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ケージside
ネス様と共に転移した先は、円形の部屋だった。
中央に大きな水晶球が台座に鎮座している。
普通の水晶にはない輝きを放っている。
「ここは?」
思わず口から疑問を発してしまった。
「ここは、ダンジョンコアの間だ。
彼処にあるのがお前のダンジョンコアになる。」
ネス様は、水晶球を指差しながらそう言った。
俺は、その水晶球の怪しい光に見いられながら、「これが俺のダンジョンコアなのか。」と呟いた。
「さぁ、ダンジョンコアに触れて登録しろ。」
ネス様の声に導かれるように俺はダンジョンコアに触れた。
途端に、頭の中にダンジョンを操る上で必要な情報が流れ込んで来る。
一瞬だったのか、それとも数時間たったのか?
情報の波に飲まれていたのは。
まだ、何もしていないはずなのにダンジョンコアに蓄えられていたポイントが減っていくのを感じながら意識が波の中から浮き上がる。
ネス様が「うむ、うまくいったようだな。」と頷いている、そして、「気分はどうだ?」ときいてきた。
気分?そう言えば身体中に力がみなぎっているようだ。
何でもでしそうな全能感がある。
「問題無さそうだな。ダンジョンの扱いはわかるか?」
ダンジョン?
地上部と階層が2層あるのは感じるがモンスターらしき者はいないようだ。
地上には、人属らしき気配を感じるな。
地上から人属が来たら大変だ!
モンスターを早く産み出さないと!
「そんなに焦るな、ここの地上部は安全だ、ゆっくりダンジョンを育てて行けば大丈夫だ。」
ネス様の宥めるような声に焦りがスッと消えていく。
何故、あんなに焦ったのだろう?
「焦ったのは、ダンジョンマスターとしての本能のようなものだ。
気にする事はない。
落ち着いたら地上に出るぞ。」
スーハ、スーハ、深呼吸をして、フー、少し落ち着いた。
「申し訳ありませんでした。もう、大丈夫です。」
「そうか、では、そこにある石板を手に取れ。
それで、ダンジョンは操作出来る。
ダンジョンマスターは自身の力でダンジョン内を転移出来る。
その力で地上に飛べ。」
「え、急にそれは………。」
「では、俺とマリオンは、先に行く。早く来いよ!」
そう言ってネス様は、マリオンを連れて転移して行った。
え、マリオンは俺の補佐役ではないのか?
ちょっと唖然としながら気を取り戻して石板を手に取る。
石板と言うから重いのかと思ったが、ボール紙で出来た空箱のような軽さだ。
扱い方は、ダンジョンマスターに成った時に、頭に入って来た知識の中にあるので問題ない。
表面に触れるとアプリのアイコンのようなものがずらりとある。
全てをチェックしたい気持ちを押さえ、転移用のアイコンに触れる。
脳内にダンジョンのマップが表示された。
マップ上にもさらに色々な物が表示されるはずだが、ダンジョンの一層、二層には何も表示されていない。
二層は、迷路のようなTHEダンジョンといった感じだが、一層目は、ただただめい一杯空間を広げただけの何もない所のようだ。
地上部は、円形にダンジョンエリアが設定されている。
かなり広範囲になる様だ。
人属らしき気配が多数あり、ネス様の気配もある。
ダンジョン出口を隠すかのように建物が立っているな。
下準備はこういった物も含んでいたようだ。
場所をイメージすると脳内にその場所が浮かび上がる。
向きも自由に変えられる。
しかし、これでは覗き放題じゃないのか?
まあ、特役だと思っておこう。
《おい、何やら良からぬ事を考えていないか?とっとと来い!》
「え?ネス様?」
《念話だ。お前が配下のダンジョンマスターになったから使えるようになったんだ!いいから早く来い!》
ヤバイな、早く転移しよう。
地点を認識して、障害物のないようにしないとな。
壁の中にいるとか他の者と合体なんか嫌だし。
よし、転移だ。
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