150、炎上
ネスside
いやー予想外に上手くいったものだ。
第二王子の一派が借りていた第3倉庫群は、王都の外壁に近いところにある。
ダンジョンエリア化を進める上で一番しづらい所は、王都等の大都市だ。
まず、人の出入りや歩哨等の目に付きやすい事だ。
ダンジョンコアの欠片や魔縄等を付設していると目立つからな。
どうしても、少しづつ、こっそりと行うので時間がかかってしまう。
次に城壁の存在だ。
モンスターの襲来や戦争の為に都市を囲うように存在しているのだが、エリア化するには邪魔なものだ。
まず、街道のエリア化を基本として進めて来たが、城門の手前までしかラインを伸ばすことが出来なかった。
まあ、当然のことだが。
なので、城壁を囲んでいる堀に魔鎖を沈めて後からダンジョンコアの欠片を放り込んで広げる方法をとっていたが、それでは城壁の厚みを突破するのにかなりのダンジョンコアの欠片がかなり必要になった。
さらに、城壁の内側でもラインの設置は難航して、その一部しかまだエリア化できていなかった。
唯一、ある程度の規模でエリア化できている場所が第3倉庫群の近くだったのだが、ツイているとしかいいようがないな。
元々、倉庫郡は狙っていたのだが、それは、クラップの商会やその他、ブレインイーターで配下にした商人達の商品を運び込む為に必要な場所としてだったが。
魔縄が焼けて切れる可能性もあるが、まあ、なんとかなるだろう。
sideout
キャットピープル隊隊長 サスケside
本来では、森林戦メインなのだが、隠密行動ができる者が余りいないと言うことでネス様が我々にとある命令を下された。
王都の倉庫群の一部に侵入してエリア化せよとの命令だ。
その為に、現在、第三倉庫郡24番倉庫に転移してきている。
「サスケ様、所定メンバーが揃いました。」
部下の一体が報告してきた。
「そうか、では、改めてネス様の命令を伝える。まず、これを見てくれ。」
そう言って、準備しておいたこの付近の地図を出した。
「現在、我々がいるのがこの24番倉庫だ。」
皆が地図を見て頷いた。
「23番倉庫から27番倉庫、裏手の13番倉庫から17番倉庫の範囲に所定の物を仕掛けておくように、あくまで隠密行動であり、姿を見られない様にしろ。設置終了したのち、確保出来るだけの物資を回収後素早く撤収すること。では、行動を開始せよ。」
「「「「ハ!」」」」
さて、俺も行動に移すか。
俺の隊は、一番遠い17番、16番倉庫だ。
たまに通る歩哨を交わして目的地に急ぐ。
「潜入するぞ、軽快を怠るな!」
「「「ハッ」」」
「まずは、この16番倉庫からだ、全員所定の作業に移れ。」
「「「ハッ」」」
チームは、俺を入れて8人、2人づつに別れて作業を始めた。
壁沿いにアイテムバックから取り出した薪を積み上げ油をかけるもの、アイテムバックに倉庫内の物資を詰め込むもの、壁に小さな穴を開けるもの、周囲を警戒する者に別れた。
「奪う物資はある程度でよい、全体の2割ぐらいにしておけ!」
「ハッ」
後で現場を確認されたとき、物資が大量になくなっていたらさすがにわかるからな。
それでもこの倉庫群からだと結構な量になるだろう。
「開ける穴は出来るだけ自然に見えるようにしておけ。」
「ハッ」
穴を開けて油の染み込んだロープを出して隣の建物に繋ぎ引火しやすくしておく。
また、同じように油を染み混ませたロープを燃えそうな物のそばまで伸ばして藁をかけておく。
「よし、こんな所だろう。お前達は先に隣の倉庫に行き仕掛けを進めておいてくれ。最後のしかけをしてから追いかける。」
「「「「ハッ」」」」
さて、最後の仕掛けを準備しよう。
壁に空けた穴のそばに、藁を積み、油をかけておく。
燃焼時間が一時間ある線香を立てて、その回りに乾燥させた火炎草で被う。
火炎草は、ちょっとした火種があればすぐに燃え上がる性質があり、扱いが難しいがこうやって使えば簡易な時限発火装置になる。
正副予備の3つをセットして確実に燃えるようにしておかねばな。
さて、さっさとしないと丸焼きになる。
撤収しようか。
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