103、対ゴブリン 6
ネスside
ビインからの緊急報告が来たのだが、想定外なことが多いな。
まず、初期報告よりも倍近いゴブリンがいることだ。
最初は400~500といった所であると報告があったので、その数にあった戦力を送り込んだのだが、今思えば、少なすぎたかもしれんな。
ほぼ、互角の戦力でいかに勝つか?同格といえるものをどう指揮するか?等を学んでもらうのにちょうどよいと思っていたのだがな。
欲を出しすぎたか。
ビインには、あくまで援軍であり主体はマリーに任せるように言ってあったので補佐役に徹してくれているのはいいが、ジェルドのマリーに対する反発が思ったより強かった。
シールもジェルドに引っ張られていたようだしな。
まあ、しばらくして納得しないまでもマリーに従うようになったから軽く注意をするぐらいに留めておくか。
問題は、ジェルドだが、シバに処分を任せておこう。
こういった処分を考えるのもいい経験になると思う、よほど事がない限りは、処分内容を尊重しよう。
そうだ、ちょっと気になる事があるから潰滅させたゴブリンの集落の残骸をできるだけ回収させよう。
漠然としたものであるが、何か引っ掛かる。
残骸を調べれば何かわかるかもしれないからな。
喉の奥に引っ掛かった小骨のような違和感の正体が。
ネスsideout
ジェルドside
く、まさか集落の柵の内側に溝を掘って兵を隠していただと!!
突進した勢いが殺されてしまったではないか。
その間に敵本隊の戦闘準備が整ってしまったではないか!!
いや、まだ、数の上ではこちらが有利だ。
「野郎共!敵にいかなる倚兵、奇策があろうとも力でねじ伏せてやれ。数ではこちらが有利だ、密集体形で突っ込むぞ!」
「「「「オオオオオオォォ!!」」」」
よし、初手の混乱はない、敵の伏兵には多少驚いたが、伏兵は普通のゴブリンだ。
重歩兵で押し潰せる。
ジェルドsideout
???side
フン!!
俺の国にチョッカイを出してきたのはコボルドどもか?
随分と仲間達をいたぶってくれやがったな。
その借りをかえしてやろう。
しかし、あれだけ暴れてこちらになんの準備もできていないと思ったのか?
やり口から見てもっと頭の回る連中だと思っていたのだがな?
まあ、それなりの戦術は知っているようだが、まだまだだな。
自分の想定から出ていない。
「伝令、合図を送れ。」
「了解したゴブ!!」
伝令要員にのろしで合図を送らせた。
「さあ、仲間達の弔い合戦だ、押し返せ!!」
???sideout
ジェルドside
く、左右から襲撃だと?
しかも片方50以上いるようだ。
包囲のつもりで出したウルフライダーは、壊滅だな。
包囲殲滅するつもりが逆にこちらが包囲されてしまった。
撤退を考えるべきだな。
このまま戦っても殲滅されるだけだ。
兵力では、1,5倍を越えている上に三方から半包囲されている。
ここから戦況をひっくり返すのは無理だろう。
撤退するにしてもただでは返してくれないだろう。
しかし、座して殲滅されるのを待つわけにはいかん。
ネス様からお預かりした兵をすりつぶすなど、できはしないのだから。
「弓兵隊、魔法部隊、右の部隊に一斉攻撃をしろ!!」
比較的に距離のある方に遠距離攻撃をかけて足止めをする。
よし、足が止まったな。
「次は左だ!!援護のあるうちに戦線を縮小せよ。」
よし!一時に圧力が弱まったな。
「重歩兵隊はコノ字に陣形をとれ。撤退までの時間を稼ぐ、その他は後退して、マリーと合流せよ。」
「ジェルド様、我らはまだやれます!ジェルド様こそ撤退してください!!」
「早く下がれ!!ここで俺が抜けると総崩れになる。俺の事を思うならば早く引け!!」
「く、ジェルド様、ご無事で!」
さて、これでよい、重歩兵達には悪いが俺の供をしてもらおうか。
「我が名はジェルド!!俺の首が欲しければかかってこい!」