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ケージside
俺は平伏して待っている。
メイドがそうするように命じて来たからだが。
今いる場所は、中央にそびえる天守を囲むように作られた屋敷の一室に通された。
そこは、時代劇かなにかで見たことのあるような場所だった。
床は畳のような物で覆われ、左右は豪華な絵のかかれた襖がある。
普通ならば真っ暗になるような作りではあるが、天井に仕込まれた魔法の明かりにより十分な明るさがある。
正面には段高くなった所があり、そちらに向かい座らされる。
どこぞの殿様でも来るのだろうか?
周囲には、この時代劇セットには似つかわしくないメイド服や執事服を着たパペットやコボルド等がいるので違和感が半端ないな。
彼らは片膝をついて頭を下げている。
俺だけ平伏っておかしくないか?
sideout
ネスside
謁見の間に彼が来たと言う報告が来たので向かうとしようか。
基本的に俺のイメージを配下モンスター達は共有するところがある。
例えば料理等はそうだ。
大雑把に製造過程を知っているのであれば、どうにかしてモンスター達は作る事が出来る。
例えば醤油ならば、醤油麹と小麦と大豆と塩水を発酵させて作るということは知っていたが細かい過程は知らない。
最初は、似ても似つかはないようなものが出来上がって来たが、麹菌を探しだし、試作を繰り返す事によって使用に耐えれる物を作り上げてくれた。
ただ、何となくというイメージで物を頼むと大量の物資の消費を覚悟しなくてはならない。
しかし、通信機等、原理がわからないような物はさすがに作ることは出来ない。
逆にイメージが先行しすぎる事もままある。
この城自体そうである。
確かに和式の天守を持った城を作るように命じたが、外装のみのつもりだった。
多少和室も作りたいと思っていたが、彼らが俺の和風の城のイメージをそのままに現実化するとは思っていなかった。
完成するまできちんと確認しなかった俺も悪いのだが、さすがにあの大広間はないだろう?
まあ、できたものは仕方がないがな。
主に生産部門で活動しているのはパペットだ。
スキルさえ付与してレシピを渡してやれば大抵の物は作ることが出来る。
さすがにハイエンドのものや独創的な物は作ることは出来ないが、大量に同じ物を作るのには向いている。
100作れば100同じものを作り上げることができるし、細かな配分変更を延々と繰り返すことも苦にしない。
例えば剣を打つときの回数を5回づつ変えて100本打てとか命令すれば愚直にそれを行ってくれる。
素材の配合、金属の熱し時間、打つ回数、冷却時間等細かく設定しておけばそのうち最高の物が出来上がることになる。
一度レシピが完成すれば、後は材料さえあればいくらでも量産可能だ。
と言っても安定して手にはいる素材の問題もあるので普通の武器としてはと言うことになるが、それでも配下の兵に渡すには十分だろう。
細かく指示すれば、こちらの思い通りの物を作るパペットではあるが、丸投げしてしまうと大雑把なイメージに俺の記憶欠片を実現しようとする事が度々起こる。
例えばトンカツ用ソースを作れと命じたら犬の絵柄かかれたソースが出来上がった。
俺が前世で愛用していた物ではあるが、材料のコストがかなり高額になる結果となってしまった。
イメージに強くあったものだからそれを優先したようだ。
まあ、代用品を使うことによって低コスト化することには成功しているので問題解決したのだが。
おっと、余計な事を考えて思考逃避をしている場合ではないな、覚悟を決めていくとしよう。
あー、やっぱり改装してもらおうかな?
殿様って柄じゃないよな。
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