119、襲い来るGの群れ 3
ヒットリー騎士爵side
ビックコックローチの大群を撃破することができた。
村人に総動員をかけてなんとかと言うところだったが、一度に300を越える群が来るなど誰が予測できるだろうか?
「領主様、被害の集計が終わりました。」
「おう、どの程度の損害だ?」
「死者が兵士3、村人9、重傷者が兵士6、村人8、軽症者が兵士22、村人31です。村人の死人が多いのは発見時に逃げ遅れたものがいたせいだと言うことです。」
大分損害が出たな。
ビックコックローチ達を全滅させた訳ではないからな。
およそ1/5の100以上が逃げ去ったのが確認されている、実数ではもっと多いかも知れん。
もう一度位は襲って来る可能性もあるか。
「村の状況は?」
「建物等はほとんど被害らしい被害はありませんが、東側の農地は5割位ダメになっています。今季の収穫は諦めないといけません。ただ、不思議な事に、見て回った範囲にビックコックローチの死骸がほとんどありません。どういうことでしょう?」
「死骸がない?どういうことだ?」
「はい、発見したものとして甲羅や羽、それに魔石が点々としているだけで、死骸がないと言うことです。」
体の一部や魔石を残して他の部分がなくなっているだと?
ダンジョンのモンスターでもなければ………!
まさか、ダンジョンが溢れたのか?
だったら不味いかもしれん。
モンスターの一部は日付が変わるとふたたび現れると聞いたことがある。
もし、ダンジョンが溢れたのであれば、今日と同数以上のモンスターが襲って来る可能性が高い。
間もなく日が落ちるな。
情報がほしい。
偵察に出た連中も間もなくかえって来るだろう。
再び戻って来ても残存分だけであれば問題なく撃退できるのだが。
「領主様、偵察に出した兵が戻って参りました。」
「そうか、ここに連れてきてくれ。」
しばらくすると偵察に出した兵がやって来た。
疲れとは別に何やら深刻な表情をしている、何かあったか?
「大変です。ビックコックローチの群の後をつけたのですが、先程とほぼ同数と思われる群に合流いたしました。」
やはりか、こいつらの来た方向にダンジョンがあり、モンスターが溢れ出て来ている。
考えうる作戦として、
1、村人を護衛しながら後退する。
2、戦闘可能な者のみ村に残して村人を逃がす。
3、村人を見捨てて戦闘可能な者のみ後退する。
4、救援を信じて村に籠城する。
5、先制突撃をする。
これぐらいか?
後は、これの複合型や変化型だな。
まず、3はあり得ない。
騎士爵を預かる立場の者が村人を見捨てて逃げたとあっては生き残ったとしても爵位は剥奪され、敗残者として生きるしかない。
そんな余生は絶対に嫌だ。
1は、避けた方がよいだろう。
救援部隊がそばまで来ているのであれば、別だがそうでなければ村人を連れて逃げたとしてビックコックローチに追い付かれるのは間違いないだろう。
そうなれば、陣形もままならない状態で戦闘となる。
村人に損害が出るどころか全滅の可能性もあるか。
5の先制攻撃も難しいか。
数が違いすぎる。
攻め込んでも押さえられるのは一部のみ、半数以上は迂回して後方の村に向かうだろう。
時間稼ぎにもならないか。
敵将でもいれば一点突破で勝機もあるのだが、見た限りではそのような物はいなかった。
となれば残るは、2と4か。
村人を先に逃がすか、共に籠城するか。
村人を逃がすのであれば、多少は護衛を出さないと不味い。
それに男衆も待避させると人手が足りなくなる。
といって女子供や年寄りだけで避難させるのも問題か?
ある程度防衛力を上げる必要があるし、避難の為に人員をさくのも避けたいところだ。
援軍を期待して籠城するのがまだ生き残る可能性が高い。
屋敷に戦闘できないものを避難させて、戦えるものを総動員して耐えるのが一番だな。
備蓄用の食糧が少ないが半月半月持つだろう。
どうしてこんなことになったんだ。
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