<終>15、 北極星は覚えない
流れ星は、長い尾を引いたものもあれば、一瞬で消えてしまうものもあった。
それは思っていたよりも多く、俺は驚いた。
「俺、流れ星を見るのはじめてなんだけど、こんなに見れるものなのか?」
「時期や条件が合えば、それなりに見えるけど、今年は当たり年みたい。
こんなに見れるのは珍しいと思う」
「そうなんだ」
俺は、一晩にホシコと両思いになれた上に、流星群まで見えるという幸運にただただ感謝をした。
たくさんの流れ星を前に、俺の願いはもうなかった。
一番叶えたい願いは叶ったから。
「これだけ星が降ったら、願い事はなんでも叶いそうね。私の願い事はもう叶ったからいいけど……」
ホシコのその言葉に、俺もうなずく。
きっと思っていることは同じだろう。
「あ、でも待って!」
白く長い弧を描く流星に、ホシコは声に出して願いを言う。
「大地君とふたりで、またキャンプに来れますように。叶えてくれるかな?」
ホシコが、俺のことをちろっと見た。
「そ、それは、星に願わなくても叶うよ。約束する」
俺は照れて額を掻きながら答える。
そんなの、これからいくらでも行けるじゃないか!
「大地君は何をお願いするの? きっと叶うよ」
また星が流れる。
俺は恥ずかしくなり、ごにょごにょと小さな声で願いをつぶやく。
「え? ちょっと声が小さくて聞こえなかった」
ホシコに聞き返されて、仕方なく俺は聞こえるように言う。
「……さっきの北極星が分からなくなったから、もう一度教えて欲しい」
「いいよ! いくらでも教えてあげる。今度はカシオペヤ座も昇ってきたから、見つけやすいかもね。北斗七星とカシオペヤ座の中間あたりっていうか……」
「あれか?」
「ちがうよ? なんだか、全然違う方向指差してない? ちょっと待って。手を借りるよ」
ホシコが俺の背後にまわり、俺の手を取る。
「これなんだけど、わかるかな?」
耳元で声がしてくすぐったい。
俺は背中にホシコのぬくもりを感じ、ドキドキする。
「まだよくわからないかも……」
俺は少しとぼけて分からないフリをする。
するとホシコは俺の手を取り北極星をさしながら、ハッとする。
「大地君、なんだか手が熱いよ? 大丈夫? 熱中症とか?」
ホシコは急に心配そうにペタペタと俺の首や額に触れてきた。
「ちょっ、ホシコ。違う、違うから!
俺は照れてるだけだから!」
俺はますます真っ赤になる。
ホシコに触れられて、熱がもっと上がったのが分かる。
「あ、私と同じ理由だったのね」
ホシコはなんだと安心しつつも、俺が猛烈にホシコを意識していることが分かり頬を染めた。
「もう、私までなんだか照れてちゃうじゃない……」
ホシコは、小さなメモ帳をうちわ代わりにしてパタパタあおぐ。
そして、一息ついてから俺にこう告げた。
「大地君が北極星を覚えるまで、朝まで教えてあげる……」
俺は、たぶん北極星を永遠に覚えることはないだろう。
そうすれば、ホシコはずっとこうやって手を取って教えてくれるはずだから。
☆ お わ り ☆




