、なんだと!」
思わず、鉢植えを投げ出してしまった。
「おっとり、危ない。気をつけい!!」
「なんつう物を渡すんだ!」
「こんな所で土を作ろうと思えばそう言った物を使うしかないんじゃ。」
確かに、土に似ているが、それで出来た物を食うのか?
しかし、背に腹は変えられんか。
「で、なにか問題点があるのか?」
「ウム、他の材料が少ない事じゃな。貝殻や海草はそれなりにあるじゃろうが、木材や灰等はここでは取れんのじゃ。後、森の土もじゃな。」
「流木とかでは追い付かないのか?」
「全然足らん。じゃので少しでもよいから、確保してきてほしいんじゃ!」
また、必要な物が増えたな。
船の積載量にも限界があるのに。
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