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○○side
いったいどのぐらい日数が過ぎたのだろう?
脱出に失敗した俺は、気がついたら小さな部屋に閉じ込められていた。
他の人たちは、別室にいるかどうかすらわからない。
尋問するときに部屋から出される時もあるが、部屋に戻ってすぐにまた連れ出されることがあると思えば、一向に呼ばれない事もある。
尋問官は、喋る事の出来るスケルトンとかウッドパペットとかだ。
男爵領の様子はもちろん、今まで生きてきた人生、傭兵団のことなにもかも聞かれた。
この尋問が終わったら俺はどうなるのだろう。
「デロ。」
今日は、二度めだな。
もうしゃべることはないぞ?
「ツイテコイ。」
最初は色々話しかけて見たが反応がないので黙ってついて行く。
今日は何かが違う。
いつも来るスケルトンは、服を着ていないが、今はスーツらしき物を着ている。
「警部殿連レテ参リマシタ。」
案内役のスケルトンが一つのドアをノックしてそう言った。
大分かかったな。
やっと着いたようだが、警部?
「入れ!」
「失礼イタシマス。」
スケルトンに着いて部屋に入るとスチール製の机とパイプ椅子が真ん中に置いてあり、壁側に向かい小さなテーブルの前に制服を来たスケルトンが座っている。
真ん中のテーブルには、スタンドライトが置かれている。
奥の窓際にスーツを来たパペットが立っている。
え~と?
刑事ドラマの尋問室?
「座レ。」
机の奥のパイプ椅子を示して、案内して来たスケルトンが言った。
おとなしく座るしかないな。
「ねたハ上ガッテイル!!とっとト吐イタ方ガイイゾ!!」
「え~と、何の事ですか?」
ガンッ「知ラバクレル気カ!!」
「本当にわからないんですが?」
机を蹴って迫って来たスケルトンが積めよって来たけど、色々すっ飛ばし過ぎだろう。
意味がわからない。
「其れぐらいにしろ、そんな風に言われてたら割るもんも割らんよ?」
「シカシ、警部………。」
「まあ、任せておけ。坊主、いや、ケージと言ったか?」
「あ、ハイ」
「お前にも国に帰ればおっ家さんがいるだろう?」
「いや、売られたんですが?」<カーサンが夜なべーをして♪>
「泣かす様なことをするんじゃないよ。」
「え~と?売られたんで泣きたいのはこっちなんですが?」<セッセーとアンダダヨー♪>
「腹が減ってないか?」
「話を聞いてます?」<フフッフン♪>
俺の発言はスルーですか?
それと調書を書く役の定番の曲を歌っていたが途中で歌詞を忘れたみたいだ、歌うならキチンと覚えとけよ!
「まあ、これでも食え。」
そう言って机においたのは、縞模様の蓋付きの器と割り箸だ。
そこから漂う匂い!!
そう!これは出しの臭い!!
まさかこれは!!
恐る恐る震える手で蓋を取るとそこには茶色い衣を黄色い卵で綴じた………。
周囲に目を向けると優しそうな雰囲気を皆が出している気がした。
※スケルトンとパペットのため表情はわからない。
警部と呼ばれているパペットが俺を見て大きく頷いた。
もう我慢が出来ない。
添えてあった箸を握り、一切れを持ち上げ口に運ぶ。
卵で綴じられているのにサクッとした歯応えの後、スッと肉が噛みきれ、肉汁と半熟の卵、そして出汁の味が口に広がる。
続けてその下にあった出汁の染みた米を玉ねぎと共にかっ込む。
アア、上手いとしか言いようがない。
これが例え最後の晩餐だとしても構わない。
今はこれをかっ込むだけだ。
気がつけば、米粒一つ残さずに丼は空になっていた。
一息ついた時、目から涙が溢れ思わず
「刑事さん、俺がやりました。」
と言ってしまった。
「しばらく出てこれないと思うが、しっかりやってくるんだぞ。」
「すいません、お世話になります。」
最初に俺を連れてきたスケルトンについて部屋に戻った。
………ハッ
今の茶番は一体何だったんだ?
思わずカツ丼のうまさに負けてしまった。
ケージsideout