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修羅side
「大まかに言えばこんな所だ、此処はしばらく自由に使ってよい、後は修羅を中心に詰めてくれ。」
「「「「「ハッ」」」」」
そう言ってネス様は、マイヤー殿を連れて部屋を後にされた。
どうしたものか?
「サテ、ミナ申シ訳ナイガ、念話デ話テモヨイカ?」
どうも普段念話しか使っていないので声を出すのは、少し辛い。
ネス様の前ではそれを失礼であると考えているので声を使っていたがここにいるのは同輩であるし、役職的には上位だ。
「問題ないですよ、ね、皆さん。」
代表してラニアがそう言ってくれた。
他の者も頷いてくれている。
『すまぬ。助かる。では、今後の事を話し合う事にするか。私では、わからない事が多いので協力を頼みたい。』
ネス様がここに皆を集めた理由はそこにあると思う。
私1人で仕切らせるのであれば、選出した者を預ければ事足りる。
しかし、大雑把なガイドラインと隊長格の者を集めたのは、協力して事に当たれと言うことだろう。
『では、どこから始めようか?』
「そうですね、では、工兵の立場から見てですが、皆に関わりのある周囲の壁についてはどうです?」
『そこからだな、うちのスケルトン部隊は単純作業しか出来ないがどうすればよいだろうか?レイン?』
「ネス様が行った事を真似しましょうか、修羅どの飛行系モンスターはおりましたかな?」
『スケルトンオウルがいるが?』
「十分です、スケルトン達には穴を掘って土嚢袋に詰める作業をしてもらいましょう。それをマジックバックに詰めてスケルトンオウルに運んで貰えばよいのです。」
『マジックバックか、かなりの数になるが大丈夫だろうか?』
「ネス様の事です、その辺りは想定済みでしょう。それで作った土山をシバ殿の部隊で固める訳です。」
「あるほど、それでうちの部隊から土魔法を使える者を集めたのか。」
「そう言うことですシバ殿。」
「土魔法なら多少の形の変更は可能よね、箱形にすることは可能かしら?」
「できるがどうしてだ?リード。」
「木を植えたいのよ、沢山ね!」
『そんな所に魔樹を植えるのか?』
「違うわよ。普通の物よ。ビオトーブ用に用意しているものだけど多少は転用してもよいと思うのよ。」
『普通の物を植えても仕方ないと思うのだが?』
「魔素の拡散を防ぐ防風林の役目が果たせるわ、それに作戦終了してからの維持にも向いているわよ。」
フム、作戦の事しか考えていなかったが、その後までも考えておく必要があるのか。
これは、指揮官として学ぶ機会をネス様が与えてくれたのだろう。
「それは、すぐでなくてもよいだろう?」
「どういう事?シバ?」
「最初は壁だけ作る方はよいだろう、男爵領にいる人間に周囲を壁で囲まれたというプレッシャーを与えた方がいいぞ、リード。」
「それであれば一部木製の物でも問題ないでしょうか?」
『クリフその理由はなんだ?』
「掘り返す土の量では不足するのでは?と思うのですよ、先に木製の壁を用意して立てて置けば不足分を補えると思うのです。ま、ダミーのようなものですが効果はあると思います。」
『ダミーか、墨俣の一夜城のようなものだな、インパクトが強すぎて脱出を計らないだろうか?』
「そうですね、その可能性はありますが。街道も塞ぎますので大丈夫だと思います。」
「ネス様の命によれば、街道はブラッドローズで塞ぐ手筈よ?」
『リード、いくら成長の早いブラッドローズでも街道を塞ぐには時間が足りないのではないか?』
「う~ん、そうね、1月は欲しいわ。」
それでは、周囲を囲っても突破される、といって配下のスケルトン部隊では、日中は活動出来ないぞ。
「ブラッドローズを植える範囲はエリア化した所が多い、うちのパペット部隊がいるからそこまで心配は要らないのではないか?」
『戦闘もパペットがこなせるのは理解しているが作業もあるだろう、ある程度の戦力を別に用意しておくべきではないか?』
「エリアないであればゴーレムをお借りしては?」
ゴーレムか、ノーマルタイプであればメンテナンスも入らないし、体制を立て直すまでの壁役に持ってこいだな。