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第二王子部隊中隊長side
「隊長、来ましたぜ。数150といったところですか?」
城壁の上で夜明けと共にやってくるモンスター達を待っていると、部下が報告してきた。
「準備の方はどうだ?」
「問題ありません、悪いとは思いましたが、こちらの部隊用の物資も全部持ち出す事も出来そうです。ちょっと、背負わないといけないので動きが鈍くなりそうですが。」
「無理のない範囲で持たせろ。死んでは飯は食えんぞ!」
「へい、調整させます。」
余計な荷物を待たせるのは、戦闘力を落とす事に繋がるが、馬車等を引く馬やロバ等は、すでに肉と化しているので使うことは出来ないし、大八車等をひいては機動力が落ちる。
分散して持つのが現状では一番よいと判断した訳だ。
荷運び担当を作ることも考えたが、一度にすべてを失う可能性もあるのでこれも諦めた。
部隊の所有するマジックバックもあるが、容量の半分は水を入れた樽だ。
一番量が必要になるからな。
1人辺り2リットルと3日分の携帯食糧を持たせることにした。
「皆、この戦いを最後とする!各自奮戦し生き残ることを優先せよ!まずは、目の前のモンスターどもを潰す。総員突撃せよ!」
「「「「ウオォォォ!!!」」」」
このモンスターの第1派は、たいしたものではない、僅かづつ増えているとはいえ毎日同じように撃退できているのだから。
ただ、いつもと違うのは、城壁に寄って戦うのではなく、打って出ているところだろうか?
それでもいつもより、人数が1、5倍の戦力だ、多少能力的に劣るものになっているとは言え問題ないと言えるだろう。
「ゼイヤ!!あと少しだ。みんな踏ん張れ!!」
コブリンを剣で切り裂きながら、周囲の者に発破をかける。
うちの隊の連中は問題無さそうだ。
ん、ヤバイな!
近くでビックコックローチを相手に踏ん張っている小僧の後ろから別のビックコックローチがせまっている。
「おぅりゃぁ!!小僧気を抜くと死ぬぞ!気をつけろ!前からだけ敵が来るわけじゃない、周囲にも意識を向けておけ!!」
ビックコックローチを切り裂きながら小僧に向かって俺は怒鳴った!
「すいません!!ありがとうございます。」
「もうじき、モンスター共が下がる、それまで気を緩めるな!」
「ハイ!!」
たく、手間をかけさせるな!あと少しなんだから死ぬんじゃねーぞ。
ふう、第一波は無事撃退できたな。
「者共よくやった、しかしこれからが勝負処だ!気を抜くな!」
「「「「オーーーーー!!」」」」
しかし、これからが本番だ。
思った以上に集まった奴等が戦力になるのは嬉しい誤算だったな。
せいぜい囮になれば良いぐらいの気持ちで集めたのだが。
なにがしらの精神操作がこの町で行われていたのだろうが、それにあがなう事が出来た者達だ、戦闘職でないとしても弱くはないのだろう。
さて、ここからが本番だ!
今までのモンスター達の行動を見ている限り、およそ4割の戦力を失うと撤退している。
翌日に僅かに数を増やしてまた来襲するということを繰り返している。
ここで追撃をすれば、補充分のモンスターを加えた先程と同数のモンスターとの戦いになることは予想出来る。
いや、モンスターがどこから着ているかわからないのだ、同数だと言うのは楽観すぎだろうか?
2倍以上の戦力と考えておく方が賢明だろう。
それでも突破するしかない、どのみち、もう、町には戻れないからな。
只でさえ少なくなった食糧を持ち出したんだ、戻ってもただではすまないだろう。
引くことは出来ない、前に進むのみだ。
「時間がない!疲れているだろうが、このまま進むぞ!部隊を纏めろ!怪我している者、体力の消耗の酷いものを内側にして進むぞ。」
怪我人は多少いるが動けない程ではないのが助かる。
重傷で動けない者が出ていたら置いていくしかなかったからな。
しかし、安全を確保するまでは、ついてこれないものは捨てていかなくてはならないのだろう。
嫌になるぜ。
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