166
修羅side
「修羅様、問題なく作業は順調に進んでおります。」
「ウム、わかった。そのまま進めてくれ。」
「ハイ、では失礼します。」
ふう、ネス様の命によりこの地を包囲しているが、こういった事務的作業はなれんな。
今報告してくれたマーズともう一体の側近がいなくては、やっていくことは厳しかったな。
マーズというのは、ネス様の許可を頂き、俺自身が名付けしたものだ。
こいつともう2体、俺自身が組み立てたスケルトン系モンスターだ。
スライムとコボルドマージの魔石を使い作り上げたスケルトンスライムだ。
魔法の素質があったので魔法使いとして育てている。
他に、敏捷度が高く手先が器用なのでシーフとして育てているピーター。
ダンジョンで偵察を任せられるようになって欲しいものだ。
最後にスライム種と昆虫等をテイムする能力を持っているのでテイマーとして育てているライムがいる。
スライムで虫でも情報収集が可能ならば問題ない。
配下の生物と意識を合わせて状況を読み取る事ができるからな。
すべてスケルトンスライム種だ。
合成スケルトンは何種か作ってはいるが、スケルトンスライム種で統一性したのには訳がある。
それは、死霊系モンスターの弱点である陽光に耐性を持っていることだ。
今のところ、産み出して間がないのでモンスターランクは、さほど高くはない。
古参のスケルトン系モンスターにはもっと強い者もいるのだが、俺自身が古参の者に名をつけるだけの力を持っていなかった。
古参の者は、すでにランクで言えばC+、ここまで成長されてしまうと俺の保有する魔素では、名付けすると魔素の大半を持っていかれてしまう。
およそ、名付けに必要な魔素量は、そのモンスターのランクの凡そ20倍程必要になる。
俺たちのような死霊系モンスターは、ほぼ、魔素で動いているといっても過言ではない。
そこまで消費してしまったら己の存在自体が危うくなる。
ダンジョンマスターであれば、ダンジョンポイント等で代用が可能ではあるのだが、あくまで俺は、ネス様の近衛だ。
今回のように特集任務以外でネス様のダンジョンを離れる気はないが、ある程度独立任務で指揮をするものが必要になって来ているのも事実だ。
作りたての彼らを動員するのはどうかと思うのだが、今回のように初級スケルトンを率いるには十分だ。
古参の者では、その命令に従わないだろうしな。
「修羅様、ご報告させて頂きます。男爵領の一部の部隊が脱出をはかるようです。」
ライムがそう報告してきた。
「それは、確かか?」
「は、配下の目を借りて確認しております。」
「第二王子の部隊か?」
「第二王子と言えなくもないですが、雇われ傭兵団のみだがようです、さすがに付き合いきれなくなったのでは?」
確かに、食糧等の物資はつきかけているのだから、脱走する部隊が出てもおかしくはない。
特に傭兵団では、忠義が薄いだろう。
しかし、それを言えば第二王子の行動が不可解だ。
確かに男爵は婚約者の父であるが、命懸けで領地を守る程の意味があるのだろうか?
例えここで撤退したとしても、問題ないはずだ。
婚約自体破棄される事はあるかも知れないが、王族として生活に困窮することはない。
共に来た貴族の子弟達にも同様な事が言える。
何故、逃げ出そうとしないのだろうか?
ここを死守する意義が彼らにはないはずなのだが?
男爵が残るのは仕方ないであろう、それが領主の役割なのだから。
が、王族を道ずれにするのは、普通考えられない。
おっと、思考がずれてしまっているな。
まずは、目先の問題を解決しなくては。
「その部隊を包囲センメツすることにしよう。悪いがピーターとマーズ、それにパペット隊とコボルド隊の隊長を呼んでくれ。」
「わかりました、呼んで参ります。」
どれだけ部隊を動かせるかな?
sideout