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ケージside
よくわからない刑事ドラマをさせられてから3日程たったと思う。
正確な時間はわからないが、日に2度食事が出るのでそれを基準と考えるしかない。
出てくる物はスープとパンだ。
普段食べていたものよりずっと具だくさんで量もある、パンは歯が立たない程固い黒パンではなく、ほのかに甘い香りがする白パンだ。
売られる前も奴隷市にいたときも、買われた後もこんなに旨い物は食えなかったが、あの時食べたカツ丼の味を思い出してしまうと物足りない気持ちになる。
アー、あのカツ丼がまた食べたい。
そんなことが頭をよぎるが、かっかっとスケルトンの足音が廊下に響くと緊張してしまう。
死刑囚ってこんな気持ちだろうか?
ひょっとしたらあのカツ丼をたべた事は、夢であって次扉を開けられた時、処刑されるのではないかと恐怖にかられる。
俺たちを捕らえたのは、スケルトンだ。
そこがまず、おかしいのだが何のためになのかもわからない。
カッカッカッ
ああ、また、あの足音が廊下に響いている。
俺の部屋の前で止まるなという気持ちと止まって俺を楽にしてくれと言う気持ちが交差する。
コンコン
思いが届いたのかそうでないのか解らないが俺の部屋の前で足音が止まりドアをノックしてきた。
尋問か処刑のどっちだろう?
足が震えるな。
「返事位しなさい、いきますよ!」
行きなりドアを開けたのは、ここには相応しくないメイド達だ。
先頭にいるリーダー格のメイドは、濡れ羽のように美しい黒髪をなびかせた美女だ。
皆、人形のように無表情だが彼女だけ目に力がある。
「さっさと………臭いですね、マスターに会わせる前に洗っておきましょう。」
余りの美しさにぼーとしてしまったらリーダー格のメイドにそんなことを言われた。
地味にショックだな。
「「わかりました。洗って参ります。」」
後ろにいたメイド達に左右から抱き上げられた。
前世はともかく、今は8歳の子供の体、軽々と抱き上げられてしまった。
メイド達は、俺を抱くかえているとは思えない早さだ走り出した。
足も着かない状態でつれられていくのは結構怖い。
子供を左右から抱かえて疾走するメイドも怖い物があるが、俺は、それどころではない。
アッと言う間に廊下を突っ切り、風呂場につれていかれた。
恐怖のあまりか、あまりの速度故か道順を覚えることが出来ないぐらいだった。
「さあ、そんな汚い服は剥いてさっさと洗ってしまいなさい、マスターをお待たせしてはなりません。」
「「ハイ。」」
え、ちょっと待て!それはダメ!!何でみんなデッキブラシを!!
あぁー!!
さすがにデッキブラシで体中を洗うのはどうなんだよ!
しかも大事なところまで( ;∀;)
もうお婿にいけない。
茫然自失状態で呆然としている俺は、今までに着た事の無い質の良い服を着せられた。
「これでいいでしょう、さっさといきますよ!」
「「ハイ。」」
また、両脇を抱えられながら廊下を運ばれていく。
長い廊下の先にある一つの扉の前で漸く止まった。
今までに見たことのないような立派な扉があり、立派な鎧を着たスケルトンが両脇を固めていた。
「開けなさい!!」
両脇にいたスケルトンがその声に反応して扉を開けた。
中は円形の部屋になっており、いくつか魔法陣らしきものが床にかかれている。
中に入ると扉が閉められた。
俺は抱えられたままその中の真ん中にある魔方陣のせられ、リーダー格のメイドが何やら呪文らしき物を唱えているのを見ているしかなかった。
呪文と共に魔法陣がひかり出しその眩しさに目を閉じた。
一瞬の浮游間を感じたあと目を開けると先の部屋に似た所だった。
しかし部屋の大きさは3倍以上、魔法陣の数もそれに比例して増えている。
壁際にある扉も1つから4つに増え、そこに大きく方角が書かれている。
「こっちです、ついて来なさい。」
そう言って西とかかれた扉を指差した。