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私と猫と魔女の契約  作者: 帆立
私とシリウスの出会い
3/13

第3話:我が家で猫を飼えない理由

 私は自他共に認める大の猫好きだ。

 飄々とした仕草や、気高くて気まぐれで天邪鬼な生き様が魅力的だ。もちろん、犬も鳥も好きだ。それでもやはり猫が一番だな、としみじみ思う。

 私の部屋も猫好きな趣味が色濃く反映されている。

 自室の本棚は猫にまつわる書籍や写真集で埋め尽くされているし、壁にも子猫のポスターが張ってある。カレンダーだって同じだ。勉強机の上はノートや教科書、辞書なんかを押しのけて、猫のぬいぐるみたちがひしめき合っている。寝るときはそこからお好みの何匹かを選んで抱きしめながら眠るのだ。私はこれ以上ない幸福のうちに眠りにつき、翌朝、寝坊する……。

 そんな猫好きな私だけれど、実を言うと本物の猫はまだ飼ったことがない。お父さんが反対するのだ。

 お父さんはとても真面目で頑固な人で、人間がペットを飼うことを嫌う。特にペットショップで動物を商品として取り扱うのを「人間の傲慢だ」と嫌っていた。だから私が「猫を飼いたい」とお願いしても、お父さんが首を縦に振ってくれたことは今まで一度たりともなかった。

 ペットを飼えない理由はもうひとつある。

 我が家は他の家と比べてあまり裕福とはいえないのだ。

 一言で言えば、貧乏。

 日常生活に支障をきたすまでではないにせよ、旅行に行ったりレストランで食事をしたり遊園地で遊んだりといった贅沢は、我が家には皆無。これっぽっちもない。誕生日プレゼントなんて一度ももらったことなんてないし、唯一の贅沢であるバースデーケーキやクリスマスケーキもコンビニで売っている安っぽいエクレアが常である。

 ちなみに、今使っている携帯電話は今年で四年目になる。

 お小遣いは一月千円。お年玉は「ちょっと遅いクリスマスプレゼント」という名目での現物支給。今年は箱入りの味付け海苔をもらった。どう考えてもお歳暮の流用だ。こんなものを正月に与えて娘が非行に走ると思わなかったのだろうか、と今でも両親の正気を疑う。

 そんな経済事情の中、私は毎月どうにかこうにかやりくりして猫のぬいぐるみや本を買っている。同級生が可愛い服を着ていたり化粧をしていたりするのがうらやましくて仕方がなかった。

 私の天秤は常に揺れていた。そして天秤は大抵の場合、猫の方に傾く。

 そんな有様だというのに、我が家で本物の猫を飼う余地などどこにあろう。

 猫が大好きであるにもかかわらず先立つものがないために、私は本物の猫を飼ったことがない。しつけ方や予防接種といった猫を飼う上での知識はすべてテレビや本の受け売りだ。言い方を変えれば知ったかぶり。持たざる者の悲哀だ。

 私は猫を飼いたい衝動を抑えられなかった。どうしようもないくらい飼いたかった。一生懸命名前を考えたい。世話してやりたい。しつけたい。可愛がってやりたい。世話に掛かる費用は全部お小遣いから出しても構わない。

 だから私は作戦を立てた。とても卑怯な作戦だった。

 誕生日にお父さんにお願いしたのだ。

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