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ネスside
先日の戦いの報告が修羅から上がって来た。
損害はさほどでもないようだ。
スケルトンが13体、壁ゴーレムが2体失ったが、損害は軽微と言えるだろう。
逆に敵側の損害は死者28、重傷16、軽傷44、錯乱したもの12死者以外は捕虜としたのようだがどうすればよいかと対処を求められている。
死者は、そのままブラッディローズの肥料となってもらうとしてあとのものはどうするか?
重傷と錯乱したものは、ダンジョンに運んでポイントになってもらうとして、後の連中はどうするかな?
残りは、一旦メインダンジョンに運んで尋問でもさせておこう。
男爵領の内部情報とか持っているかもしれないからな。
不要になれば他のダンジョンマスターに売ってもいいし、実験に用いてもよいだろう。
しかし、今回使用した魔霧水に含まれる各種麻痺薬と恐慌剤の効果がかなり効き目があったようだ。
目霧水自体実験中のため、数を揃える為に有るだけ出したので様々な質のものが混在していたが、今回はそれが効を得た形になっているようだ。
含まれている各種麻痺薬の種類は様々あり、肉体を麻痺させるものは当然として、視力や聴力といった感覚器官、魔力制御、精神等色々混ざっている。
それぞれの効果はさほど高くないが、吸引後、戦闘による急激な運動を強いられたため効き目が早まったのだろう。
そこに希望が打ち破れた精神的ダメージ、修羅の存在があり、恐慌剤の威力が倍増した。
しかし、やはり使い勝手が悪いな。
今回は上手く作用したが、魔霧水は色々改良をする必要がありそうだな。
霧の発生率、コスト、拡散速度、容器等の問題が山積みだ。
麻痺薬等の成分を抜けば多少のコストダウンにはなりそうだが、まあ、多少ましと言うレベルだ、今回はかなり有効的に効いたようだしな。
容器に関しては、もっと密閉率を上げないといけないが、これ以上を考えると金属製になるだろう。
ゴム等のパッキンを使用することも考えられるが、魔霧水は何故かゴムを溶解させるから使えないのだよな。
当面は、密閉空間での使用に限定するしかないか?
男爵領で実験をさせておこう。
男爵領で使用するには逆に魔素の濃度が上がるから積極的に撒いた方がよい。
低コスト化できれば死霊系モンスターの動員も容易になるのだが。
研究班の努力に期待しておこう。
報告を戦術的に見た場合、色々と無駄があるな。
修羅の経験不足が顕著に出ているがこれは仕方がない。
他の部隊長クラスにも言えることでもあるし、小隊レベルしか指揮させてこなかった俺の責任でもある。
相手は戦術を使うようなモンスターでもなかったしな。
王国が立て直してきた場合、男爵領をめぐる戦いになるだろうから、他の部隊長クラスを派遣して経験を積ませておこう。
数日後
尋問の結果報告をまとめた書類が上がって来た。
う~ん、男爵領の様子がおかしいようだな。
今回脱出を試みた者の内、半数が雇われた傭兵団、残りが街の住人だ。
他の者にも声をかけたらしいが、脱出する者はいなかったらしい。
食糧もほぼつきかけているらしいのだが?
やはり、あの町にはなにかあるのだろうか?
王国の部隊が動き出せるようになるには後一月はかかるだろう。
他の都市の問題もあるし、開放がいつになるかわからない。
男爵は、逃げる訳にはいかないのはわかるのだがな。
王国貴族は、さいごまで町に留まる法があり、脱出するとしても住民を先に逃がさなくては爵位を剥奪される。
それも本人だけでなく一族すべて爵位の継承権を失う事になる。
これは、当主が不在で名代を送り込んだ場合も同じだ。
しかし、住民には関係ない話であり、そこまでの忠義を持っているものはさほどいない、もう少し大規模化しても良かったはずなのだが?
まあいいか、後は、さほど重要なものは無さそうだ、この一人の少年に関する報告以外は………
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