144、第二王子
王国第二王子 ボヤージ side
ドンズール男爵令嬢マージョとの結婚式を控えた一月前、ドンズール男爵領にモンスターが襲来して来た。
ドンズール男爵に領地の防御義務が在るため一時的に式の延期が決まった。
しかし、一向にモンスターの襲撃が収まる気配はなく、逆に襲来するモンスターが増えている。
父である国王にこの一月援軍を出すように進言を続けているのだが、一向に動いてくれる気配はない。
確かに王国法に救援依頼なければ、王国騎士団の派遣はできないと記載されてはいるが、私の妻になる女性の実家まで杓子定規に法を守ることはないではないか。
どうにかして援軍を用意してやらねば、マージョが少し前から部屋にとじ込もってしまった。
父であるドンズール男爵の事が心配でならないのだろう。
彼女は、何故か人に悪く言われることが多い。
あんなに色々と人々の為に活動をしているのに。
貴族と言う高貴な身分で有りながら貧困層であるスラムに出向き、自ら炊き出しや服などの施しをするほど慈母に溢れた女性だ。
学園を卒業後すぐにでも結婚をしたかったのに、やれ作法がどうの、語学力がどうの、品格がどうのと皆で彼女を苛めるのでここまで結婚するのが延びてしまった。
そこで有志を集め、義勇軍を立ち上げることにした。
幸い、学園の同期の物も協力してくれる。
「みんな集まってもらってすまない。」
「気にするな、マージョちゃんのおやっさんが大変なのだろう。協力させてくれ。」
筋肉質で同期の中では最強の剣士で、王国騎士団第1部隊副隊長の次男である、ボヤックがそう言った。
「そうだね、マージョ様の悲しみを取り除いてあげないと。」
平民出身だが、魔法科を上位の成績で卒業し、魔道研究所の職員に抜擢されたワールーが続けた。
「そうですわ、今こそご恩に報いねば!ね、ジュリー。」
「ええ、その通りよ、コーマ!」
この二人は、王都で有名な商家のジュシャク家の双子だ。
学園では、マージョと仲がよく、連れだって行動していた。
「俺も手伝いをするよ。」
伯爵家の3男のアランが最後に名乗りをあげた。
「みんな、ありがとう。」
皆に頭を下げてそう言った。
「気にするな、仲間じゃないか。」
「王族が簡単に頭を下げちゃダメですよ。」
「資金面は出来るだけなんとかします。」
「任せて!」
「他の同期にも声をかけよう!」
ああ、いい仲間を持ったものだ。
sideout
国王side
ボヤージの奴め、仲間を集めて何やら企んでおるようじゃな?
困った奴だ。
王族としての立場と言うものをわかっておらん!
他にもモンスターに襲われておる領地は在るのだ。
一領地のみ、優遇するわけにもいかんし、兵を出すにしても、救援依頼が必要であると王国法にも定められておるのじゃ!
これは、貴族は、自らの領地は、自らの手で守るべき者であり、それが出来ない様では領主として認められんと言うことだ。
何のために徴税権を与えてあると思っとるのだ!
領地の発展と防衛のためじゃ!
贅沢三昧をするためではないんじゃぞ。
その点、ヒットリー男爵は見事であったな。
正に貴族としての義務を果たした。
爵位を失う可能性が高かったというのに、自らの地位よりも領民を救う為に命懸けで戦ったのじゃからな。
それぐらいの気持ちを持って欲しいものじゃが。
甘やかしすぎたのかの。
もう少し、厳しく育てれば良かったのかもしれんな。
皇太子を国境に張り付かせる体制も改める必要があるかも知れん。
城内に第二王子のみがおるんじゃ、若いもんは次の国王になると錯覚するものも出ておるしな。
ま、それはそれで、考えの浅いものをあぶり出すのにちょうどよいのじゃが。
まあよい、どの程度出来るか見ていよう。
あくまでおのれ達の裁量でな。
王国資産や国軍の兵などを使わせないように通達を出しておくか。
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