表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ぞっとしない話

作者: 愛福

あるところに大層きれい好きな男がいた。

男のおかげで仕事場はもちろん台所、窓のサッシまで埃が積もることはなかった。

男は来る日も来る日も汚れと戦っていた。

男は手を洗った。入念に。菌が一つもつかないように。

人とふれあうのも遠慮した。

別に苦労はなかった。

ある時までは、ただの潔癖症だといって通用した。

ある時までは。

だんだん、男は身の回りが気になってきた。

他人がなんだかおぞましく感じる程度になって、男は外に出るのをやめた。

男はわかっていた。

外の世界には耐え難いものがどうしても入ってきて。世界に蔓延するそれを排除することはきっとできなくて。

だが、家の中なら。そこを美しく保つのは自らだけでも十分可能だと。

そうして外へ出ることも叶わなくなっていった。

時代が時代だったので、別に苦労はなかった。

あったのかもしれないが、美しい空間を保つためならそんなことは些細だったにちがいない。

ある時までは、ただの潔癖症こじらせたのだといって通用した。

ある時までは。


ある時がやってきた。

男はそれに気がついてしまったのだ。

そう。自らが、自らこそが、この空間で最も汚いものだと。

汚れのない空間で生きるには、自らが存在しなければいいのだと。

たいそうな嫌悪感で、それこそいままで相対してきたありとあらゆる汚物よりもよっぽど汚いものがわかって。

わかってしまった男は―――。


そんな男の末路なんて、わかりきっているだろう?


死因は、発展しすぎた科学をもってすらよくわかっていないようだよ。

餓死だったのか病死だったのか。薬の飲み過ぎか狂死か薬物誤飲か失血死か、てんでに。

あるいは全部だったのかも知れないね。

―――まあただ、男は本懐を果たしたようだよ。

男の亡骸は、発見された時、死臭はおろか埃ひとつ被らず、この上なく美しい姿で横たわっていたそうだから。


降って来て10分でガッと書いたものなので。

後で下げるかもしれないです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 自分がダーティな存在だと気づけば、世界に対して優しくなれるかも。
2016/01/08 19:02 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ